第101話 治療
「ねぇ、わたしの目は見えるようになるの?」
「大丈夫だぞ!!」
「ほっ、本当ですか?」
芽衣ちゃんのお姉さんは半信半疑に聞く。
「大丈夫だと思いますよ!」
「神月さん。本当に大丈夫なんですよね?」
宗吾さんまでが質問してくる。そして、周りの目が痛い。
「そんなに疑われたら自信が無くなりますよ。」
「え~っと、大丈夫なんですよね??」
「任せてください!」
「どうかよろしくお願いします!」
「お願いします!」
芽衣ちゃんと芽衣ちゃんのお姉さんは立ち上がり頭を下げる。俺はそんなことはしなくていいことを説明する。
「じゃあ、宗吾さん。帰りますか?」
「えっ?まだ、来たばかりじゃないですか?」
「子供をいつまでも放って置けないでしょ?」
「それは、そうですが……。」
「それと、ママさん。」
「はい?何でしょう?」
「今日、芽衣ちゃんのお姉さんを連れて帰りたいんですけどいいですか?勿論、穴埋めはしますよ。宗吾さんがね!」
「えっ?私ですか?」
「これから面白いものを見せますからその見物料ということで!」
「仕方ないですね。わかりました。」
宗吾さんはそう言うと、この店の1番のお酒を5本注文する。
「それじゃあ、芽衣ちゃんのお姉さん。……、名前は、雅さんでいいんでしたっけ?」
「雅は、源氏名よ。私の本当の名前は、秋名椿よ。」
「俺は、神月サイガです。よろしく!じゃあ、自己紹介も済んだことだし行きましょうか?」
「ちょっと待ってもらえる。この格好じゃ外には出られないから着替えてくるわ。」
「あっ、そうですね。」
そう言い、椿さんは着替えに行く。その間に宗吾さんは携帯で車を呼んでいる。
椿さんが5分位で準備を済ませて戻ってくる。そして、俺達はそのまま店を後にする。そして、丁度、迎えの車が来たので車に乗り込む。
そして、車で宗吾さんの家に着く。俺達が玄関を潜ると
「おかえりなの~!」
と、グラムが飛び付いてくる。
「おう、ただいま!」
「えっ?……えっ?あれって?」
椿さんはグラムを見て混乱しているようである。芽衣ちゃんの方はあまりよく見えておらず、スライムだと認識出来ていないようである。
「あれは、神月さんのお仲間ですよ!そんなので気にしてたらこれから先、心臓が幾つあっても足りませんよ!」
「そっ、そうですか。」
「じゃあ、行きましょうか!」
宗吾さんがそう言い、先頭を歩いていく。そして、部屋に辿り着き中に入るとそこに、玄羅、飛鳥さん、結衣さん、玉兎さん、さくらさん、朔夜、スノウとウルがそこには居た。
「えっ?何でここに全員が集合してるんだ?」
「神月が帰って来ると連絡を受けると、全員がここに自然と集まってきたんだよ。飛鳥だけははじめからここでお前の従魔と遊んでいたぞ!」
「そうなんですね。……飛鳥さん。家の奴等がお世話になりました。」
「いえいえ、グラムちゃん達と過ごせて楽しかったですよ。それで、そちらの方達は?」
俺はこれまでの経緯を椿さんに許可を得て全員に話す。
「それは大変でしたね。それで、神月さん。この子の目をどうやって見えるようにするのかしら?」
飛鳥さんの言葉に全員の目が一斉に俺の方に向く。一人を除いて……とりあえずその一人は放置して話をする。
「方法は3つ考えます。」
「3つ?」
「はい。まず、最終手段から話します。」
「おいっ、神月。何故最初に最終手段を話すんだ?普通は、秘密にしとくもんだろ?」
玄羅がそう質問してくる。
「それは、最終手段が全員が知っている方法だから。俺が、秘密にしたいのはむしろ1つ目と2つ目ですからね。」
「そうか。それで?」
「まず、最終手段は簡単。現在の最新医療を利用します。これは、俺が言い出したことなのでかかるお金は俺が負担しようと思います。」
「えっ?それは?」
椿さんは、俺がお金を全額負担すると言うと少し躊躇ってしまう。
「大丈夫です。最近稼いでますし、最終手段の前にどうにかするつもりですから。それで、まず、1つ目の方法ですけど、回復魔法を使おうと思います。」
「「「「「「「回復魔法??」」」」」」」
「そうです。」
「そんなものが本当にあるの?」
さくらさんが質問してくる。
「こんな世の中ですからね。」
「でも、師匠。回復魔法は傷等を回復するのであって目が見えるようにはならないと思うんですけど……。」
朔夜がそう言ってくる。
「まぁ、そうなんだけど俺のはちょっと違うんだよ。まぁ、試しにやってみよう!」
俺は、芽衣ちゃんの前に座り芽衣ちゃんに目を瞑るように言うと素直に従ってくれる。俺は、芽衣ちゃんの目を手で覆うと再生魔法を発動する。皆の前では回復魔法と言って誤魔化しておいた。再生魔法を発動すると芽衣ちゃんの中、主に目の奥辺りに妙な違和感があったが、直ぐに消えて無くなってしまった。そして、魔法をかけ終わり、ゆっくりと俺は芽衣ちゃんの目から手を離す。このとき、芽衣ちゃんには、まだ目を瞑っているように声をかけている。
「じゃあ、芽衣ちゃん。ゆっくりと目を開けて見ようか?」
「わかった。」
芽衣ちゃんは俺の言った通りにゆっくりと目を開ける。目を開けた芽衣ちゃんは、瞬きをしながらゆっくりと左右の確認をしている。皆は、固唾を飲んで見守る。
「それで、どうかな?」
俺は芽衣ちゃんに今の状態を聞いてみる。
「うん!スッゴくよく見えてるよ!」
「おっ、それは、良かったな!じゃあ、ちょっと実験な!」
「実験?」
俺は、部屋の角に行き、指を3本立てる。
「これ、何本に見えるかな?」
「3つ!!このくらい余裕!」
と、ピースをする芽衣ちゃんを椿さんは抱き締め「良かった。良かった。」と繰り返し言っている。そして、その後立ち上がり
「神月さん。本当にありがとうございました。」
「ありがとうございました!」
と、芽衣ちゃんと椿さんが深々と頭を下げる。
「そんなに畏まらなくていいですよ。」
「やっぱり師匠は凄いです!」
「ここまでくればもうなんでもアリね。」
朔夜とさくらさんがそう言う。
「ご主人にかかればこんなことどうってこと無いの!」
「だぞ!」
「なのです!」
グラム、スノウ、ウルも同意見のようである。その後も、他の面々から同じようなことを言われる。だが、1人だけ別世界に行っている人がいた。なので、俺が、
「あの~!さっきから玉兎さんが固まって動かないと思っているのは俺だけなんでしょうか?」
「師匠。多分、玉兄ぎょくにぃは椿さんに一目惚れしたんだと思うよ!」
「「「「「「「えっ!?」」」」」」」
朔夜が爆弾を投下する。
「だって、玉兄、さっきから椿さんの方しか見てないですよ!」
椿さんは急に頬を赤らめる。すると、玉兎さんは正気に戻り、
「ちょっ、朔夜。そんなこと分かってても言うもんじゃないだろ?」
「でも、見てたら丸分かりでしたよ。」
「でも、まだ、2人は出会ったばかりな訳ですし、今日は解散にしませんか?」
「おいっ、神月。何故、急に終わらせようとする?」
玄羅がそう質問してくるが、確かに少し無理やり感は否めない。
「簡単な話ですよ。俺の腹が減ってるからです。」
全員の目が点になる。なので、俺は続け様に答える。
「今日は、ちょっと依頼がたのでそれを今日中に終わらせようと思い少し長めに探索をして、それから宗吾さんに飲みに誘われました。俺が、想定していたのは居酒屋かなと思ってたんですが、そこは宗吾さんが一般人と思ってたのが間違いでした。まぁ、あの店に行けたから椿さんと芽衣ちゃんに出会えたわけなんですけどね。それで、飯食べてなかったんで、腹ペコなんですよね。」
「何だ。そんな理由か。だが、残念だな。料理人たちはもう帰ってしまったぞ。」
「いいよ、じいさん。調理場を貸してくれればいいよ。」
「うむ。調理場は無理だが、小さい台所を貸すことは出来るぞ!」
「それで、充分。」
「ところで、ご主人。何を作るの?」
グラムがそう説明してくる。
