第4話 お仲間をお求めですか?

転生前の記憶ではデスシナリオと名高い探索依頼を受けるにあたって、私は仲間を集めることにした。


格闘家グラップラーは武器や盾に頼らず、素手での近接戦闘を行う技能であるため、基本的に敵の攻撃をかわすのが前提であり、攻撃をまともに受けると致命傷に繋がりかねない。

この依頼がデスシナリオたる理由はボスであるガーゴイルの異常な命中率と回避率にある。

レベル1の格闘家グラップラーではどうしてもすべての攻撃を回避できずにどこかで致命傷を負うことになる。

私が生き残るためには最低でも防御タンク役となる重装備の鎧と盾を持った戦士ファイターを仲間にしなければならない。

傷を癒せる神官プリーストもいればなおよい。


仲間を募集するべく、冒険者ギルド内を見回したところでようやく私は周りから避けられていることに気づいた。

盗賊シーフレベル1の聞き耳スキルによって彼らがひそひそと話す声は私にしっかりと聞こえる。


「あの子、馬鹿みたいな数のマルチクラスよ。あの年齢としでそれだけの技能を取れるなんて普通じゃないわ」

魔神使いデーモンサマナー技能を持ってるって聞こえたぞ。魔神と契約して生贄と引き換えにチカラを与えてもらったんじゃないか?」

「おいおい、魔神使いデーモンサマナーだって? 俺には死霊使いネクロマンサーも習得してるって聞こえたぞ」

「禁術を2つも持っているなんて…! 恐ろしい

「ふ、2つどころじゃないぞ……毒術師ポイズンマスター暗殺者アサシンなんかの法に触れかねない技能が他にもいくつもあった」


しまった!

私がレベル1で習得した『すべての技能』には社会通念上、立場のよくない技能も含まれる。

レベル1でもかじっているだけで技能ギルドの加入者以外からは避けられるような、隠さないといけない闇の技能や、この国の法律に触れかねない違法すれすれの技能まで。

もう、ここの冒険者ギルドには私を仲間にしてくれるパーティはどこにもいない。


もはや私にはデスシナリオと名高い依頼を受けて一人で攻略し、報酬で装備を整えて別の町のギルドで仲間を集めるしか道は残されていなかった。


「おひとりで大丈夫ですか?」と聞いてくる受付嬢に、「大丈夫に見えますか?」と聞き返したくなるのを我慢して私は書類にサインをし依頼を引き受けた。

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