11:研究者気質なんです

 細かい話は後ほど~として、ソフィアがどうしても話しておきたいことがあるらしく、まずはそちらの話を聞くことになった。

 なお大切なお話・・・・・はもう終わっているので、食堂から持ち込んだ酒と、新たに注文したツマミがベッドの脇の小さなテーブルの上に乗っている。


 それを文字通り摘まみながら話を聞くのだが……

「ねぇお酒とツマミが減るだけで、さっきから話が進まないのだけど?」

 なんだかソフィアが言い難そうにしているのは気のせいだろうか?


「す、すまない。えーと……」

「ソフィア。あたいから言うよ」

「いやそういう訳にもいかない。僕がリーダーだからね」

「どうせ話さなくてはならないことなら、早く話す方が良いと思うけど?」

「そ、そうだな。すまない。

 実はパーティーとして初めての仕事なんだが……」

「うん」

「実はもう決まっていると言うか、そのぅ」

「なるほど、イーネスが倒れていた遺跡の間引きが終わっていないと言いたいのね」

 ああと、二人が力なく頷いた。


「二人では無理でも今は四人でしょう。きっと大丈夫じゃない」

「そうなんだが、そうではなく……」

「まだ何かあるの?」

「実は期日があと三日しかないんだ」

「悪い! あたいの所為だよ!」

「ちょっと待って……」

 えーと、遺跡まで普通に馬車を走らせれば半日掛かる。

 まず最初に、二人で行って、やられてソフィアだけが帰ってきたのが二日後だ。

 救援を受けた私たちが強行軍で六時間で辿り着きイーネスを救出、それから三日掛かって街に帰った。

 つまり今日で五日が経過して、そして終わろうとしている。

 冒険者ギルドの出す依頼は、大抵七泊八日と言うスケジュールなので、残りは三日と言うか二泊三日と言う意味で……


「もしかして違約金?」

 死亡の際は─払う人が居ないので─発生しないのだが、依頼と言う物には、達成できずに無事に戻ってきたら戻ってきたで手痛いペナルティと言う物が発生する─じゃないと闇雲に受ける馬鹿者が絶えないのと、時間経過による損害を考えない大馬鹿者もあらわれるのだ─。


「実はそうなんだ」

「通常なら移動で往復一日でしょうけど、帰りは強行軍で帰ればまた六時間に節約できるわね。

 もしくは最悪ソフィアだけが報告の為に馬で走ればグッと短縮できるかも?

 つまり間引きを半日で終えれば、まだ十分間に合うってことでしょ」

「だが奥の敵は手ごわいぜ? なんたってあたいに瀕死の怪我を負わせたんだからね」

 重傷を負ったが相打ちしたらしい─だから生きていたとも言うわね─。


「まぁ四人だし大丈夫でしょう。

 あっでも回復薬がもう無くなってるかぁ~。う~ん移動中に造れるかなぁ……」

 私の言葉にすまん! とイーネスが再び頭を下げた。

 なんだか嫌味みたいになっちゃったけど他意はないよ?


「そう言ってくれると助かるが……

 いいのか、これは僕らの失敗だぞ?」

「もう同じパーティーの一員だしね。それにこの依頼はどうせ受けるつもりだった奴だから、気にしなくていいよ」

 あの日、掲示板の前で横から伸びてきた手、『おっと悪いね。早い者勝ちだよ』と言って去って行ったソフィア。

 たとえ依頼じゃなかったとしても私は後ほど遺跡に潜っただろう。

「そうだった」

 と言ってソフィアはあの時のことを思い出して笑った。


「時間が惜しいけど、悪いが今晩は馬を休ませないとダメだろう。そして僕らも休む必要がある。

 ただ明日の朝すぐに出発できるように、今から知り合いの雑貨屋に行って消耗品の買い足しはしておくよ。

 だから明日の朝に出発でいいだろうか?」

「そうね、それでいいわよ」







 翌朝はわずかな食事の時間も惜しみ、夜のうちに頼んでおいたお弁当を受け取って再びあの遺跡へ向かった─馬車の御者はソフィアとイーネスが交代に行い、二人はその間に食事を済ませていた─。


 妹は馬車から楽しそうに外の景色を眺めている。

 昨日もその前も見た景色だと言うのに何が楽しいのだろう。


 そして私はと言うと……

 揺れる、そして弾む馬車の上で薬の調合~は、うん無理!

 最初の五分で諦めたよ。

 薬の素材をグラム単位で量る繊細な作業だってのに、あんなに揺られて弾んだら上手くいくわけないよね~

「やる前から分かるでしょー」と妹から呆れられておねーちゃん悲しいです。


 そんな訳で、いまは開いた時間を使って別のことをやってます。

 それは売り残している大き目の宝石の細工だ。

 私の持つ超レアスキルの【魔法陣】は、この大陸に来て初めて知ったが、空気中の魔力を使って発動することが判明した。

 そのため、空気中の魔力が希薄なこの大陸ではほぼ発動しない。

 お陰で何かしらの魔法を一つ、自由に埋め込む事が出来る【シール】の魔法陣も上手く発動しない。

 だからエルフ族の特徴ある耳を【幻覚イリュージョン】で隠したくてもできないんだよなー


 しかし先日ソフィアのMPを貰って私は閃いた!

 【精神吸収マインドスティール】の様な魔力を他から集める魔法を【シール】したらどうだろうか?

 これで人工の魔石に近い物が造れるのではないだろうか~と思ってる。

 もしもこれが成功すれば、いざと言うときの保険として、この充電式の人工魔石はきっと役に立つだろう。


「さあお嬢様たち、遺跡が見えたぞ」

 御者席からソフィアの声が聞こえた。どうやらタイムアップの様だ。

 まぁそんな早く造れたら苦労しないよね……



 それにしてもソフィアさん?

 貴女はなんで四六時中そんなイケメンっぽい雰囲気だしてんの?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る