第147話 ぬれがらすさん&はげねずみさん 👯♀️
四年前のあのふたり、どうしてあんなに一位を争っていたのかな。夜中に目ざめたとき眠れないと焦るのではなくいっそ夜中も昼のつづきとして楽しめばいいと考えを改めました。で、ごく自然に、まなうらにひとつの記憶が引き出されて来たのです。
コロナ前のスポーツジムの平日午前中の女王が齢九十歳のカメコさんでした。名前のとおり長寿の家系なのか元気はつらつもいいところで、若いトレーナーさんたちが口を揃えて「二十代の若者より筋力があります、ことに腹筋」と絶賛していました。
🏋️♀️
見るからに気丈そうで何事にも積極的、仕事時代の週末会員から平日会員に移ったヨウコさんも「あんた新人?」ビシバシあたられて閉口しましたが、根は善人だったらしく、そのうちに手づくりポシェットをプレゼントしてくださるような仲に……。
そんなカメコさんの天敵が八十代のハゲネズミじいさんでした。元高校教師とかで教え子たちに先生と呼ばれる状況がいたくお気に召さなかったカメコさん、いつしかレッスンスタジオの最前列中央ポジション獲得競争にのめりこんでいかれたのです。
🦃
人気のヨガや筋トレのレッスン開始の三十分前からふたりで並んでいるのですが、漆黒の地毛からヌレガラスとあだ名をつけた張本人のハゲネズミさんとカメコさん、肩を押し合うようにして仁王立ちしながら、口を利くどころか目すら合わせません。
で、十分前にスタジオのドアが開けられるやいなや、ふたりともものすごい勢いで突入してインストラクターの真ん前のベストポジションにマイマットを敷くのです。当然、どちらかが遅れを取りますが、そういうときはあとでトレーナーに悪口三昧。
🚗
どうしてそこまで意地を張り合うのか一度訊いてみたかったのですが、そのうちにコロナになりまして、日ごろから豪語していたとおり、ヌレガラスさんは外出先から帰宅した瞬間に呼吸停止したそうですが、ハゲネズミさんのアフターは存じません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます