第248話 梅咲くや三畳庵の格天井 🍃



 ヨウコさん宅からゆっくり歩いて十分ほどのところに可愛いらしい庵があります。きっちり三畳分の草庵で、承知しているだけでもここ半世紀は無住ですが、もともとはどこかからこの里にたどり着いたひとりの尼僧のために村人が協力し合って建てたものと伝えられ、現在も地域の人たちが交替で管理なさっているのでぴかぴかです。


 この草庵を守るように枝垂桜の巨木が生え出ていて、季節にはそれはそれは美しい花簪がそよ風になびいて、道行く人たちを存分に楽しませてくれます。今日あたり針金のような枝がうっすら紅を帯びて来るころかなと出かけてみますと、あ、やはり!! 今年も爛漫な花盛りをお目にかけようと満を持している様子がなんとも健気で……。



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 で、その目を横に移してみますと、あら、こんなところに梅の老木があったなんて知らなかったよ、華麗な枝垂桜とは対照的に清楚な白梅がひっそりと咲いています。その反対側には、むかし耕地整理のときに村中から集めたと思われる石仏群。江戸や明治の仏さまが立ったり座ったり風雪に摩耗したりして二十数基ならんでいます。


 草庵というには本格的な造りで、外からちらと格天井ごうてんじょうが見えたりする濡れ縁には風趣ゆたかな香炉が置かれ、軒下には寄進者の扁額が掲げられています。三寒四温の早春の午前中、土地の先達の信仰心に照らされ、人動物文字混淆の石仏群と語る時間を過ごしました。そういえば、道の向こうには貞享義民の墓もあります。(´艸`*)




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