第4話 林間学校最終日と、彼からの誘い



――次の日。


 私は何かを期待してペンションの売店に向かう。そして……こっそり彼の誕生石の入ったキーホルダーを買った。



 “もしもこれを彼にプレゼント出来たら、この恋は……”



 考えるだけでドキドキとする。けれど林間学校は最終日。“絶対に今日中に彼に渡すんだ” そう……思っていたのに。



 なかなかチャンスを見つけられないまま、帰りのバスの時間になった。



 少し重くなった心臓を抱えながら、私はバスに乗り込んだ。すると、私の前の席は彼だった。



 ふとした瞬間、バスの窓に彼の横顔が映る。その姿を見ながらドキドキしてるうちに、私はいつの間にか夢の世界に落ちていた。


 


 そして、ふわふわと心が浮くような心地よい夢からふと目が覚めた時、ぼんやりとした視界に入ってきたのは、窓に映る彼の横顔。

 

 その横顔もすごく心地良さそうに眠っていて、私は再びまぶたを閉じた。




 バスの振動に揺られて、頭が右、左と傾くけれど、それは目の前の彼の寝顔も同じ動きで。彼と一緒に眠りについているような、すごくすごく……心地がいい帰り道だった――。





 バスを降りて運動場に並ぶ。みんなクタクタに疲れていて、言葉数も少なくボーッとしていた。けれど、


“渡すならこれがラストチャンスだ!” 


 私はそう、意気込んでいた。




 先生の話が終わって、解散の声が響く。


“よし、いよいよだ! 彼に渡しに行く!”


 決意を新たに彼の姿を探そうとあたりを見回していた時、


「笹原―」


「え?」


 後ろから呼びかけられて振り向いた。そこにいたのは、彼だった。




 自分から行くつもりだったのに、不意を突かれてドキドキして来て、言葉も出てこなくて。ただただびっくりして彼を見つめるしか出来ないでいた。すると


「笹原、あ、あのさ、河川敷の花火大会……みんなで行こうって話してるんだけど、もしよかったら笹原も、行かない?」


……そう、誘われた。




「え⁉ うん! 行きたいっ!」


 私はメンバーが誰とも聞かずに即答した。その声に、彼はホッとしたような笑顔を浮かべて、


「そっか。よかった。じゃあ、駅前のコンビニ前に六時に待ち合わせだから! また、花火大会の時なー!」


 それだけ言い残して、彼は走り去ってしまった――

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