第100話 出会い 後半
さて、ここは現在の俺である。哮天犬が見つけた女の子である。目的地は同じなので一緒に行くことにする。
女の子の名前は芽衣と言うらしい。どうやら、両親は居らず、年の離れた姉が面倒を見ているようである。だが、芽衣ちゃんは、姉と一緒にいられないことに耐え兼ねてここまで来たようなのである。しかも、元々目が見にくいのにである。
そして、漸く俺と芽衣ちゃんの目的地であるベルと言う店の前に来る。俺はこう言った夜の店に来るのは初めてであるので、深呼吸をして、いざ行かん!
俺達は店に入ると目の前にとても大きな黒いスーツを着た男の人が立っていた。
「いらっしゃいませ。……と、言いたいところですが、そのような格好では入店を御断りさせて貰います。それに、その犬と未成年の子供が入る事は出来ません。」
「そこをなんとか?」
「無理です。」
「そうですか。では、この子のお姉さんがここで働いていると思うんですが呼んで貰えませんか?」
「お姉さん??」
「そうです。」
「生憎ですが、そう言うことにはお答えしかねます。お引き取り下さい。」
どうやら、俺は入店拒否であるらしい。まぁ、芽衣ちゃんも未成年の子供だから店には入れないと思ってはいたが、姉を呼んで貰える事くらいは出来るだろうと考えていた。だが、この大男は、俺の言葉に一切聞き入れずに、俺達を追い返そうとしている。大男に話をしていると後ろから、
「なぁにチンタラやってるんだ。早く退きやがれ!」
俺は、その言葉に少しイラっとして振り返る。すると、そこには、少し背の低い真ん丸の男が居た。その男は、悪趣味なサングラスをかけ、首には金のネックレス。指には沢山の指輪をはめていて、柄の悪い人であった。そして、その男の後ろには数人の男達が控えており、その1人が前に出てきて俺の胸倉を掴んで
「お前、この方が何方と思ってるんじゃ、ボケ!」
俺は、そんなの悪趣味で柄の悪い男に興味は無かったので
「知りませんけど、そんな人!」
っと、返す。
「はぁ~、ふざけてんのか?このお人は関東一の暴力団竜光会の若頭の海道さんだぞ。」
「へぇ~それで?」
「お前な~!そこはビビるところだろう?」
「いや、今の世の中、警察に連絡したら一発でしょ?」
「うっ、それを言われると……。」
暴力団の男は俺に痛いところをつかれたのか俺の胸倉を掴んでいる手が緩む。すると、趣味と柄の悪い男が、
「おいっ、加藤!何やってるんだ?そう言うなめた奴は外に連れていって痛い目を見せてやれ。」
「分かりました。」
若頭が、そう檄を飛ばすと再度俺の胸倉を掴む力が強くなり入り口の方に力を入れられるので、仕方なく付いていく。
「お前らも行って可愛がって来い!」
「「「「分かりました!」」」」
4人とも元気な返事をすると俺と加藤の後に付いてくる。因みに、哮天犬も一緒に付いてきている。しかも、芽衣ちゃんを背中に乗せて。
そして、俺は、加藤と呼ばれた人に胸倉を掴んだまま壁に打ち付けられる。
「髄分となめた態度を取ってくれるじゃないか?あぁ?」
何か付き合うのも面倒になってきたので、取り敢えず俺の胸倉を掴んでいるてを振りほどく。すると、
「痛ぇ~!骨が折れやがった!」
と、加藤が叫び出す。すると、そこに、さっきの残りのメンバーが登場する。
「あーあ!こりゃ折れてるな!」
「俺達、竜光会に喧嘩売ってるのか?」
「てめえ覚悟は出来てるんだろうな?」
「慰謝料請求するぞ!」
等々言ってきている。そもそも、骨なんか折れていないのである。人にわざと当たって骨が折れたと騒ぐ昔の手である。そんな手を今のご時世にするなんて余程の馬鹿じゃたないかと疑ってしまう。それに、俺はコイツらに関わりたくないと言うのが一番の理由だ。だが、探索者が一般人に手を出すことは御法度である。
「んっ?コイツらって一般人の部類に入れてもいいのか?」
ついつい独り言が出てしまう。
「てめぇ~、ふざけてるんじゃねえ!!」
と、右のストレートを出してきたので、俺は拳を素手で受け止める。すると、俺と加藤の間にさくらちゃんを下ろした哮天犬が居た。哮天犬の顔はとても獰猛な顔をしており、さっき、チンピラ共を相手にしていた時よりも怒っているように感じられる。すると、4人は尻餅を付く。立とうとするが、腰が立たないようで、手を使って後ろに下がっていく。たが、それも、壁にぶつかり逃げるのはすぐに終わる。4人はガタガタと震えており、俺がもういいと言うと哮天犬は威嚇をやめる。
