25:宴もたけなわ
ソフィアが倒れたので、
「仲間が酔ってしまったようなので、お借りした小屋に寝かしてきます」
と、言って私は宴会場を離れた。
私よりもガタイの良いソフィアを背負うのは、本当なら無茶な話だけど─つかイーネスの役だよね─、この地域だと魔力もあるので自分に支援魔法を入れて難なく運ぶことに成功したよ。
虫嫌いのソフィアには悪いが、これで上手い事、シャドウエルフの宴会場らから離れることが出来た。
さてと、んじゃ闇にまぎれてさっさと行くかな。
ただし進むのは森の中ではなくて、監視が少なそうな森の上空だ。
と言う訳で、私は【
私もそうだけどさ。エルフっていう種族は【暗視】を持っているからねー。ふっと上を見るかもしれないんだから、用心するに越したことは無いよね。
森の魔力は大体八割ってとこだが、普通に進むだけなら【
森を真っ直ぐ飛んで一〇分ほど。
前方に見えてきた明らかに怪しげな大木が魔力の一番高い場所だ。私はその大木を目指して飛び、その随分と手前で急降下すると、後は木々に紛れて森の中を慎重に進んだ。
だってさぁ噂通り心の狭い竜なのか、私が近づいていくほどに上がっていく敵意はまるで隠す気が無かったんだもん。
こんなんで上空飛んでりゃ良い
えっと、ここらに一つ~と。私は足を止めて避難場所を設置した。
使ったのは【神聖魔法】に属する【
強いだけあって、これを使っているとほかの魔法が使えないのだが、それは大丈夫。今まで空気の様な存在だった、何かしらの魔法を一つ、自由に埋め込む事が出来る【
と言う訳で~、【
本当はこれの出番がないのが一番良いのだけど……
どうやらそれは無理っぽい。
だって緑竜さんったら、うわっなにこれ~敵意丸出しじゃん~と笑っていられないほどに怒りMAXっぽいもん。
これを設置している最中でも、真剣に【
やや短めの間隔で避難所を設置しつつ先に進んでいく。
念のために、自分に対して【
腐っていないドラゴンと面と向かって戦うのは初めての事なので緊張する。
何個目かの避難所の設置を終えた。
いま私の前には大きな樹がある。
しかしその瞬間、私は噂の
ヤバい!
本能がそう感じた瞬間に、私はありったけの魔力を込めて【
ゴゥと言う音と熱風。
目いっぱいの魔力で作った分厚い土壁の縁が赤く染まる。
ドロォ~と溶岩のように溶け始めて、炎を遮る面積が少なくなっていく。
ヤバイヤバイヤバイ!!
壁の三分の一が無くなった頃、やっと熱風が止まった……
森だった場所は焼け、辺りからパチパチと火が弾ける音が聞こえている。
純粋なエルフ族だったらこの光景を見て泣いただろうか?
それほどの破壊の痕がそこには有った。
残った壁の向こうからはズシン、ズシンと重たい音が聞こえてくる。
ここから出ないと……、二発目が来ると今度こそこの壁は持たないだろう。
でも目を合わせるのは嫌だな。
MPはまだ回復していないが、ここで死ぬと妹は絶対に泣く。そして私の仇を討つ為にこいつに挑むはずだ。
つまり妹の命は私に掛かっている訳で……
「よしっ! おねーちゃんもう少し頑張ってくるね!」
頬を両手でピシャリと叩き、ついでに口に出して折れそうな心を叱咤する。
次の瞬間、私は空元気だけで壁の外に躍り出た。
今度こそ本当にその金色に輝く瞳と目が合った。
────────────────────
種族:エメラルドドラゴン
称号:エイシエントドラゴン
HP:17200/17200
MP:8800/8800
ST:12200/12200
筋力:1
敏捷:9
知力:5
アビリティ
ファイアブレス
アシッドブレス
再生
飛行
────────────────────
大きい。
こいつに比べれば、過去に私が還した腐れドラゴンなんてまるで子犬だ。恐竜映画と怪獣映画の違いって言ってもいいかもしれない。
感じる力はとてつもなく強大で、お前が魔王を倒せばいいじゃないかって思えるくらいヤバい。
しかし負ければ妹の命が危ないと思えばおねーちゃんは頑張れる。
よし、いっちょやってみようか!!
私は転生者の持つユニークアビリティ『可逆転生』を発動した。
────────────────────
『可逆転生』(アクティブ)
輪廻の輪を逆に回す
────────────────────
これはまさにとっておきの切り札で、輪廻の輪を逆回転し、一時的に前世の自分に立ち返るアビリティ。
これで負けたらお前は魔王よりも強いと認めてやるわ!!
※
視線の先に星空が見える。
アビリティ『可逆転生』の効果時間は尽き、魔力をすっかり失った私はハァハァと荒い息を吐きながら、仰向けに地面に転がっていた。
くそう、体がでかいだけあってHPが削り切れなかったわ……
つか『再生』がズルいよ!!
攻撃する合間からガンガン回復しやがってー!!
絶対防御の私と、超火力のドラゴン。互いの得意をつぶし合って残ったのは私の火力をやや上回る程度の相手の再生能力……
その視界にぬっと緑の巨大な影が割って入った。
頭上の
「熱っ」
『おや悪かった』
舞った炎が降りかかってきて、気を付けなさいよね! と文句を言えば謝罪が返ってきたわ。
疲れ切った体に力を込めて、左手をよっこいしょと持ち上げる。
私が手にしているのは、二〇センチほどの角の破片だ。ほんのちょっぴりの大きさだけど、これは確かに目の前にいる
この野郎、全身がやたらと再生しまくるので、再生しない場所を探しながら戦ったら頭部のこの角に行きついた。
で、お得意の【
眉唾の話だけど竜は角を折られると従うと言う言い伝えがある。
そんな機会もないのだから私もすっかり忘れていた話だが、どうやらそれは本当だったようで、角が丸っと一本折れた所で
『汝の力を認めよう。これより我は汝に従おう』と言う話を聞きながら、すっかり焼野原となった森を歩き、記念品の砕けた角を拾い上げた所でタイムアップ。
アビリティの〝より戻し〟がやってきて、その反動で先ほどぶっ倒れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます