第8話 結婚詐欺
死体の身元はすぐには分からなかった。指紋は採取できたが、前科者データに乗っていなかったし、それらしい捜索願もないことから、警察も写真で捜査を行ったが、残っている写真は、断末魔の表情では、もしその人を知っている人でも。まさか断末魔の表情まで分かる人はいないだろう。特に普段社交的な人では、写真から身元を確認してもらうのは困難を極めるだろう。
しかし、ひょんなことから身元というのは割れるもので、しかも、それが何と警察内部というところが、一種の間抜けとでもいえばいいのか、完全な、
「灯台下暗し」
であった。
被害者の身元が判明したのは、警察は警察でも、捜査一課ではなく、捜査二課の方であった。そこに一人の男性が相談をしに来ていたのである。
彼は結婚詐欺に遭ったと主張していた。いろいろプレゼントをした挙句、最初は分からなかったがいろいろと不審な点を考えているうちに、
「俺以外にも他に付き合っている人がいるのではないか?」
という疑念に捉われ、次第にそれが真実味を帯びて感じられるようになると、猜疑心の塊りのようになってしまった。何が嫌と言って、猜疑心を抱いてしまった自分がどんどん深みに嵌るのを見るのが嫌だったのだ。
「背に腹は代えられぬ」
ということで、どんな結果が出るにしろ、一番まずいのはうやむやにして中途半端で結婚をしてしまい、一生猜疑心を持ったまま、彼女から逃れられない自分を想像するのが怖かったのだ。
そのため、探偵を雇い、少々お金はかかるが、証拠固めをしてもらい、証拠が固まった時点で、警察に訴え出るという手段を考えていた。
もし、彼女に対して最悪の結果が出たとすれば、途中に民事訴訟を挟むというような中途半端はしたくない。民事訴訟も視野に入れながら、結婚詐欺で訴えるということをしなければ気が済まないということだったのだ。
その男は、ある程度まで証拠固めを済ませて、警察に被害届を出した。
その時、もちろん、証拠の品をすべて揃えてのことだった。探偵の方からも、
「これだけの証拠が揃っていれば、警察も動くことでしょう」
と言われて、警察に訴え出たのだ。
しかし、どうやら彼女の方も彼の行動に不信感を抱いていたのか、探偵が自分を密偵していることにどこかで気付いたようだ。
だが、証拠はすでに押さえられていて、もしこのまま被害届を出されれば、このままタウ歩ということにもなりかねない。女は姿をくらましたのだ。
警察が被害者から聞いた名前も住所も会社も、すべてがウソだったのだ。
「なるほど、他にも被害者がたくさんいるということでしょうね。だから彼女は何股も掛けていることから、身元がバレないように、そして警察沙汰になってもバレないように、最初から偽名だったんでしょうね」
と警察は気にしていることをスバッという。
「じゃあ、最初から結婚するつもりなんかなかったということでしょうか?」
と男がいうことに、これが刑事でなければ、
――何をいまさら。この期に及んで、あだ女が自分を好きだったなどと思っているなんて信じられない――
と思うことだろう。
だが、実際に結婚詐欺というのはこんなものである。詐欺専門の部署である捜査第二課は、そんな詐欺の手口を山ほど見てきている。その中でもこのケースはよくあるケースなので、かなりの確率で犯行が自分たちの思っているやり方で行われていると思っていた。それこそマニュアルに沿った教科書のようなものがあって、スタンダードな詐欺を行っていたに違いない。
それに結婚詐欺はなかなか立件もしにくいのではないだろうか。それこそれっきとした証拠がなければ立件できない。今回のように相手がお金を使って探偵を雇い入れてでも捜査しようと思わなければ、警察に訴え出ても、なかなか取り合ってもらえないのが関の山に違いない。
それは犯人にもよくわかっていることであり、しかも、いざとなると、姿をくらませばいいというくらいに思っている。
別に仕事をしているわけでもなく、身軽なので、全国どこにでも逃げればいいだろう。
結婚詐欺として捜査されたわけでもないので、指名手配になることもない。手配されたとしても、殺人などの凶悪犯と違って、県をまたげばさほどのこともないと思っているのだった。