荒事は終わったので俺達はもう一度お店に戻る。すると、今度は大男は居らず、どうしようかと思っていると、若頭と呼ばれていた男の声が聞こえてくる。
「いいじゃえねぇかよ!この後アフターしようぜ!」
「遠慮させてもらいます。」
どうやら店の女の子を口説いているようである。
「あぁ?いいのかそんな態度で?お前の妹がどうなっても知らねぇぞ?」
「そんな?話が違います!」
「だから、俺の女になれば金に不自由はさせねぇ。しかも、妹も救えるってもんだ!」
「うっ、そっそれは!」
どうやら、海道は、店の女の子の妹を脅迫のネタにして自分の女にしたいようである。腐ってるなと思う俺である。すると、
「あれ、たぶん、お姉ちゃん!!」
指を指すと俺が気にしていた女の子である。
「間違いない?」
「うん!あの声にあの感じはお姉ちゃんなの!」
「そうか分かった!」
俺が、海道の所に行こうとすると、
「いらっしゃいませ!」
っと、女の人が声をかけてくる。その女の人は、他の女は、他の女の人よりも少し歳上の感じのある和服を着た女の人である。
「あっ、どうも。」
「ああ、あなたもしかして宗吾さんのお連れの方?」
「そうです。こんな格好だし、連れがこんなものなので入店拒否されそうになりまして……。」
「あらあら、そうでしょうね。ワンちゃんの方はともかく、その女の子の方は無理ね!」
「あっ、違うんです。」
「違う?」
「はい。この子は、ここで働いている人の妹さんらしく、会いに来たんですよ。」
「そうなの。じゃあ、宗吾さんの所に案内するわね。」
俺達は取り敢えず宗吾さんの所に案内される。その間、芽衣ちゃんのお姉さんは海道に言い寄られている。席に着くと
「あの~?」
「何かしら?」
「こう言うお店って女の子を指名することが出きるんですよね?」
「えっ?神月さん!気に入った子がいるんですか?」
「違います!宗吾さんには後で話しますから茶々入れないでください。」
今、この席には女の子が宗吾さんの左右に一人ずつ居たが2人とも目を丸くしている。
「それで、どの子をご指名ですか?」
「あの人をお願いします。」
そう言い俺は、海道に絡まれている女の子を指差す。
「えっ?ああっ、あの子ですね。わかりました!」
そう言って和服の美人は呼びに行く。その間に、宗吾さんには説明する。
「そんなことがあったんですね!」
「ええ。それで、さっきの和服の人は?」
「あれはね、ここのママよ!」
宗吾さんの左右にいる女の人が答えてくれる。
「ママ?ってことは、一番偉い人?」
「正解!」
「やっちゃったかな?そんな偉い人に呼びに行かせちゃった!」
「いいのいいの!ママは好きでやってるんだから!それよりも、あなた、宗吾さんのお友だちなんでしょ?っと言うことは、何処かの大企業の跡取りとか?」
女の子は、興味深々で俺の事を聞いてくる。
「そんなんじゃないですよ。俺は、一般人ですよ!」
「そんなの嘘っ!そんな人が、天下の天上院グループの社長とこんなところに来るはすがないじゃない。「ねえ~!」」
宗吾さんの左右の女の子は目線と声を合わせて、一般人の訳がないでしょ?と言ってくる。すると、宗吾さんが
「その人は、正真正銘の一般人ですよ。但し、今、とてもホットなお仕事をされていますけどね!」
「ホットな?…………あっ、探索者ってやつだ!」
「正解です。」
「でも、何で探索者の人が宗吾さんと知り合いなんですか?」
「それは、企業秘密です!」
「宗吾さん。ずる~い!」
「それよりも私はこの子に凄く興味が在るんだけど……!」
席に付いてくれた女の子が哮天犬を見ながらそう言う。
「実は私も気になってたんだよね!撫でていいかな?」
「いいですよ!愛でる分には問題はないですよ。ただし、敵意を向けられればどうなっても知りませんけどね。」
「そんなことするわけないじゃない!ねぇ?」
周りを見ると待機していた女の子達もやって来ていた。
「抱きついてもいい?」
「いいですよ!なぁ?」
「わん!」
