第6話 僕のナシル姫はどこ

「こんにちは。ジョンです。」僕は、ベアタのママ、ナシルに動揺しながらも挨拶した。ベアタが「ママ、ベアタが悪いの。ジョンを川に落しちゃって、ずぶ濡れ。洗濯して?」「しょうがないね。ジョン?ごめんなさいね。この子がまた、早とちりでもしたんでしょう。」ベアタのママは、そう言って僕の服をとって「ジョン代わりに、これ着ていてね。」と、こちらの世界のMAの服を僕に渡した。「不思議な素材ね。ナシル姫のドレスと同じだわ。」ベアタのママがつぶやく。僕のTシャツは綿。MAの世界にもあったことを記憶している。しかし、この化繊のジャージ素材は、高校生の時の短パンだ。着心地がいいから手放せない。来ていると落ち着く。ベアタのママ、ナシルは、「この生地、ほんといいわね。伸びるし、シワにならないし、すぐ乾くし、いいわね。いいわね。」と生地を伸ばしたりして関心している。僕はそれを見ながら、聞きもらさなかった。”ナシル姫のドレスと同じだわ”僕はすぐさま聞いた。「ナシル姫って誰ですか?ベアタのママの名前もナシル?ですよね。」僕はベアタのママにたずねたつもりが、ベアタが割りこんできた。「あー、名前?ジョン、本当に何も知らないのね。そっか、記憶喪失だったよね。いいわ、説明してあげる。月の星人の女子の名前にはみんな”ナシル”と名前が先につくの。これは姫も一般人も同じよ。ちなみにママは月の星人。月出身よ。」ベアタのママが「そう、月の星人よ。本当の名前はナシル・オーブル・ベンジャミン。」でもここは月じゃないし、それにここは王都とは違って田舎だから月の名前はあまりかぶらないから”ナシル”って名乗っていたの。」ベアタがママの顔を覗き込んで「ふーん、そうだったの。知らなかった。」ベアタのママも「特に話す機会もなかったしね。MAのパパと結婚してからは、ずーっと月にも帰還していないしね。完全MAの人になったみたい。それに故郷の月もいいけど、このMAはとても緑が豊かで空気も太陽の光もキラキラで、気にいっているの。愛するパパもいるしね。」そう言いながらベアタのママは笑った。僕はベアタのママを見た。ベアタのママは僕の表情に何かを察したのか「それにね。月の星人は遊牧の星人。」「遊牧星人?」「そう、遊牧星人。もちろんある程度はその星で暮らすけど、べつの何かを見つけると、そっち側へ移動するの。」ベアタが「それって変わりやすいってこと?同じところに長くいられなくて、飽きっぽいってこと?」ベアタのママが真面目な顔で「違うよ、ベアタ。遊牧星人の意味をはき違えているよ。月の星人は、予知能力が発達しているの。その土地の変化。太陽や、宇宙の変動、気候変動すべて予知できるのよ。その能力は他の星の星人に比べるとかなり高いの。だから、例えば月の星人が”その星”を離れるとその星は滅ぶと言われている。だから月の星人はあまり自分自身を月の星人と名乗らない。」ベアタも少し真面目な顔で「そうなんだ。だからママの月の話あまりしなかったのね。」「そうよ。それに言ったでしょう。ママはもうMAの星人よ。」僕はベアタのママの話で大まかな月の星人の能力を理解した。で本題だ。「ベアタのママに聞きたいことがあるんですが、月のナシル姫は今どこにいますか?それにこの僕の生地がナシル姫のドレスと同じって。教えてください。僕は、ナシル姫に会いたいんです。。」ベアタが僕の袖をつかんだ。「ジョン、なんでナシル姫に会いたいの?ジョンは記憶喪失、で、貧乏で、自分の顔も覚えてなくて、服は拾ったっていうし。ジョン、本当のこと教えて。ジョンは誰?」僕は、現代のタイムトラベルの事実は伏せて、”ナシル姫に助けてもらったことがある。恩返しがしたい。会いたい。会えば記憶が戻る。”と二人に伝えた。それに実際記憶は完全には、戻っていない。ベアタもベアタのママも納得したようで。ベアタのママが「ナシル姫は今、月にはいません。行方不明です。あくまでも噂です。次元の違う世界に行かれたとか。つまり姫が消えるということは月の星の滅びを意味します。月の星人の予知能力です。正直誰も行方を知らないのです。それに一度だけMA、ここでナシル姫に会ったことがあります。町にある近距離ワープ専用のバス停で。顔を隠されていましたがあれはナシル姫に違いない。月の星人同志は電磁波が同じなのですぐにわかります。それで、その時、横にいた子供がたまたま飲んでいた水をこぼして、ナシル姫のドレスにかかったの。私はすぐにタオルでふいてあげたんだけど、不思議なのよ生地が。水をはじくし、伸びるし。その時にナシル姫が”大丈夫ですよ。すぐに乾くから”と言われてお顔を見ようとしたら、バス停の光のゲートが開き、「ありがとう}と言われて中へ入られて。」僕はベアタのママの両腕をつかんで「どこへ?どこへ?いったんですか?」「わるいね、ジョン、行先はわからない。ただその時一緒にスライムを連れていたような。」「スライム?イル?」僕は記憶が完全に戻らないもどかしさにかられた。ナシル姫に一歩、近づけたのにまた途切れたしまった。記憶を完全にもどすためにも”王都”へ行かなければ。「ベアタ、ベアタのママ、僕は王都へ行きます。洗濯はもう、乾いていると思います。では。」っと行こうとしたところ、ベアタのママが「ジョン、急ぐ気持ちは、分かるけど、今日は泊っていきなさい。それに王都には私の主人のお店があるから、明日、ベアタに商品を届けてもらう予定だったから一緒に行くといい。」僕は、はっとして冷静さを取り戻した。ベアタのママに「ありがとうございます。そうさえてもらいます。」と止まることにした。ベアタのママがレモンと甘いはちみつをお湯で、といた飲み物を出してくれた。レモンの酸っぱさが口に広がる。追いかけるように甘さが僕の体にしみわたった。

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