彼女がどこに行ったのか、行方不明になってから、一か月が経っていた。捜索願を出そうにも、彼女には知り合いも身内も近くにはいなかった。もし、捜索願を出すとすれば、彼女と付き合っていた何股目の男か分からない人が出すことになるのだろうが、どうせその男に対しても本名も住所もでたらめなのだから、ひょっとすると、その時点でこの人も自分が結婚詐欺に引っかかったことに気づくかも知れない。
被害届を出した男の方も、探偵にお願いするまで、かなりの精神的な葛藤があった。
「あの人はそんな人じゃない。俺を愛してくれているんだ」
と思い込んでいたからである。
普段、うだつの上がらない目立たないタイプの男、もっともそんな男だから女性にもモテない。しかし、優しさという点では他の男性よりも強いかも知れない。何しろコンプレックスを抱えているのだから、相手に対して優しくなれるのも無理もないことだ。しかし、詐欺師はその部分を擽ってくる。
「思い切り甘えれば。男なんてコロッとくるわよ」
というのが、基本的な考えだった・
この結婚詐欺師の女は、元々金目当ての結婚詐欺ではなかった。もちろん、お金のありがたみも分かっているので、男からむしろとることも忘れない。しかし実際の彼女は、自分が騙そうとしている男たちと同じだったのだ。
過去に男に騙されたことが何度かあった。尽くすことだけが自分にできることだという思いが強く、一番手っ取り早いのがお金だったのだ。
「俺、今度会社を立ち上げたいんだけど」
であったり、
「今度芸能プロダクションに入りたいんだけど、お金が必要なんだ」
という、普通に考えれば怪しいということが分かるはずなのに、舞い上がってしまっているとどうしようもない。
結局、結婚資金として貯めていたお金はおろか、借金に塗れてしまうことになり、最後は借金取りに追われ、風俗に身を落とすことになってしまった。
何とか金を返し終えた彼女は、復讐に燃えたのだ。
風俗で客の相手をしながら、いかに復讐してやろうかということばかりを考えていた。
「目には目を、歯には歯を」
だった。
風俗で借金を返し終わっても、まだ彼女は風俗で働き続けた。それはひとえに復讐のための資金を稼ぐためだった。
整形にお金を使い、いい部屋に住み、そしてスター顔負けの衣装をたくさん揃えた。
もちろん、詐欺を行う相手によって、いろいろな自分を使い分けることもできるようになっていた。
彼女は清楚な淑女から、妖艶な娼婦まがいの魅力を持った女にまで化けることができるようになっていた。
元々、俳優になりたいという思いもあってか、演技の学校にも通っていたことで、基本的な演技力は持っているつもりだった。
その力に、精神が絡みつき、彼女は自分の中に相乗効果を見出していく。
どんな男にはどんな女性がいいかなどということも、しっかりリサーチし、男心の擽り方も分かるようになってきた。
そんな彼女は、彼に訴えられた時、彼を合わせて六人の男性と交際をしていたようだ。
しっかり自分という女を使い分けていることに、さすがに調べさせた彼もビックリしていたようだが、
「これなら、他の男と歩いているのを見ても、彼女だとは思わないよな」
と思った。
「それが、彼女の狙いなんですよ。ちゃんと、それぞれ違うタイプを好きな男性を選んでいるところは、さすがだと言わざる負えないですね」
と探偵に言われた。
確かに、写真を見る限りでは、同一人物だとはどれを見ても思わないだろう。
「五人の別々の女が、男とデートしている写真」
としか思えないのだ。
そして、被害届を出した彼が、洞窟で見つかった断末魔の女を見た時、
「あのオンナだ」
と叫んだ。
彼にとって、他の男性と楽しそうにしている彼女を見ると他人にしか見えなかったのに、断末魔の表情を見ると、そこに彼女の面影を見たのだ。訴え出たこの男の感情がどんなものだったのか、計り知ることは誰にもできないだろう。
「本当ですか?」
と、さすがの捜査二課の刑事もこの展開に面食らった感じだった。
さっそく捜査一課の刑事に連絡を取り、この男性を引き渡すことにした。もし、この男のいうように、自分が訴えようとしている女が死んでいるのであれば、話はまったく違った方向に行ってしまう。被害届を出した方としても、これは重大なことになるのだった。
被害届を出した男は、名前を菅原良治という。菅原は捜査一課で辰巳刑事と清水刑事と対面した。
「ご足労願いありがとうございます。ところで、菅原さんは捜査二課に、結婚詐欺で被害届を出されたんですね?」
と辰巳刑事が言った。
「それはどういういきさつだったんですか?」
「その女性、名前を梶原奈美恵というんですが、私には違う名前を名乗っていました。どうやら、私以外にも数人、同時にお付き合いしている人がいたようなんです」
「そのことをあなたが気付かれたんですか?」
「ええ、最初は些細なことだったんですが、一度気になり始めると、どんどんその思いが膨らんで行って、自分の中では、そんなことはないという否定の気持ちと、猜疑心の強さがジレンマとなって襲い掛かってきましたが、結局、疑念は消えませんでした。それで、結婚するにしても、一度ハッキリさせておきたいと思って、探偵を雇って調べてもらったんです。その結果、私が考えている最悪の状態であることが判明したので、今日、ちょうど被害届を出しにきたんです。その時、ここで偶然、この間死体で発見されたという女性の写真を見ることができて、それが彼女に見えたんです。見えてしまうと彼女以外の何者でもないと思えてきて、こうやって今ここにいるということなんです」
と菅原は話した。
「ということは、この女性は結婚詐欺だということですね?」
「ええ、その通りです。被害にあった男性は私だけではなく、最低五人はいると思います。それも現在進行での五人ですから、過去を遡るとどれだけの人がいるか分かりません」
「なるほど、ということは、今のところ、彼女に対して被害届を出している人がいるかどうかまでは分からないということですね?」
「はい、彼女は偽名を使っていたはずですからね。でも、私の方で、被害者の名前までは分かりませんが、調査を依頼した探偵さんならご存じかも知れません。問題が殺人事件というのであれば、私が許可すれば、ひょっとすると、他の被害者の名前を教えてくれるかも知れ褪せん」
と菅原がいうので、
「ありがとうございます。さっそくそのあたりを確かめてまいります。我々捜査一課としても、被害者が特定できないと、捜査がなかなか進みませんが、もしあなたのいうように、その女が被害者であれば、こちらとしても、捜査を進めることができます。ところで、最初に知り合ったのは。どこだったですか?」
と清水刑事に訊かれて。
「私は結婚相談所のようなところに登録していたので、そこで知り合いました。私のようなあまりお金のないサラリーマンが登録するようなごく一般的な相談所だと思います。登録人数も結構いると思いますが、実は似たような相談所も結構あると聞きます。きっと彼女もいろいろな相談所に登録していたのかも知れませんね」
と、菅原は答えた。
結婚というものを、結婚相談所で相手を決めるということに対して、辰巳刑事も清水刑事も、反対でもなければ、賛成でもなかった。できれば恋愛が一番いいのだろうが、今の世の中、なかなか自分から異性と仲良くなる機会もなく、趣味などが同じ人がいたとしても、そんな二人が知り合う機会は、万に一つもないとまではいかないが、かなり可能性は低いだろう。
それであれば、データベースに登録し、趣味の合うもの同士が知り合うきっかけを与えてくれるというシステムはいいことなのではないだろうか。古風な考え方の人には、分かりづらいところがあるかも知れないが、もっと昔であれば、許嫁などというシステムがあるように、結婚も家柄などから、自由恋愛などありえない時代もあったくらいだ。それを思えば、知り合うまでを相談所に任せ、後は自由恋愛でができる、結婚相談所というシステムは、画期的なシステムだと言えるのではないだろうか。
とりあえず菅原は、結婚詐欺の被害届を出したまま、捜査一課からの回答待ちという状態になった。しばらく中途半端な状態になるが、それも仕方のないことであった。
さっそく二人の刑事はまず、菅原が登録していた結婚相談所にアプローチを試みた。
