第217話 柳ケ瀬ブルース 🌃



 半身浴のラジオに西田佐知子さんカバーの『柳ケ瀬ブルース』が流れて来ました。若いリスナーさんが「とてもいい」と推されただけあって、とてもいいのです。本家本元の歌手を凌ぐくらいいい。西田佐知子さんといえば六十年安保世代の聖歌『アカシアの雨がやむとき』ですが、われわれのちの世代もあの清楚な容姿に憧れました。


 同時によみがえるのは(一度もお会いしたことがないのにへんな表現ですが)反対デモで亡くなった樺美智子さんの知的な容貌。このふたりの女性が戦後日本の転換期の象徴になった事象に思いを馳せながら、学生運動の末に帰郷し業界一のやり手になったという中古車販売業者への嫉妬まじりの噂も思い出され、しばし昭和チックに。



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 岐阜市の郊外にメインの取引先があったので、繁華街の柳ケ瀬にも行きました。といっても昼間なのでいたって健全でしたが(笑)アーケード街の二階の喫茶店の如何にもな雰囲気を鮮烈に覚えています。社員旅行で長良川河畔の老舗旅館に宿泊したとき、弊社の営業担当者が細やかにお気づかいしてくださったことも忘れられません。


 従業員五百人ほどの中企業は創業先代からの世襲で、その二代目がかなりの高齢になっても引退しないので後進が困っていましたが、さすがにいまは生え抜きに代表取締役の座を譲ったでしょうね。野球好きでサッカーを野卑なスポーツと毛ぎらいしておられたけど、そういう点も若い人には……デトックスしながらの思いは巡ります。




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