第14話 あるよね。
気づいたらえらく爪が伸びとって、ほんだら切るかと爪切りを探すがどこにも見当たらん。いつものあっこ、にあると何度も箪笥の下から二番目の引き出しをゴソゴソ。無い。んだらば下から一段めも三段めもズラズラ開けてゴソゴソしゆうが、やはり無い。
どこいった、爪切り。
こんなときに必要のない綿棒やら耳掻きやらがこんにちはしてきて困る。今はお前じゃねえんだよ。ほいで、しゃあないから、あるわけないとこも探してみる。家んなかを、うろうろ。
台所、洗面所、靴箱。窓枠。ベッド。
こんなとこにあるはずもないのにぃ、などと山下達郎を替え歌してみたりなんぞする。そのうち爪切りは、さっきもそこを探した脱衣所の棚のピアス入れの真横に、最初からここに今したけどみたいな顔してスンとおじゃる。ほんまに? ほんまにお前、さっきもそこにおったん? おった? あ、はい、そうですか。なんでもええけどさ。
ほいで縁側に要らんスーパーのチラシを広げて、爪を切り切り。ぱちん。ぱちん。大特価の細切れ肉は100グラム何円。
ふう。
目的の達成と、ちゃんと切り揃えた爪を眺め、なんとなく充実を得る。良い生活。良い暮らし。したらば今度は耳が痒い。えっと、耳掻きはどこにあるんやっけ。
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