06:森の遺跡①
「止まって」
了解とばかりに足を止めて身を潜める。
妹が指差す方向を見つめると、バサバサっと一メートルほどの鳥が枝から枝に飛び移ったのが見えた。
「あれは魔物じゃないね。
でも見たことないや、ねえお姉ちゃんあれって食べられる?」
妹の疑問を聞いて、こちらもオールマイティの【鑑定】スキルで確認だ。
おねーちゃんは博識なんだよ~と威張りたい。
「魔物の鑑定には引っかからないから動物なのは間違いなし。食べられるかどうか……、う~ん分かんないなぁ」
ダメでした!
鑑定結果に『食える/食えない』が出ていれば楽なんだけど、動物の鑑定結果は鳥類とかそういう図鑑的な分類しか出ないので解りようがない。
「射てみるね」
言うが早いか、妹は弓に矢を番えて射た。エルフ族に伝わる飛来音の少ない矢はシュッと飛んで見事に鳥を射止めた。
一発必中。
さすがは我が妹だ!
双子だから同じ年数を森で過ごしているのだけど、私ではこうはいかない。
「取ってきますー」
射て回収までして貰うと、姉の威厳がさらに失われる気がしたので、動かれる前に率先して取りに行ってみた。
タタタッと走って鳥を回収して戻る。
「うわぁありがとう! お姉ちゃん立派な猟犬になれるよ」
ニパッと笑う妹。
あれぇ姉の威厳=猟犬……、どうしてこうなった?
なお妹の感覚によれば食べれるそうだ。
ならば~と首を掻っ切って血抜きしたいところだけど、この半島はヤバいらしいので下手に血の匂いをだすわけにはいかずひとまず我慢だ。
時間が止まる【魔法の袋】に仕舞っておいたよ。
森を歩きながらキノコと野草を摘む妹と、薬草やら怪しいキノコを摘む私。
妹は主に食べられる物を、私は主に普通は食べない系統の物を摘み取っている。
喰える喰えんの判別は少々怪しくとも、【薬学】のスキルを持っている私はそっち方面の知識は豊富なのだ。
魔法が満足に使えない状態なので治療薬の材料は常に確保しておきたいよねー
ふと妹が足を止めた。
「どうしたー?」
「ここらへん、樹の生え方がおかしくない?」
言われてみれば確かに……、と言いたいところだがまったくそんなの感じないので首を傾げた。
「お姉ちゃん本当にエルフなの?」
そんな呆れ顔されてもねぇ、分かんないものは分かりませんよ。
「この樹の大きさだと根っこがこの辺まであるんだよね。そうするとこの樹は根が張れないからここまで育つわけないんだよ」
「ほほぉーなるほどねー」
説明を受けたけどやっぱり違和感なしだ。
我にセンスなし!
うん分かんないわーと視線を下げたところで、
「あっ待って。
そこ人工物があるわ」
妹が差した樹と樹の間辺りに私の【鑑定】が勝手に反応してくれた。
反応のあったところに乗った湿った落ち葉を足で散らしていくと、金属っぽい質感の二メートル四方の鉄板の様な物が現れた。
「ねぇこれ遺跡じゃない!? お姉ちゃんすごいー!」
ひゃっほー姉の威厳返ってきたー!!
ここは大事なところだなと、感知系の魔法を使って安全を確認する。MPがゴリゴリっと減った。以前なら瞬時に回復して気にならなかったのだけど、今は減ったまま返ってこないのがイタイ……
「う~ん。OK、大丈夫っぽいねー」
「分かった。じゃあお姉ちゃん、この蓋持ち上げるから手伝ってー」
「はいよ~」
とは言ってみたけど、地面に十センチほどの石っぽい額縁があって、その中が二メートル四方の鉄板だ。石と鉄板の間に指を入れる隙間なんてない。
持ち上げるのならさらに外の石の素材になるのだろうけど……
すると妹はしゃがみこみ、端っこの土をガシガシと掘り始めた。
「うわっ爪に泥が入るからやめてよ」
「でも……」
「私がやるから、そこで待つように」
まず闇雲に掘っても意味はないだろうと推測する。そもそも上手く掘れたとして、二メートル四方の鉄板を、細腕のエルフ二人で持てるとは到底思えない。
まずはなるべく全体が見えるように残った落ち葉をどかしていくと、鉄板の真ん中に真っ直ぐ線が入っていることが分かった。
真ん中に筋の入った鉄板、その外側を上下左右に石の素材が覆う。
これ、どこかで見たことあるような……
映画の宇宙船的な何かのドア?
まぁあれは地面じゃなくて通路だけどさ。設置位置は違えど似たようなものだし、だったらどっかにスイッチあるんじゃないの?
「ねえ、違和感のあった樹ってこれだっけ」
「うんそうだけど?」
鉄板を無視して突然樹を調べ始めた私を訝しげに妹が見つめてくる。
大丈夫かなぁあたしの姉は~という奴だね。
おねーちゃんは貴女のそういう目に耐性無いからやめて欲しいです……
一〇分ほど調べた末に、樹の幹がカパッと開く部分を発見した。中から現れたのは赤と緑の二つのボタンだ。
常識的に考えれば、緑が開くでしょ?
ぽちっと押せば、シュッと地面のシャッターが開いた。
現れたのは真っ直ぐ下に伸びる階段だ。
「開いたっ! お姉ちゃん開いたよ!! すごい!!」
妹が私に駆け寄ってきて抱きついてきた!
うひょー姉の威厳がうなぎ登りきたわー!!
落ち着きまして……
私は腰に下げておいた、特殊な骨を使って作った
よーし行こうかと足を踏み出そうとしたところで、なんだか嫌な予感が頭に過った。
ところでこれ、入っている間に閉まったりしないだろうな? と。
「ちょい待ち!
先に出口の確認したいから、もしも閉まったら緑のボタン押してくれるかな?」
「はあい~」
なんだか返事が軽いけど大丈夫、この子はやれる子だ!
だって私の妹だもん!
私は一人で階段に入り、中の様子を確認する。
OKこちらにも赤と緑のスイッチを発見。
うん大丈夫っぽいな、
「いいよ、こっちにもスイッチがあるみたい、安心して入ろうか」
と言いながら、もちろん中から閉じて開くのは確認したさ!
私は石橋は二度叩いて渡るタイプなんだよ。
あーその……、見知らぬ【転移の魔法陣】を踏んだことは悪かったと思ってます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます