3話 わたしは同族を捜しに行く
あまりにも衝撃的な出来事が連発しており、ドッと気分が重くなっているのが分かる。
急ぎ足で、後ろを全く見ず、タッタッタと慌てながら走る。
「あんなのにまた、出会いたくない」
「この世界は、あんなのがいるの?」
「嫌だ嫌だ、こんな世界嫌だ」
愚痴りながら、走る。
行きが1時間ほどかかったが、帰りはなんと30分、
それだけ森の中にとどまりたく無いのだ。
体内時計が、その時間を告げている。
森から戻ると、草っぱだらけの、あの風景にたどり着く。
緑々しい草っぱだらけの広々とした情景は、ここなら、あんなグロいテスク
な魔物なんてきっと会わないだろう、という希望を抱かせ、
不満、恐怖を少しづつを癒して行く。
「さて、まずは・・・同族を探すのだけれど」
「お腹が減ってきたから、食べ物だね」
「この草食べられるのかしら?」
そう、この緑々しい草が、何か美味しそうに見えるんだ。
「ぐぅーー、ぐぅーーー、ぐぅーーー」と急にお腹が鳴り、鳴りやまない。
こんな誰も居ない状態だったら、まったく恥ずかしくない。
まぁ、食べてみましょう。
足元にある、どこの草、何ていう草かも分からないけれど食べてみる。
「モグモグ」
「うん、マズイ・・・・けれど、まぁ食べられる」
軽い、苦みを感じるのだ。
それ以外に、味がしない。
空腹には勝てず、ひとまず頑張って食べる。
(羊ってこんな味覚なの?)
(人間だった頃の味覚と、きっと同じなんだが?)
(美味しくないんだよね・・・・・)
(それって、羊として生きるのには死活問題じゃない?)
(慣れれば、美味しくなるものなのかな?)
(食事が美味しくないって、楽しくないじゃん)
(はぁ、先が思いやられる)
そんな事を頭で考えながら、ムシャムシャと食べる。
人間だった頃は、食事はストレス解消となっていた。
仕事が終わるのが0時過ぎ、それから家に帰って夜中の1時に
カップ麺を食べたり、菓子パン、お菓子を食べる事も良くあったのだ。
食べると不思議と、満足感が得られる、幸せになれるのだ。
その満足感で、頑張れる自分が、たしかにいた。
けれど、この食事では・・・・お腹の満腹は得られるが、
気持ちの満足が得られない・・・
「ゲフッ」思わず、食べ過ぎて口から空気が出たが、
どうってことはない。
「さて、同族さがしや」
ここは草原なんだから歩いていれば、きっと同族の羊がいるはず。
確証が無いけれど、気持ちを上げなければ次には行動出来ない。
そう決めるも、どこも同じ風景が広がっていて、
少しの間、何処へ行こか、行ったり来たりを繰り返している。
「そうだ、運に任せよう」
トコトコと、森の入り口付近まで歩いていく。
行く方向を指し示すのに丁度よい枝を探しに行ったのだ。
数分とかからず、細長く先二股に分かれている枝を拾い、口に加える。
形が良い枝が拾えたらしく、
可愛らしい『しっぽ』を「フルフル」と振るわせて、スキップで戻ってくる。
トコトコと草原まで戻ってきて、「ブン」と空高く棒を投げる。
勢いよく棒が天高く上がり、一瞬太陽の眩しさに棒が消える。
しばらくして、「トン」と落ちてきて、枝がある方向へ指し示す。
「ははーん、そっちね」
「レッツゴー」
(羊なりに楽しむ、これで生きなきゃ、ならないんだから・・・・)
気分が下がらないように、必死で食い止めんながら、
少しカラ元気気味で、仲間を探しに歩く。
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