第16話 秘密の特訓 その1
── 約二期前 ──
「えいっ! えいっ!」
ハルセが点に見えるほどに遠く離れたラグーム平原の南側。
ガルベルトとルーチェリアは、武器の取扱いについて修練をしていた。
「ルーチェリア殿の太刀筋! いいではないか! 剣士向きだな」
「でも、ここに来るまで、剣の練習なんて殆どしたこと……ないよ?」
「ビハハハ。それは生まれつきの才能、結構なことではないか。ルーチェリア殿は水属性だったな。今の貴殿のステータスを確認しておこう。レベルを教えてもらえるか?」
「ステータス確認? あ、集中して見るやつのことかな?」
「ああ、そうだ。見てみてくれるか?」
「うん、わかったぁ!」
ガルベルトの指示に従い、ルーチェリアは右目に精神を集中し自らのステータス確認を始める。
「ガルベルトさん、見えたよ」
◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆
名前 :ルーチェリア=シアノ
種族 ; 獣人(混血種)
年齢 :10歳
レベル :8
属性種別:水
属性力 :955
体力 :350
筋力 :180
敏捷 :240
物理耐性:155
<属性魔技>
[属魔:低]
[属魔:中]
[属魔:中]
◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆
「う~ん、レベルは8ってあるんだけど……魔法の名前の横に〝LV2〟って書いてあるよ。なんだろう?」
「ん? レベルは〝8〟なんだな?」
「うん、そうなってるけど」
「魔法はよく使っていたのか?」
「そんなに使ってないよ。低域の
レベルは8。
その状態で
ましてや、ここに来る以前はもっと低かったと予想される。
中域魔法の発動にはレベル10は最低でも必要。
……これはあくまでも発動するだけだ。
要は、魔法が詠唱により発動開始するのみであって、そこから実際に放たれるまでには至らない状態だ。
中域魔法を発動開始するだけでも奇跡的なのだ。
魔法の習得自体は、発動開始を一度でもさせれば事足りる。
きっと、ルーチェリアの母親は成長に期待して教えていたのだろう。
仮にその時に習得できなくとも、要領だけでも学ばせたかった。
低域魔法では厳しい状況が迫りつつあることを、察知していたのかも知れない。
それと、魔法には強化段階が存在する。
ルーチェリアがレベル2と言っていたのは、この魔法強化段階のことだ。
習得直後は魔法強化LV1であり、強化段階はLV3まである。
特に適正がある者が習得した場合、〝LV2〟が初期値になるという話を聞いたことがある。
「ルーチェリア、確認なんだが〝属性力〟の数値はいくつになっている?」
「ええと、属性力は〝955〟ってなってるよ」
「ん!? すまん、もう一度確認だ。レベルは〝8〟なんだよな? それで、属性力は〝955〟となっているのか?」
「う、うん。ダメなのかな?」
いやはや驚きの数値だ。
通常であれば、1レベルあたり50程度の数値変動が大体の目安だ。
その観点でいくと、レベル8のルーチェリアは400前後と予想していた。
だが、今のルーチェリアは既に中域の発動に必要なレベル10を大きく超える属性力は持っているということだ。
中域の習得に必要なレベル10であれば、属性力は500前後である。
ルーチェリアのレベルが仮に今の半分だったとしても、500近い属性力を既に有していた可能性がある。
レベルが発動基準に満たないにもかかわらず、ルーチェリアが中域魔法を習得できたのは、驚異的な属性力が示すとおり、適正がずば抜けていたことに最大の理由があったと言える。
ただ、属性力だけでは魔法の発動は難しく、耐えうるだけの体力や筋力といった肉体的な面の強化が必要になる。
所謂、レベルに該当する部分だけがルーチェリアには欠落していたということだ。
一旦話を続けるが、ルーチェリアは水属性の中でも防御特性に優れていた。
習得していた中域魔法はどちらも防御特性のもの。
そう確信したガルベルトは、属性レベルを上げるための修練、そして、魔法強化LV2から使用可能となる〝属性開放〟の習得を目標として定める。
伸び盛りのルーチェリア。
獣人として身体能力の成長は早く、それに比例するようにレベルも18へと成長。
初期のレベルとはいえ高負荷な修練であっても、1レベル上げるには3、4日は最低でもかかるだろうと踏んでいた。
ここに来て約3期。
ルーチェリアには、大きな負荷を掛け過ぎないような修練をさせていたが、それであってもレベル8は成長速度が遅いと見ていた。
しかし蓋を開けてみればどうだ?
レベルは8から18へと10も上昇した。
2種類の中域魔法での防御、剣術も日に日に進歩。
……その速度は目を見張るものがある。
ルーチェリアの武器は、類まれな才能の剣術と水属性魔法による防御、そして異常なまでの成長速度。
ガルベルトはいずれ自身とすら渡り合えるだろうと、末恐ろしくもあり、鍛えがいがあるルーチェリアの才に心の中は密かに息まいていた。
それに、ハルセに次の段階へ導くためには、これほどの適任はいないと改めて確信したのも、この頃だった。
「ルーチェリア殿、その調子だ。今日から〝属性開放〟の修練を開始する。魔法は発動から解除までが一つのものだ。貴殿の
「……コントロール?……ですかぁ?」
「ああ、上手く
「すごーい。じゃあ、折角出した沢山の水もそのまま消さずに、何かを押し流すようなことも出来るのかなぁ??」
「貴殿次第だが〝属性開放〟とはそういうものだ。修練次第で可能だ。──それと、話しておきたいことがある」
真剣な眼差しのガルベルトと、「ん?」と首を傾けるルーチェリア。ガルベルトは個別修練の意図をルーチェリアへゆっくりと伝え始めた。
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