っと、哮天犬も了承する。そして、哮天犬を撫でたり抱きついたりしていた。
「やっ、ヤバイよこの子!」「めっちゃいい!」「幸せ!」
等々、至福の声をあげている。
そんな事をしていると、俺が指名した女の子。つまり、芽衣ちゃんのお姉さんがやって来る。
「ご指名頂きました雅です。」
と、一礼をして、顔を上げると、芽衣ちゃんが
「お姉ちゃ~ん!」
と、姉に抱きついている。姉もそんな芽衣ちゃんを受け止め抱き上げる。
「えっ?芽衣?どうしてここに???」
「それは俺から説明しますよ!」
「あなたは?」
「芽衣ちゃんの友達?かな!ねぇ?」
俺がそう言うと、芽衣ちゃんの姉は不信感一杯の目で俺を見る。
「う~ん!そうなの!」
芽衣ちゃんがそう言うと芽衣ちゃんのお姉さんも納得したようで、ここまでの経緯を話すと、急に立ち上がり、
「妹が大変お世話になりました。それに、私、変な目で見てしまって申し訳ありませんでした!」
と、深々と頭を下げるのである。
「ああ、気にしなくていいですよ!俺じゃなくてコイツがいち早く察知してくれたんで、礼ならコイツに言ってやって下さい。」
俺は、哮天犬を撫でてやると、
「ウォン!」
「えっ?どうしてここに犬が?」
「それは、宗吾さんの計らいですよ!」
「まさか、店に犬を入れたいなんて言われた時にはどうしようかと思ったけど、こんなに大人しかったら良いわね!」
と、ママが発言する。そして、芽衣ちゃんのお姉さんは哮天犬に
「妹を助けてくれてありがとうございました!」
っと、言ってくれた。俺の中でこの人は既にいい人認定だな。そう思っていると、俺達の所に1人の男が現れる。
「おいっ、雅っ、いつまで待たせるんだ??」
っと、海道が怒鳴り込んできた。芽衣ちゃんのお姉さんは少し不安がっている。
「仕方ないじゃないですか?俺がこの子雅を指名したんですから!」
「んっ?お前は!……何故ここにいる?」
海道は、俺がここにいるのが不思議なようである。
「何故って?」
「俺の手下どもはどうしたって聞いてるんだよ!」
「さぁ?帰ったんじゃないのか?」
「ふざけてんのか?あぁ?」
と、海道は恫喝してくる。
「ここに戻って来ないんだから、俺が知るわけ無いだろ?」
「ふんっ!まぁいい。奴らには後でたっぷりお灸をすえてやる!それよりも、その女は俺の女だ!手ぇ~出してんじゃねぇよ!」
「あんたこそ何言ってるんだ?ここは、女の子と楽しく酒を飲む場所だ!それに、指名することだって出きるんだ!あんたの女に手をとしてる訳じゃない。ただ、この店のルールに則ってるだけだ!」
「ぐぐぐっ!」
「それにな!この人はまだあんたの女って訳じゃないだろ?自分の女ならあんなに口説くわけないもんな?」
「ふんっ!雅は、俺の女にならざるをえないんだよ?」
その一言に、コイツにムカッときた。
「へぇ~、その理由は?」
「雅の妹の治療費には相当な金が要る。俺ならその金を出してやることが出来るんだ!」
「こんなこと言ってるけど本当?」
「ええ。確かに、芽衣の治療には多額のお金が必要です。」
芽衣ちゃんのお姉さんは下を向き悔しそうな顔をする。
「だから、雅は俺の女になるしかないんだよ!」
「その必要はないでしょ?俺が、持ちますからいいですよ!」
「えっ?」
「はっ?」
「勿論、そこの男みたいに見返りは要求しません。」
「お前は、自分が何を言っているのか分かっているのか?」
「ええ、分かっているつもりですよ!」
「多額の金がかかるんだぞ?」
「それが何か?」
「それだけじゃない!竜光会を敵に回すってことだぞ!」
「だから?」
「竜光会が怖くないのか?」
「ん~ただの暴力団でしょ?その程度なら別に?」
そもそも暴力団関係の人が探索者になることは出来ない。だけど、俺は探索者として結構強くなっている実感はある。今ならレベルを上げていない人が何人いようと負ける気はしない。
「それで、貴方はどうするんですか?今、この場で神月さんとやりあうんですか?」
これまで黙っていた宗吾さんが冷たく言う。
すると、海道は周りを見渡し、自分の手下がいないとみるや
「おっ、覚えてろよ!」
っと、捨て台詞を言い店を出ていった。
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