その事務所は、雑居ビルの三階にあり、中には受付と、いくつかのブースがあり、事務所は上の階にあるということだった。まず、受付で警察であることを示し、菅原の担当者に面会することになった。
「ええ、菅原さんは私どもに登録いただいており、私が担当させていただきました」
と言って、担当が名刺をくれた。
その人は女性で、男性会員には女性担当者がつくということになっているという。
「我々は、この間、日暮坂で発見された殺人事件を追いかけている者なんですが、その中で菅原さんの供述から、こちらのお話が出たので、お伺いにきました」
と、辰巳刑事がいうと、相手の女性は、殺人事件と聞いて、それまでの笑顔が少し曇り、真剣な顔になった。
それも当然のことであり、きっと結婚相談所という立場上、微妙なところにいるのではないかと思ったことだろう。
「はい、かしこまりました。お伺いいたします」
と言って、身構えていた。
「ところで、菅原さんはいつ頃入会されたんですか?」
と辰巳刑事が質問した。
「ちょうど、二年くらい前になりましょうか。最初の一年はなかなか趣味の合う方が見つかりませんで、ご紹介に至らなかったのですが、ちょうど一年したくらいの頃に、趣味の合う会員様がいらっしゃるということで、何度かリモートで会話をしていただき、お互いに気に入ったということで、お会いになったことだと思います。そこから先は怪異様同士の問題で、結婚に至る人、相性が結局合わずに別れられる方と様々ですが、相性が合わなかった方には、また会員様のおひとりとして、相性の合う人がマッチするのを待っていただくということになっています」
と彼女はいう。
「その二人はどうなったんですか?」
「途中経過として菅原さんからは、好印象を持たれて、お付き合いされると伺いました。話の様子では、感覚として、このままご成婚されるのではないかと私どもは思っておりました。相手の女性の担当にも、似たような話があったと伺っていますからね」
「ところで、ここの担当者の方というのは、自分の担当の会員様と実際に遭って、何か会話をするというようなことはあるんですか?」
と辰巳刑事は訊いた。
「そうですね。会員様がご希望とあれば、これまで異性とお付き合いしたことのない人がいるでしょうから、どうすればいいかというアドバイスの時間を持つことはできます。ただ、それは別料金ですから、なかなかそういう機会もありません。おっとも我々もアドバイスと言っても、恋愛ハウツー本に乗っている、マニュアルのようなお話しかしませんからね。それだったら、ご自分で本を買って研究される方がいいとお思いになる方も多いと思います。お尋ねの菅原さんに関しては、私は最初に面会した時、相性の合う方を紹介した時、そして最初のリモートの時の、都合三回だけでしょうか。ですから、ほとんど印象には残っていませんね」
と彼女は言った。
――なるほど、彼女の言う通りだろう。二年前に一度、一年前に二度だったばかりでは、彼も完全にただの会員の一人なのだから、一日に何人もの入会者がいれば、印象に残らないのも当然というものだ――
と辰巳刑事は、そう思った。
さすがにここでは、ほぼ何も分からなかったので、今度は菅原が依頼したという探偵事務所に行ってみた。そこの事務所はお世辞にも綺麗と言えるところではなかったが、どうやら浮気調査や結婚詐欺の調査に掛けては実績十分という話が裏ではあるようで、菅原が依頼したのも、その話を訊いていたからだった。
依頼料は決して安いものではなかったようだが、
「一生を左右する問題なので、腹を決めてきました」
という通り、彼にとって、ここでの中途半端は許されない。調査するなら、徹底的に調査してもらう方を選ぶのは当たり前だというものだ。
「捜査一課ということは、何か殺人事件の捜査ですか?」
と、面会に行って、警察手帳を提示すると、さすがに探偵、目ざとく捜査一課の文字を見た。
彼としてみれば、あまり警察とは関わりたくはなかったが、相手が捜査一課、つまりは殺人専門部署であれば、そう無碍にできるはずもなかった。
「ええ、この間、日暮坂で殺された女性の捜査です」
というと、
「確か、まだ身元も判明していないとか伺っていますが?」
