第10話意識
早葉の体がピクッと動いた。早葉の意識が覚醒し始めたのか、ガクッと一瞬体が落ちた様に動いたのだ。薄らと目を開けてボーッとしている。
「ううっ。あっ、ああうん。ツーっ」
状況を判断しようと思考を巡らそうとするも頭がガンガンして来る。体も動かそうとするも激痛が走る。体が痺れ、重く、言う事を聞か無いそんな状態だった。
「がくっ。ボキッ。ふら〜」
頭を横に振り何もかもを振り払う様にしようとする 早葉。頭を上げ、ゆっくりと周囲を見回す。
「お兄ちゃん。良かった。目が覚めて良かった。本当に良かった」
「ぐすん」
新葉は喜んだ。心からホッとした。
「林。大丈夫か?」
先生がホッとして言う。
「 早葉。良かった。取り敢えず良かった」
言って、悠人は早葉の頭を撫で回す。他の子達も拍手が出る。
「わー」
「パチパチパチパチ」
口々に喜びを語り合って居た。
早葉は子供達の喜ぶ声で反応し、理解し、頭の中で整理し、思い出し、今の状況を受け入れた。ゴーゴー鳴る濁流の音。降り続ける雨風。周りを見渡す。一緒に屋上に上がって来た仲間達は皆んな無事だった。その事に安堵する。けれど、今の現状を考えた時、唐突に思い浮かんだ残酷過ぎる程の現実。
早葉は立ち上がろうとした。しかし、重い体。ふらつく視界。ヨタヨタして居て思う様に歩け無い。それでも屋上の上から下を眺めた。川から流れ出した泥水は濁流となって流れて居た。まったく引きそうに無い。その量はこの屋上から離れる事の出来無い現実を意味して居た。これ程の水の量。高さを鑑みた時にこの一帯がどうなって居るかなどは予想が付く。家の事。家族の事。海斗の事も皆んな皆んな不安だけが 早葉に押し寄せて来た。
「何だよ。これ。どうなってるんだよ」
早葉は頭がぐちゃぐちゃになって行く。濁流に心までもが呑み込まれて行く。先生の前に来る早葉。
「この辺一帯どうなって居るんですか? オレの家族は海斗は家に居た子はどうなったんですか。無事なんですか?」
早葉は想いの岳を吐き出す様に先生にぶつけた。
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