「そうだな。今、腹ペコだから、ガッツリとしたものが食べたいから、まずはサラダでも作って後は、ご飯とメインはミノタウロスのステーキかな。」
この、ミノタウロスのステーキに何人かの人が反応をする。その何人かは、グラム、スノウ、ウル、玄羅、朔夜、芽衣ちゃんである。
「ご主人。それなら、グラムもいるの!」
「俺もほしいぞ!」
「ウルもなのです!」
やはり、3人は食いついてきた。
「でも、お前ら、夕食を食べたんだろ?」
「食べたの!でも、それは別の話なの!」
「そうだぞ。別腹だぞ!」
「そうなのです!」
3人の圧が物凄い。
「わっ、わかった!」
「おいっ、神月!そのステーキは食べたことないぞ!」
「私もですよ!」
と、玄羅と朔夜が食い付いてくる。
「まぁ、そうでしょうね。…………でも、2人とも夕食を食べたんですよね?」
「「それは、別腹!!」」
「わかったよ。作れば良いんだろ!」
結局、俺を含めて6人分作らなければならないと思っていると芽衣ちゃんが涎を垂らしていた。
「そういえば、芽衣ちゃんも晩御飯まだだよね?一緒に食べる?」
「いいの!?」
芽衣ちゃんの顔が明るくなる。
「こらっ、芽衣。これ以上ご迷惑をかけるわけにはいかないでしょ。」
「ええ~!」
椿さんの言葉にとても残念そうにしている芽衣ちゃんであったが、
「今日はもう遅いし2人には泊まっていってもらったらいいんじゃない?ねぇ、父さん。」
「いいぞ。部屋なら沢山あるからな。」
「そういうことなので、今日は泊まっていって下さい。あと、神月さん。」
「はい。何でしょう?」
「さっきの夕食なんですけど、自分と椿さんの分もよろしくお願いします。」
「え!?私もですか?そんなにお腹は減ってないんですけど。」
「大丈夫ですよ。妹達があんなに食い付くなんて絶対に美味しいはずです。」
「そうですか。」
玉兎さんが、急に男らしくなってしまった。そして、それならと他の人達も全員が食べたいと言い出したので結局全員分を作る羽目になってしまった。
俺は、朔夜に案内され台所に行く。だが、俺が、思っていたよりも随分と広い。家の台所の2倍は軽くあった。
「ここですよ。自由に使ってください。」
そう言い朔夜は元居た場所に戻ろうとするが、
「ちょっと待て!」
「どうしました?」
「朔夜。まさか、そのまま何もしないで戻るつもりか?」
「え!?」
「結局全員分作ることになったんだから、手伝ってくれるよな?」
「わっ、分かりました。」
「よしっ!じゃあ、サラダの方頼むな!俺は、肉を焼いていくからな!」
「分かりました。」
俺は、サラダのためにキャベツ、レタス、トマト、きゅうりを出す。それを、朔夜に切ってもらいサラダに盛り付けてもらう。俺は、ミノタウロスの肉を取り出し、適当な大きさに切り分ける。そして、コンロの火をつけフライパンにミノタウロスの脂身を入れてから肉を焼き始める。勿論、焼く前に塩コショウを振っておく。そして、肉を焼き皿に乗せてから熱々を食べたいので、俺のアイテムボックスに入れ込んでいく。20分位で仕上げることが出来た。そして、朔夜の方も上手く出来たようなのでテーブルに並べていく。茶碗にご飯を盛り、肉の皿とサラダを並べる。サラダ用のドレッシングも何種類か用意する。そして、朔夜に皆を呼んで来るように頼む。
それから、直ぐに全員が来た。そして、各々席に着く。
「「「「「「「「「「「「いただきます。」」」」」」」」」」」」
皆それぞれ肉をナイフで切って頬張る。
「う~ん、やっぱり美味しいの!」
「美味いぞ!」
「美味しいのです!」
と、グラム達はいつもの反応である。他の面々はというと、
「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」
全員が無言で固まっている。
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