第41話 子どもたちって可能性のかたまりだと思うんですよ……(遠い目)。



 冬でも子どもは元気いっぱい。そう、特に、男の子たち。


「テッシンさま、あそぼーよー」

「ゆき! ゆきで!」


 ……僕、こいつらに友達認定されてるのかもしれませんね?


 そこに慌てておなかの大きなお母さんがやってきて、息子たちを止めようとするんだけど……。

 はい。もちろん、お母さんたちはお腹が確実に大きくなってるので、そういう無理はしないでいいです。僕がこの子たちと遊びますからね。


 ……と、まあ、そんな感じで、雪合戦が開催されてしまった。


 もちろん、僕の完全勝利ですが何か問題でも?

 そして、男の子ふたりは、リコのところへ泣きながら甘えに行きましたよ? く、このマセガキどもめ……。


 そしたら、今度は入れ替わりで女の子ふたりが僕のところにやってくる。これもいつもの光景になってる。まあ、もはや、いつものパターンですよね。

 子どもたちでリコの取り合い、というか……譲り合い? みたいな感じで。僕がメインではないけど。


「テッシンさまー、だっこー」

「だっこだっこ」


 そう言いながら、ミミもイーマも、すでにジャンプしてますから、僕は抱きとめるしかないですけどね。それで、そんな感じで抱きとめると、ぎゅっと抱き着いてくるんですよ。子どもって本当にかわいいよね。


「テッシンさますきー」

「だいすきー」


 ほんと、嬉しいです。あ、ロリコンさんじゃないので。そこは絶対に。


「ねえねえ、テッシンさまー、みててー」

「みててー。ぐるぐるー、とんがりー、カチカチーっ」


「えっ……?」


 ミミとイーマがいつものように水魔法で『螺旋の貫き』の水の槍を作ったと思ったら、それがシュッと一瞬で凍って、氷の槍になりました……って、え?


 ……この子たち、温度変化まで、魔法でやっちゃったの?


 ええと、水の槍でも、クマさんの頭をぶち抜いたんですけどね?

 それが氷の槍になったら……どうなんだろうか? 壊れやすく? いや、でも、魔法的な現象だしな……。


「どうどう?」

「すごい? すごい?」


「……すごいね。どうやったの?」


「あれ!」

「あれのまねした!」


 ふたりが指差すその先に、みんなで生活している食堂の屋根の端、いくつものつららがぶら下がっているワケでして。


「リコさまがねー、あれも、ほんとうはみずなんだって」

「だからー、つめたくしてー、カチカチにしたらできるって」


 ……科学的な理解? 部分的ではあるけど、それで? やっぱり魔法ってイメージ力の問題なのか?


 ウチの村の魔法少女がどんどん進化してますけど、これ、大丈夫でしょうかね?


 あの国の宰相とかに狙われるんじゃないだろうか……ちょっと心配……。


 このあと、木に向けて、水の槍と氷の槍で実験させてみたら、氷の槍の方が大きな穴を開けてしまった……。魔法の威力、増してるよ……ヤバいな……。


 そしたら、今度はまた男の子ふたりが戻ってきまして。


「テッシンさま、しょーぶ!」

「けんでたたかう!」


 こいつらがやってくると、リコの方は誰もいない。だっこしてぬくぬくだった女の子たちはひょいっと僕から飛び降りて、リコの方へと走っていくという。ああ、ちょっとさみしいかも。ロリコンではないけど。


 剣といっても、あくまでも木の枝を構えてる男の子たち。だけど、僕の手に木の枝がないんだよね。どうしたもんか。


 あ、でも、冬場はキッチョムさんたちもヒマそうにしてるし、ちゃんと剣術を教えてもらった方がいいんじゃないかな?


「ふたりとも、中からキッチョムさんとナーザさんを呼んでおいで」


「きっちょむ?」

「なーざ? いいけど……」


 たたたーっと走っていって、食堂の中に入ると、すぐにキッチョムさんとナーザさんを引っ張って出てくる。


「テッシンさま?」

「呼んだか?」


「このふたりが、こう、ずっと剣術みたいに木の枝で練習してきたんですけど、僕はうまく教えられないから、キッチョムさんとナーザさんで、剣術的なことを教えてあげてほしいんですよ」


「いや、そう言われても……難しいっす」

「まあな。おれたちも自己流だしな」


「まあまあ、開拓者としてやってきたふたりの方がいいと思うんで」


「……そうっすかね?」

「ヒマだから、いいけどよ……」


 キッチョムさんは嬉しそうに鼻をこすってるし、ナーザさんもにやにやしてる。ほめられて嬉しいとか、子どもなのか?


「じゃ、ちょっと相手をしてあげて下さい。あ、手加減、ちゃんとしてあげて下さいね?」


「当然っす」

「大丈夫だって、そのへんは」


 よし。これで男の子たちの相手は任せられる。うん。僕はもう、雪合戦でたっぷりと遊んだし。


 そういう感じで、男の子対開拓者の訓練が始まったんだけど……もちろん、どっちも木の枝ね。安全のため。


 ええと……?


 なんか、キッチョムさんも、ナーザさんも、すんごく苦戦してるように見えるんだけど? どういうことでしょうかね?


 このふたり、顔がマジになってますよ……?


 僕の気のせいじゃないとしたら……キッチョムさんとナーザさんが勝ったのは、勝ったんだけど……ぎりぎり、薄氷の勝利とか呼ばれる感じの、僅差のような……あれ?


「……どういうことっすか! このふたり、10才になってない子どものすばやさじゃないっす!?」

「力も強ぇよ……子どもの力じゃねぇだろ……どうなってんだよ? 手加減とかできねぇし、恥ずかしいけどこっちは全力だったぞ……?」


 ……ええと、ニニギも、パックも、まだ8才だったか、9才だったか、それくらい? まともな戸籍がないって困るな。考えとこう。


 それなのに、14才とか、15才とかの、キッチョムさんと、ナーザさんと、互角くらいのスピードとパワーがあるってこと? 割と、どうしようもない年齢差のはずなんだけど? 小学生が中学生に挑むって無謀なレベル差のはず?


 でも、負けたふたりはまた泣きながらリコの方へと走っていくんですけどね?


 うーん。まさか、ね……。


 ずっと僕に向かって木の枝を振り回してた結果、身体強化が身に付いたとか、そんなことは、ない、よね?


 あははー、まさかねー……。


 そんな意味不明なことは……ない……と思いたいけど……ここ、意味不明な異世界だからなぁ……。


 あったりして……。





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