第6話:その優しさの理由を私はまだ知らない
翌日の昼休み。入学した頃は近くのクラスメイトと集まってお弁当を食べていたが、部活が始まってからは昼練などで集まれないことが増えたり、部活の友達と一緒に食べるからと抜ける子が増え、だんだんとグループが縮小して、今はななちゃんと二人でお昼を食べるのが日課になっていた。七希くんと新くんはこっちから行けば拒まず受け入れてくれるが、向こうから来ることはない。七希くん曰く『ご飯食べるためだけにわざわざ移動するの面倒。どうしてもって言うならならそっちが移動して来て』とのこと。これも本人が言ったわけではなく、新くんが代弁してくれたのだが、めんどくさがり屋な七希くんらしい理由ではある。
ななちゃんの机と自分の机をくっつけて準備をしていると「あら。七希くん達は一緒じゃないのね」と声をかけられる。声のした方を見ると、三船さんが「ご一緒してもいい?」とお弁当を掲げる。近くのクラスメイトから椅子を借りて三人で食べることに。
「海野さん、卵焼き好き?」
「えっ? うん。好きだよ」
「今日のやつ、美味しく焼けたから食べてみてほしくて」
そう言って三船さんは卵焼きを半分に切り分けて、私とななちゃんのご飯の上にそれぞれ乗せる。
「んじゃ、私からは唐揚げを贈呈しよう。冷凍食品だけど」
「じゃあ私からは……何にしよ。ハンバーグで良い?」
「ふふ。なんでも構わないわよ」
「あ、豆腐ハンバーグだけど大丈夫だよね? アレルギーとか……」
「ええ」
「じゃあ、はいどうぞ」
ハンバーグを半分に切り、三船さんのご飯の上に乗せてから、彼女からもらった卵焼きを口にする。ふわふわの食感に感動して口元を抑えると、彼女は「ふふ。可愛いリアクション」とくすくす笑う。小さい子を見るような微笑ましい視線を向けられ、なんだか少し恥ずかしくなる。
「もう一つ食べる?」
「もう十分です」
「あら残念」
「残念って」
「三船さん、さてはれいちゃんを餌付けして太らせて食うつもりだな」
「あら。バレちゃった?」
身の危険を感じ、ななちゃんの後ろに隠れる。「冗談よ」と笑う三船さん。クールなイメージだったが、意外とお茶目で可愛い人らしい。彼女とはこれからも良い交友関係を築けそうだ。この時の私は呑気にそんなことを思っていた。この頃から彼女が私に恋愛的な意味で惹かれていたなんて知りもせずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます