これこそが、まさに、SF(数学フィクション)である。
- ★★★ Excellent!!!
1秒が24秒であれば、時間が24倍になっているのだから、
3日間は3×24=72日間である。
この計算を、
『3日間は72時間だから、秒に換算すると――25万9,200秒だけれど、今の現実では24倍遅れるので――高々三日が過ぎるまでに622万800秒も掛かる。これは1,728時間だから、日数に換算すると――72日!』
と作中では計算する。
『3日間は72時間』つまりは、3×24という計算をはじめにしているわけで、
この時点で3日間は72日と換算できるはずである。だがしかし、
あえて、あえて、日を時間に直し、記述されていないが、時間経過を表す『――』
が挿入されているので、おそらく分に直し、秒に直し、また、24を掛けて、
分に直し、時間に直し、日に直す。
3×24で済む計算を、
3×24=72、72×60=4320、4320×60=259200、259200×24=6220800、
6220800÷60=103680、103680÷60=1728、1728÷24=72。
と7つの計算を行うのだ。
なぜか?
作中では、こう続く、
『思考のスピートは相変わらずだけれど、現実がゆっくりになった分、余計にもどかしく、焦じれったく、辛抱堪らない』
そう、この、『もどかしく、焦じれったく、辛抱堪らない』感情を、
数式に、過剰な計算過程に、仮託しているのだ!
いまだかつて、計算過程を感情のメタファーとして、扱った作家がいただろうか?
これこそが、まさに、SF(数学フィクション)である。