第22話 文字文字している

 僕は文字だ。それなのにあなたはこれを読んでいるとき、人の話を聞いているのと同じ脳の機能を一部使用している。僕という人間がいると、あなたは考えている。そりゃそうだ。何故ならばこれは人の手によって書かれているとあなたは考えているから。

 もしかしたらAl の作り出したまやかしであるかもしれないのに。

 感動や笑いや涙や、何かしらの気持ちを文字によってあなたに与えることが出来たなら、人間が物語を書かなくてもいい。機械でも良いではないか。自動生成のカタルシス。アメイジング。エトセトラ。

 機械にそんなことは出来ないとあなたは思うかもしれない。それは人間の驕りだ。驕りという言葉が嫌いなら、尊厳と言い換えてもいい。人を感動させるのはやはり人であると、それが人の尊厳であると、人は思いたい生き物だから。

 けれど、難しいことは考えずに、もっと気楽に考えてみてほしい。これは文字だ。僕とは、文字だ。たった一文字の漢字だ。そしてこれはデジタルによって入力され、あなたは出力されたそれを読んでいる。人の話を聞くように、内容を理解しようとしている。こうして、既に人の手書きでなくとも、活字はあなたに何かしらの感情を与えている。

 活字。

 活動する文字。

 しかし、文字は文字であるというだけでは活動出来ない。やはりここには書く僕がいて、読むあなたがいる。そうして初めて、文字は活動する。人間に育てられないと繁殖できない、カイコのように。或いは、人の動きを感知して作動するセンサーのように。

 文字を紡ぎ、紡ぎ、続けると、それは文章となり、ときどき段落を必要とする。やがて小説になる。絹糸が織物になるように。

 そうして織られた物語。やはり人間の手によって作られたものがいいと思ってしまうのは、僕が人間だからだろうか。既製服の大半は、機械によって作られているというのに。







 こんな意味不明な短すぎる変なお話ばかりを書いている僕を、あなたが応援してくれたり、認めてくれたりするのが大変に嬉しい。

 いつもありがとう。

 

 

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