と探偵がいうと、
「ええ、そうなんですよ。でも、その時、菅原良治さんという方が偶然被害者の写真を見て、知っている女性に似ていると言い出したんです。その女性というのが結婚を考えている女性で、ただ、疑念を抱き始めたので、それを解消したくて探偵を雇い調べてもらったという話なんですが。その探偵というのが、あなただというので、私たちがやってきたわけです」
と清水刑事がいうと、探偵は納得したように、
「事情は分かりました。ただ、我々には依頼者に対して守秘義務がありますので、どこまでお話していいのかという問題もありますが」
というと、
「それは大丈夫です。菅原さんは全面的に捜査に協力していただけるということでした。菅原さんが訴えている相手も行方不明ということで、せっかく被害届を出したのに、彼としても中途半端な状態です。したがって、彼もまず、あの死体が被害届の相手であるかどうか分からないといけませんからね」
と言って、辰巳刑事は探偵に封筒を手渡した。
「これは?」
「彼が探偵さんに渡してほしいということでした」
中を開けると、そこには探偵に対して警察に全面的に協力依頼をお願いする書面であった。彼の自筆の署名と、印鑑が押されていた」
「分かりました。お話しましょう。まず彼が私のところに来たのは、三か月前くらいでしたでしょうか? 結婚したい人がいるんだけど、どうも自分以外にも数人付き合っている人がいるような気がする。信じたい気持ちと猜疑心の強さから、どうしてもジレンマから抜けることができない。それで、調査をお願いしたいということで、私が捜査に乗り出しました。そこで分かったのは。確かにその女性が彼の言うように数人の男と、名前を変えて付き合っているということです。あまりセキュリティのハッキリしているわけではない結婚相談所やWEB紹介にもいくつか登録し、そこで出会った相手とも交際をしていて、その時々でプレゼントをもらっていたようです。でも、正直、それだけでは結婚詐欺とまではいかない場合もありまして、女性もこれを自由恋愛として、複数の男性とお付き合いした中から結婚相手を決めると言われてしまうと、複数の男性とお付き合いしてるというだけで、詐欺というわけにはいきません。ただ、証拠としては掴んでいるので、とりあえず被害届を出してもらって、証拠を警察に提出し、捜査してもらうということにしたんです」
と探偵は言った。
「じゃあ、もし警察の方で結婚詐欺だとして逮捕あるいは、立件できなかった場合はどうするつもりだったんでしょうか?」
と辰巳刑事はいうと、
「彼とすれば、この証拠を持って、彼女と付き合っているという男性に遭い、少なくとも自分たち以外にも付き合っている人がいるという事実を突きつけて、刑事事件にはできなかったけど、民事として、集団で訴訟を起こすことも考えていたようです。その時はまた私が相談に乗ることになったと思いますよ」
という探偵に、
「なるほど、そういうわけだったんですね。よく分かりました。私もそのやり方が一番いいのではないかと思いますね。詐欺に関しては私も素人なので、よくは分かりませんが……」
と清水刑事は答えた。
「ところで、これがこの間殺された女性の死体写真なんですが、これは例の梶原奈美恵という女性なんでしょうか?」
というと、
「ええ、そうだと思います。ただ、あまりにも形相が激しいので断言はできかねますけども」
というと、
「そうですか。じゃあ。申し訳ありませんが、菅原さんが証拠として警察に提出したあなたからの資料にある他の男性の身元を教えていただけませんか? もちろん、あなたのことは口外いたしませんおで、ご安心ください」
と刑事に言われ、
「了解しました。ものが殺人事件ですし、何よりも菅原さんの委任状もありますので、私は協力を惜しみません」
と言って、他の五人の連絡先を教えてもらった。
さすがに彼らに聞けば被害者を特定できるだろう。しかも彼女が死んでいるとすれば、彼らの前に姿を現すわけはないのだから、それだけでも信憑性はかなり高いものになるに違いない。
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