16. 今度は
16. 今度は
高宮さんを家に泊めることになったオレ。しかもオレの部屋にだ。自分の部屋に女の子がいるというだけで変な気分になる。意識しないようにしようとすればするほど気になってしまう。
「さてさて夜は長いよね」
「いやこの世界線は24時間って決まってるからさ。」
「ずいぶん余裕だね~さすがラブホに泊まっただけはありますなぁ~」
「……さてもう寝ようかな」
「ふふ。私より先に寝て大丈夫?」
「オレは信じてるから高宮さんのこと」
「それはどうかなぁ?」
なんでこんなに高宮さんは余裕なんだ。このままだとオレの鋼の意思が崩壊するぞ。すると高宮さんは立ち上がり、オレの部屋を見渡す。
「それじゃ捜査でも始めようかな」
「ここは事件現場じゃないけど」
「うーん。イヤらしい臭いがしますなぁ」
高宮さんはニヤリと笑いながらオレに近付いてくる。
「高宮巡査長。この部屋は危険なので大人しくしておきましょう。」
「まずはクローゼットの奥から調べてみますか」
「勘弁してください」
「おや?犯人が自白したみたいですね」
そう言ってオレの隣に腰掛ける。距離が近いせいか、高宮さんの甘い香りが鼻腔をくすぐる。その格好だと胸元が見えるからもう少し離れていただきたい。
「せっかく神坂君の性癖とか分かると思ったのに」
「知ってどうすんの」
「色々協力できるかもしれないでしょ」
「ずいぶん出来た奥様で」
「ご存じない?私。結構尽くすタイプだよ」
笑顔でそう言う高宮さん。いつものようにオレをからかっているだけ。でも……西城さんの話を聞いたあとだから、より強く思ってしまう。これはオレにだけ見せてくれる特別な笑顔なのかもしれない。と。
「あれ?美少女の私に見とれちゃった?」
「はいはい。明日も学校だからもう寝よう」
オレはそう言って電気を消して布団を被る。もちろん高宮さんは別の布団だ。しかし……この布団、高宮さんの匂いが微かにする。恐るべしマーキング。
静寂に包まれる中、高宮さんの呼吸が聞こえる。それに耐えられずオレは話しかける。
「あのさ高宮さん」
「……シたいの?いいよ。そっち行っても」
「それは困る。今は鋼の意志が休暇中だからさ」
「神坂君の会社はすぐ休暇が取れるんだね」
「世界一のホワイト企業だからな」
高宮さんの匂いに包まれている今の状況じゃ、もうオレの理性がもたないし。すると高宮さんはオレのベッドに勢いよく上がってくる。
「……高宮さん。アポ無しは困るんだが」
「アポ無し突撃が私のモットーだから」
「すぐに黒服が来るよ」
「ふふ。黒服も休暇中じゃないの」
高宮さんの柔らかい感触が腕に当たる。そして次第に高宮さんの熱が伝わり、自分の心臓の音が大きくなっていく。
「ベッドの下の物使わないのかな」
「見てたのか」
「見えただけだよ」
「優秀な捜査官だな」
そんなやり取りをしているけど、オレの心臓ははち切れそうなくらい脈をうっている。そしてそれは……きっと高宮さんも同じ。
「ねぇ神坂君」
「なんだ」
「無理にシなくてもいいんだけど。こんなに近くに可愛い顔があるんだけどな?」
「暗くて良く見えないけど」
「ふふ。嘘がヘタだね」
……高宮さんには本当に敵わない。オレは暗闇の中、高宮さんの顔を見ると目を瞑っている。そのままゆっくりと顔を近づけていく。すると高宮さんはオレの首の後ろに手を回してくる。
「また寝不足になっちゃうね」
「もう慣れたよ」
そう言って、今度はオレから高宮さんの唇を奪う。それは初めてとは違う、長く熱く、きちんと記憶に刻まれる優しいキスだった。
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