【たいむりーぷ？】『私。未来であなたの奥様やらせてもらってます！』～隣の席の美少女はオレの奥様らしい。きっと新手の詐欺だと思う……たぶん。～

4. これが普通だから

4.　これが普通だから

　翌日。ここ最近寝不足気味だがなんとか起きれた。考えることが多すぎる……まだオレの高校生活は始まったばかりなのに。

「おはよ……」

「おにぃどうしたの？なんか顔色悪いけど」

「ちょっと最近色々あってだな……」

「ふーん。そんなことより朝ごはんできたから食べようよ」

　こいつは妹の怜奈だ。中学3年生で、受験勉強真っ只中である。そんな妹が作った朝食を食べながら、オレは今日の予定を考える。

　今日は金曜日で明日学校は休み。つまり昨日高宮さんに言われた言葉はそういうことなのだろうか？そんなことを考えながら朝食を済ませて、学校へ行く。教室に入ると、やはり高宮さんが話しかけてくる。この光景にも慣れてきた気がする。

「おっはよ～神坂君」

「おはよう……」

「あれ？すごく眠そうだね。何かあった？」

「人生で初めて、一気に考えることが多すぎて中々寝れなかっただけだから」

「あー私のこと考えてたんでしょ？もう照れ屋さんだな～」

　高宮さんはいつも通りクスクスと笑う。それから1時間目が始まり、授業が始まる。オレは授業を真面目に受けていると隣の高宮さんがまたオレを見ていることに気づく。

「こんなイケメンでもないオレの顔なんか見て飽きないの？」

「確かにイケメンではないよね？」

「未来の旦那様に失礼だな」

「でも私は好きだよ？その顔。毎日見ても飽きないほどにはね」

「……そいつはどうも」

「やっぱり神坂君は面白いなぁ」

「そりゃどーも」

　オレは適当に返事をしながら授業を聞く。本当にきちんと勉学に励んで欲しいものである。授業が終わり、昼休憩の時間になる。そこにクラスの女子2人組みがやってくる。もちろんオレの席ではなく、隣の高宮さんの席にだ。

「聖菜。お昼一緒に食べよ」

「今日は聖菜の好きなもの作ってきたよ。天気もいいし、中庭にいかない？」

　2人は仲良さげに高宮さんの名前を呼ぶ。

「うんいいよ～」

　高宮さんはその誘いに乗る。その女子2人組みは茶髪のウェーブヘアで制服を少し着崩して、しかも胸も大きい、いかにも今どきのJKっぽいのが西城彩音さん。そして身長は高めで、スレンダー美人が東雲舞子さんだ。クラスでも目立つ存在なので、当然オレもよく知っている。

　完全にオレみたいなやつが同じ空間にいるなんて地獄だ。自分で言うと悲しくなるが……。早く中庭に行って欲しい。そんな彼女たちと楽しげに話す高宮さん。そんな様子を見て、やっぱりオレとは住む世界が違うんだなと思い知らされる。

「ごめんね神坂君。私行くね？」

「なんでオレに断るの？」

「あ。そっか。ごめんごめん」

　そんな事を言った高宮さんを2人は不思議そうに見ていたが、気にせずそのまま中庭に行かれたようだ。

「……よし。オレも飯食うか。」

　そしてその場にはオレ1人。改めて実感させられる。やっぱり……おかしいよな。あんなに可愛い高宮さんがオレに絡んでくるのは。暇潰しに楽しんでるだけだろう。だから変な期待をしてはいけない。自分に言い聞かせる。

　そのままオレはコンビニで買ったパンを食べながら、ぼっちの時間を過ごした。

　放課後。オレはいつものように帰り道を歩いている。今日は高宮さんはいない。

「別に高宮さんと毎日帰るのが日課でもないし、これが普通だから」

　また無意識に呟いてしまう。そして駅に着くと、電車がちょうど来るところだった。急いで乗り込み、空いている座席に座ると一息つく。

「……これが普通だから。か。」

　ふと窓の外を見ると、さっきまで青空が広がっていた空模様は、なぜかどんよりした雲に覆われていた。