第2話

 L43a。

 小さな、丸い、玉だった。ビー玉の青いやつみたいな。


 片手に握って、血だらけの彼をひきずる。廊下の隅。


「いま止血する」


 彼の服は、血で使い物にならない。自分の上着を引き裂いた。足りないかもしれない。まず、心臓に近そうなところから。


「L43aは?」


「あるよ」


 片手に持っているけど、止血しにくい。


「持ってて。ここ。わかる?」


 まだ繋がっているほうの手の、てのひらに、ビー玉を握らせる。


「おっ。願いが叶えられるかな?」


「そうかもね。でも見つけたのはわたしだから。権利はわたしにあるよ」


 彼が、勝手に弾避けになった。わたしは助かったけど。このままだと。彼は、助からない。


 そうなったら。


「おれの蘇生でも、お願いすんのか?」


「そうでしょ。こんなどうでもいい任務で」


 命を捨てる必要はない。止血したけど、血は微妙。足りないかも。


「水。飲んで」


 口移しで飲ませる。からだの内側のダメージを確かめたかった。彼の、のど、から、下に。水が流れていくのを、さわって確認。大丈夫。あとは血が止まればいい。


「よいしょ」


 彼が、膝枕を要求しているらしい。

 拒否。

 背中から抱き抱えるようにして、押さえて止血。とにかく、傷口を下に。


「これ。どうやってお願いするんだろうな?」


「願えば、叶うんじゃない?」


「そっか」


 それっきり。


「ねぇ」


 彼が静かになった。


「ちょっと。ねぇ」


 動かない。

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