第14話海斗の咳が受話器の向こうから聞こえて来た。

「お兄ちゃん聞いてる」


と、音葉の不満の声が上がったと共に酷い咳の音が聞こえて来たのだ。


「音葉大丈夫か。酷い咳の音が聞こえて来たんだけど、未だ治って無いんじゃ無いのか?」


 急に心配になる 早葉。


「ううん。私じゃ無いよ。海斗君だよ。海斗君なんか熱っぽいんだ」


📱「何だってそこに海斗が居るのか。何で海斗がそこに居るんだよ。ふざけるな。海斗と変わってくれ⁉︎」


 早葉は電話越しに言った。


📱「うん。分かった変わる」


 音葉は早葉の要求を呑んだ。電話を変わった海斗。左手で頭を押さえ、右手でスマホを耳に押し付けた。


「はい。ゲホゲホゴホッゴホッ」


 海斗の鼻声と咳が受話器の向こうから聞こえて来た。


📱「おい。お前。何やってんだよ。何でお前がそこに居るんだよ。まだ、全然治ってねーじゃねーか。早く病院に行けよ。死にテェのかお前は……⁈」


 ガンガン怒る 早葉。


📱「頭がガンガンするんだ。もう少し、小さい声で喋ってくれ。それにここは山の上だ。病院はここには無い。下はゲホッ。ゴボッ。濁流。下に降りる道は無いんだ。水が引かなきゃ下には降りれ……無いんだよ。ゴホッ。ゴホッ」


 海斗は咳をしながら、 早葉と話した。


📱「なら、飛んでけ。飛んで病院に行って来い。お前なら飛べる。飛んで行って来い」


 早葉は言って、何も出来無い自分を責める。


📱「ゴホン。ゲホッ。ゴホッ。ハハッ。無茶言うなよ。飛べるか。ゴホッ」


 海斗が切ないしゃがれた声で話した。


📱「それでも、飛べ、飛んで病院に行ってくれ」


  早葉は祈る気持ちで言った。


📱「ゲホッ、ゴホッ。けど……」


 海斗は言って言葉を切った。


📱「けど……。けど何だよ。言ってくれ」


 その言葉の先を聞こうと必死な早葉。


📱「ゴホッ。ゴホッ。けど、クショーン。ハッハクショーン。けど。ゴホッ。ゴホッ。けっゴホッ」


 何度も云おうとするが咳が邪魔して話す事が出来ない海斗。


📱「大丈夫か海斗。あったかくしてるか?」


 早葉は心配して言う。

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