第8+10話 冬の蜂球


 //SE ふすまを開ける音



 「ど……どう? さっき買った服……着て見たんだけど……」



 「へ、変じゃない?」 /不安そうに



 「うっ!! そりゃ黄色だから目立つだろうさ。……パジャマ姿としても人前で見せるのはどうなんだろうね……この蜂の服」



 「あっ、離れて行かないでよっ! ……結構あったかいし……ほらっ、キミの好きなニホンミツバチさんだと思ってくれればいい!」



 「それにしてもいい。……買ってよかった」 /感慨深く



 「な、何よ、その目は!! ほらっ、今のあたしは蜂谷じゃないニホンミツバチさんだぁ! シャララ~~ン」



 //SE 身体を元気に動かす音



 「えっ。か、可愛いって……あ、ありがとう……」



 「さ、さぁ~~て、さっむいさっむい!! 部屋が冷えるからここ閉めるぞ?」



 //SE ふすまを閉める音

 //SE 布団に入り込む音



 「ん? 何してんの? ほらっ、早く布団に入って入って!」



 //SE 布団を叩いて催促する音

 //SE 布団に入り込む音



 「ふふっ、今日はここで寝る」



 「別にいいでしょ? あたしの家なんだから、あたしがどこで寝ようとあたしの自由だぞ♪」



 //SE 布団がこすれる音



 「何の話をしようか? そうだ! せっかくこんな格好だし、やっぱりニホンミツバチさんトークをしようか!!」 /嬉しそうに



 「え? いつものことだって? もう~~、そう言うの良くないぞ? 今日はいい天気だねっ程度に自然とニホンミツバチさんの話が出来るようにならないとな。という訳で今日もニホンミツバチさんの話をしま~~す♪」



 「巣箱にいるニホンミツバチさん達はいまごろ何を考えてるんだろうね?」



 「ん~~、分からないかぁ? ふふっ、きっとこう思っているはずだ。『寒いようっ、凍えそうだよう』」



 「うっ……なんかニホンミツバチさんの気持ちになったら急に寒くなって来た」



 //SE 布団がこすれる音



 「あっ、こら。離れるな! べ、別にいいじゃないか!! ちょっと寒いんだし……。一緒にくっついた方が温まるだろ?」



 「ふふっ、どうした? いつまでも照れてたらあたしとの距離は縮まらないぞ? 別に変なことはしないから。ほらっ……こっちにおいで♪」



 //SE 布団がこすれる音



 「このニホンミツバチさんはどれだけ触っても刺さないからね。安心して触ると良いよ……」 /耳元で囁くように



 「ひゃあ!」



 「こ、こらぁ!! いきなりそんなとこ触っちゃダメぇ!!」



 「ま、まぁどれだけ触ってもとは言ったけど……もっと他にあるでしょ? 触るべき場所が!」



 「例えば? うーーん。あっ、そうだ! 頭。頭を優しく触ってくれると目の前のニホンミツバチさんは喜ぶぞ?」



 //SE 服を触る音



 「ひゃああん!! だ、だからやだっていってるでしょ!? もうっ。今度そんなとこ触ったらおしりの針で刺しちゃうからな? ほらっ! このパジャマ、ちゃんとおしりのとこに針もあるんだぞ?」

 


 「え? 刺されたいって? ……も、もうっ、なにバカなこと言ってんのよ。いいから、ほらっ! 早く頭をなでる!!」



 「そうそう、良い感じ。ニホンミツバチさんは満足でございまするぅ♪」



 「あとねぇ……ニホンミツバチさんはねぇ、とっても嫉妬深いんだぞ?」



 「え? そんなの本には書いてなかったって? う、うるさいなぁ!! 本には書いてないかもしんないけど、目の前にいるニホンミツバチさんは嫉妬深いのぉ!!」



 「だ、だから……もう鉢嶺はちみねのところに行っちゃやだからね?」



 「うんうん、素直な子はニホンミツバチさん好きだぞ♪」



 //SE 布団がこすれる音



 「……いやぁ、幸せだなぁ……キミは」



 「ん? 何でって……こんな可愛くってスタイルが良くて料理上手で包容力のあるニホンミツバチさんと仲良くできるんだからな。幸せでしょ??」



 「おいっ……おしりの針で刺すぞ?」



 「まったく……」



 「ふふ……温かいなぁ。この山の冬は寒いけど、あたし達がお世話したニホンミツバチさんたちはきっと越冬してくれるはずさ。……春が来たらまた2人で頑張ろうね…………」



 //SE 布団がこすれる音



 「おやすみ……」

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