第18話海斗。今何処なんだ。

📱「お兄ちゃん。海斗君は帆南ちゃんを助けに行っちゃったよ。ごめんなさい。私が言ったから……」


 音葉は申し訳無さそうに言った。


📱「何で止めなかったんだよ。くそっ」


 早葉は悪態をついて電話を切ってしまう。この時、音葉の耳には電話を切るピッと言う音が響いて居た。音葉に取っては絶望の音に聞こえて居たのだった。辛い音だった。トラックの外では加瀬の爺ちゃんと岩爺ちゃんと二人でやり合っていた。


「爺さん。トラックに乗るんじゃ」


 加瀬の爺ちゃんが説得する。


「海斗君が行ってしまう。酷い熱なんじゃ。このまま行かせたら死んでしまう。孫に合わせる顔が無い。早葉に何て言えば良いんじゃ。わしゃどうすれば良いんじゃ。加瀬ちゃんわしを引き留めねぇでくれー」


 岩爺ちゃんは足を引き摺りながらも後を追おうとして居た。


「岩ちゃん。気持ちは分かるがその足で追い付く訳無かろう。足を挫いておるんじゃぞ。聞け、わしじゃって岩ちゃんを行かせる訳には行かんのじゃ。トラックに乗ってくれ。病院に行こう」


 加瀬の爺ちゃんが説得する。


「お爺さん。ここはごしょうだから、言う事を聞いて病院へ行って下さい。加瀬のお爺さんお願いします」


 言って、椛婆ちゃんも説得したのだ。岩爺はあえなく断念してトラックに加瀬の爺ちゃんの肩を借り、乗って病院へと向かった。その頃、早葉は一方的に電話を切った後、直ぐに海斗に電話を掛けた。海斗がスマホを持っていると言う一分の望みを抱いてスマホに電話を掛けたのだ。


「トゥルルルル。ピッ」


 電話が繋がった。


📱「おい。海斗。今何処なんだ」


 早葉はスマホに呼び掛ける。


📱「ゴホン。ゴホン。ゲホンッ」


 帰って来るのは咳ばかりが聞こえて来た。早葉は苛立ちばかりが募るばかりだった。


📱「なあ。海斗。頼むよ。頼むから病院に行ってくれ。オレが悪かった。オレが家に帰れなんて言ったから、こんなに無理させちゃって、オレが悪かった。卒業制作見せてやれば良かった。ごめん。海斗。お前はいつだって人の事ばかり、考えて世話焼いて、皆んなの為に優しかった。けど、これは違う。自分自身を大切にするんだ。病院に行けよー‼︎」


 早葉は膝から崩れ、号泣する。


📱「!」

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