第二章:あなたの例外になりたかった
第9話:新くんのお姉さん
それから数日経った日の放課後。今日からはテスト期間で部活が無いため、さっさと帰って勉強しようと思い荷物をまとめて教室を出ようとすると、教室に三船さんのクラスメイトがやってきて私に声をかけてきた。本田絹子さん。新くんからはポンちゃん、三船さんからはたぬ子と呼ばれているたぬき顔の女の子だ。三船さんの家で勉強会をするから一緒にどうかという誘いだった。
「誘いは嬉しいけど、ななちゃんの家で勉強する約束してて」
「あらー。先越されちゃったかー」
「そっち何人? もしポンちゃんと三船さんの二人だけなら合流しても問題ないよ」
話を聞いていたななちゃんが言う。七希くんは賑やかなのは嫌いそうだが、大丈夫だろうか。
荷物をまとめ、先に校門前で待っていた新くん達に二人増えたことを伝える。新くんは「賑やかになるねー」と肯定的だったが、七希くんはやはりめんどくさそうに溜息を吐いた。
「何人連れ込む気だよお前。騒がしくすんなよ」
と、突然ななちゃんに声をかけてきたのは見知らぬ男子生徒。
「は? なに? うち来るの」
男子生徒はネクタイの色からして三年生だが、ななちゃんの態度は先輩に対するそれではない。まるで兄と妹だ。しかし、ななちゃんのお兄さんは大学生だと聞いている。親戚か近所のお兄さんといったところだろうか。
「行く」
「帰れ。勉強の邪魔」
「いや、帰れないんだよ」
「は?」
「鍵忘れてさぁ。家誰も居ないし」
「アホかよ」
「うるせぇな」
「大丈夫だよ。
話に入ってきたのはななちゃんのお姉さんの空美さん。この男子生徒は空美さんの彼氏の
「帰ろっか。まこちゃん」
「ちょ、ちょっと待ってよお姉ちゃん。そいつと二人きりになるの危ないよ。襲われるよ」
「いや、俺彼氏なんだけど」
「ほらぁ。彼氏自称する男とか絶対危ないって」
「自称じゃないよ。私の彼氏だよ」
そう言って空美さんは藤井先輩の腕を組む。照れるように目線を泳がせる藤井先輩を恨めしそうに睨むななちゃん。そんな三人を見て七希くんが呆れるようにため息をつきながら「早く帰れば」と一言。「そうする」と言って、空美さんは藤井先輩の手を取って早足で歩き始める。すぐにそれを追いかけようとするななちゃんだが、七希くんと新くんに止められた。
「空美さんとまこちゃん先輩揃ってたらななちゃんが勉強に集中出来なさそうだし、俺の家に変更しようか」
「……ポチが良いなら良いよ」
「俺は良いよ。あ、でも今日は姉ちゃん居るから……一応聞いてみるね」
そういえば、新くんのお姉さんは演劇部だと聞いている。三船さんや本田さんは部活繋がりで、ななちゃん達は新くん繋がりで面識があるが、私はまだ会ったことはない。ななちゃんは魔王とか、番長とか物騒なことを言っていたが……。
「良いってー」
そう言って新くんが見せてくれたトーク画面には両手で丸をつくる可愛らしいポメラニアンのスタンプ。こんな可愛いスタンプを使う人が番長? ますますお姉さんのキャラがわからない。
「あ、姉ちゃんだ」
新くんの声に振り返ると、そこに居たのは
「まだ帰ってなかったのか」
「うん。うたちゃんとポンちゃん待ってる」
「まだ呼ぶ気かよ。まぁ、いいけどあんまり騒がしくすんなよ。私も勉強してるから」
「はーい」
実さんを連れて去っていく満さん。可愛らしい見た目の割に口調は荒くヤンキーっぽい雰囲気はあるが、番長と呼ばれるような人には見えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます