【たいむりーぷ？】『私。未来であなたの奥様やらせてもらってます！』～隣の席の美少女はオレの奥様らしい。きっと新手の詐欺だと思う……たぶん。～

23. 未来の予行練習

23.　未来の予行練習

　オレは今、聖菜さんのアパートにいる。目的を失ったオレは聖菜さんとテレビを見たり、話したりして時間を潰していた。それにしてもオレと一緒にいたいから嘘をついたのなら、すごく嬉しいよな。素直じゃないのはどっちだ。

「ねぇ優斗君。買い物行くからついて来て欲しいかな」

「荷物持ちってことか」

「未来の予行練習かな」

「もしかして高宮聖菜検定？」

「ふふ。そうかもね」

　時刻はまだ昼過ぎ。聖菜さんはこれから夕飯の材料を買いに行くみたいだ。聖菜さんは冷蔵庫の中を確認してから財布を持ち玄関に向かう。

　オレも聖菜さんについて行き部屋を出る。外に出るなり眩しい日差しを浴びる。そのまま歩き出し、近くの商店街まで歩く。

　商店街に着くと、たくさんの人で賑わっていた。中には家族連れの姿もあり、子供は親とはぐれないように手を繋いでいる。

「やっぱりGWだから人が多いよな」

「そうだね。はぐれたら大変だし手繋ぐ？」

「今日はデートじゃないけど」

「買い物デートだよ」

「なんでもデートになるな」

「うん。……優斗君と一緒の時だけね？」

　聖菜さんは上目遣いで可愛く微笑む。その表情を見て、胸がドキッとする。でも恥ずかしさからオレは手を繋ぐことはなく、聖菜さんの後をついていく。

　聖菜さんは野菜や肉など必要な食材を次々とカゴに入れていく。

「おお！さすが一人暮し。慣れてるな」

「どっちかというと主婦だからかな」

「いい奥様になるな」

「私。未来であなたの奥様やらしてもらってます。ご存じない？」

「存じてはいる。そして少しだけ信じてる」

「日々成長してるね。関心関心」

　そう言いながら聖菜さんは店内を回る。そのあとオレは聖菜さんに言われた物を探したりした。一通り買い終えると、オレ達はスーパーを出て帰路につく。

　帰り道、聖菜さんはずっと楽しそうな顔をしている。今日は朝から一緒にいたからだろうか。いつもより距離感が近い気がする。オレの手には今日の夕飯に使うであろう食材が入った袋を持っている。

　将来はこうして二人で並んで歩いていくのかな。そんなことを考えていると、自然と笑みがこぼれてくる。隣を見ると聖菜さんも同じだったのか目が合いお互いに笑顔になった。

「おやおや？嬉しそうに何を考えているのかな？」

「この前の聖菜さんの顔」

「キスした時の顔？」

「あれは暗かったから」

「映画館の時だよ」

「よだれ垂らしてたよ」

「それでもキスしたくなっちゃうのかぁ。可愛いは罪だね？」

「じゃあやっぱり聖菜さんが悪いということだな。うん。仕方ない」

「酷いなぁ。被害者は私のほうなんだけどな？でも暗がりとはいえ、他にも人はいるのに。変態だね優斗君は？」

「男はみんな変態だよ。ご存じない？」

「ふふ。肯定しちゃうんだ」

　そんな会話をしながら仲良く聖菜さんのアパートに帰る。その時ふと気づく。オレは無意識に聖菜さんの手を繋いでいた。

「優斗君？」

「あっ……えっと……これは……」

　慌てて離そうとすると聖菜さんはギュッと強く握ってきた。

「これは買い物デートだよ？」

「……ああ」

　聖菜さんはニッコリと笑い、オレの横にピッタリとくっつくように歩く。本当に聖菜さんには敵わない。