3. アドバイスするね

3. アドバイスするね




 翌日。今日も学校に行くと、やはり高宮さんが話しかけてきた。


「おっはよ~神坂君」


「おはようございます」


「敬語はやめてよ~」


「はいはい」


 オレは軽くあしらうが、中学の頃は全然女っ気がなかったのに今はこうやって女の子と話せていることに少し嬉しさを感じる。しかも相手は美少女だしな。


「もう~神坂君は素直じゃないなぁ」


「オレはいつでも正直者だよ」


「どの口が言ってるのかな?」


「この口だな」


「むぅ~」


「膨れるなよ」


 可愛いからやめて欲しい。ただでさえこんな美少女と話すだけでも緊張するのに……。そんなやり取りをしているとチャイムがなり、授業が始める。すると隣から視線を感じる。横を見ると、高宮さんがオレを見ていた。今授業中なんだけどさ?


「またオレを見てるのか?」


「うん。また見ちゃった」


「見ちゃったって……オレは見世物ではないぞ?」


「でも見たいんだもん」


「いや見られても困るだけだろ?」


「え?私は嬉しいけど?だって未来の旦那様だしさ」


 高宮さんは恥ずかしげもなく言い切る。その発言を聞いてオレの顔は一気に熱くなる。だから……授業中なんだよ……


「その言い方は誤解を生むぞ」


「大丈夫。本当のことだし」


「だからそれは高宮さんが言ってるだけであって……オレたちは付き合ってすらいないんだが?」


「やっぱり私と付き合いたいの?」


「そんなことは一言も言ってない」


「じゃあいいじゃん。私が見てたいんだし」


 ……やっぱり高宮さんはよくわからない子だった。そんなこんなで時間は過ぎていき、放課後になった。高宮さんは相変わらずオレに絡んでくる。昨日と同じように駅まで一緒に帰ることになった。


「まだ2日だけど楽しいな~久しぶりの高校生活は。神坂君と一緒だしね!」


「オレは望んでないよ」


「こらこら強がっちゃって。一応こんな美少女が毎日のように話し掛けてるんだよ?嬉しくないの?」


「嬉しいというより謎」


「でもその謎の答えは私が教えてあげてるんだけどな?」


「その答えがぶっ飛んでて謎なんだよ」


「じゃあこれから一緒に居ればわかるよ」


 ………だから、いちいち可愛いんだよ。そんなことを思っているといつの間にか駅に着く。


「それじゃあな高宮さん」


「あっそうだ」


「なに?」


「神坂君にアドバイス。明日は予備の着替えを持ってきたほうがいいかもね。よろしく」


「は?どういうことだよ!?」


「明日は金曜日でしょ?そのままの意味だよ。じゃあまた明日ね!」


 そう言って彼女は去って行った。一体なんなんだ……?もしかして誘われてる?


「……期待してもいいのかな」


 そう無意識に呟いてしまう。待て待て!相手はいくら美少女とはいえ、いきなり『タイムリープ』してるとか言ってる変な女だぞ?そんなのあり得るわけないだろ!と自分に必死に言い聞かせるが、それでも高宮さんの言葉を思い出す度に心臓が激しく脈打つ。


「これじゃまるでオレが高宮さんのことを好きみたいじゃないか……まぁ嫌いではないけどさ」


 そんな独り言で言い訳をしてみるが、結局のところオレは自分の気持ちがよくわからなかった。そして家に帰り、オレは高宮さんとの約束を守るべく準備をする。とはいっても大したものはないのですぐに終わる。


「……なにやってんだオレ?バカじゃないのか?なぜ着替えを持っていくんだ?高宮さんとはなんでもないだろうに」


 そう思いながらもオレは、なぜか少しドキドキしながら眠りにつく。今日こそは早く寝なければ。と思ったが、なかなか眠れなかった。思春期の男子高校生には刺激が強すぎたようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る