第99話 俺にとってイヤな電話

さて、話は現在に戻って来たが、ここは、天井院家である。現在、午後8時前である。天上院家の電話が


プルルルルプルルルル


と鳴る。電話には執事の藤川さんが出る。そして、その電話をリビングで寛いでいる玄羅の元に持っていく。


「玄羅様。自衛隊の鳳様からお電話が入っております。」


と言うと電話をすっと玄羅の元に差し出す。


「鳳か!何の用だ?まぁ、いいか。」


そう言うと、玄羅は電話を受け取る。


「もしもし、鳳か、こんな時間にどうした?」


【この時間の方がお前は暇だろうと思って電話したんだ。今は大丈夫か?】


「ああ、特に問題はないぞ。」


【そうか。】


「それにしても、鳳が家に電話をするなんて初めてじゃないか?」


【確かにな。それに、今日はちょっとした頼みがあって連絡したんだ!】


「頼み?」


【そうだ。】


「言ってみろ!」


【ああ、実はな、昨日のあの後に俺は今回の事情の説明のため防衛大臣から呼び出しがかかってな。】


「まぁ、当然だろうな。」


【そうだな。だが、呼び出された場所が問題だったんだ?】


「勿体つけるな!どこだったんだ?」


【首相官邸だ!】


「ああ、まぁ、そうだろうとは予感はしてた。それで?」


【そこには、防衛大臣はもちろんの事、首相官邸だ。総理も居た。後は、ダンジョン庁の長官も居たな。】


「そうか。それで?」


【ああ、見たことをそのまま話したさ。】


「まぁ、そうなるよな。」


【そうだな。それに、今回の件で考えさせられる部分も大いにあったからな。】


「考えさせられる部分?」


【そうだ。例えばお前達が使っている武器の事とかな?】


「武器?儂の刀の事か?それとも孫や神月達が使っていた方か?」


【ん?そんなの両方に決まってるだろ?それとも、性能は違うのか?】


「知らん!だが、武器としてはあちらの方が確実に希少だと思うぞ。鳳、お前も見ただろう?」


【……見たな。特に遙って嬢ちゃんが持っていた槍と神月が持っていた刀、あれはヤバイと感じたぞ!】


「そうだな。あとは、神月の従魔のクマが着けていたガントレットと言うと手甲は、ダンジョンでも希少な金属で出来ていてとても硬いらしいぞ!そんじょそこらのモンスターを殴った程度じゃああの手甲はびくともしないぞ!」


【そうなのか!確かに気にはなっていたが……。】


「性能面では少し劣るが、儂の刀もそれなりに強力だぞ!」


【なんだ?自分の武器の自慢がしたいだけなのか?】


「…………、そうだな。そうだと思うぞ!」


玄羅は少考え込んだ後に、そう言う。


【仕方ない。聞いてやる。】


「おおっ、そうか!実はな、あの刀は神月に作って貰ったんだよ。しかも、ダンジョン産の鉱石を使ってな。」


【ほう、それで?】


「普通、刀は激しく扱えば刃毀れが起こるものなんだ。この場合は、使用者の腕によるところが大きいがな。儂は、それなりに腕には自信がある。だが神月が作ってくれた刀はモンスターを何十、何百と斬ってきたが一切刃毀れは起きておらん。それに、刀に炎を点して戦っているのは見たと思うが、恐ろしい程に魔法がよく馴染むんだよ!」


【そんなにか?】


「ああ、これ以上無いくらいにな。だが上には上がある。儂の物よりも神月達が持っている武器の方が上だろうな。」


【そうだな。】


「それと、お前達はまだ銃なんか使っているのか?」


【それは、どういう意味だ?】


「そのままの意味だよ!」


【そのまま?】


「そうだ。この国日本は、銃の規制がある。それに、島国であるが故に陸路で入ってくることはない。それだけでも、他の国よりも銃入ってくることは少ない。なので、一般人が銃を手に入れる事はとても難しい。ダンジョンが出現したことにより多少の緩和があったかもしれないが、銃はそれなりに高価だ。だから、銃を一般の探索者が使うことはない。」


【それは、分かっているつもりだ!】


「対して、自衛隊は、世間的には軍隊と言う括りにはなっていないが、自衛を目的とした戦力だよな?」


【そうなるな。】


「っと言うことは、自衛隊には武器がある。つまり、銃火器があると言う事だ。たぶん、それらを使って自衛隊員はレベルアップして来たんだろうが、それにはそろそろ限界があったんじゃないか?」


【どうしてそれを?】


確かに、最初の頃はスムーズにレベルがアップしていたが、最近ではレベルを上げるのが困難になってきている。それには、幾つかの理由があった。まず、1つは、モンスターが強くなってきたこと。敵が強くなると言うことは、それだけ物資を消費すると言うこと。2つ目は、その物資の移送手段である。モンスターが強くなるのは階層を下がって行けば行くほど強くなる。だが、そこまで行くのにも物資を消費しなければならない。そして、強いモンスターを倒すには大量の物資が必要になる。俺みたいにアイテム袋や多少なりとドロップしいるが如何せん数が圧倒的に足りていない。そこに、今回の件である。銃火器では、ダメージを与えられず、足止めをするのが精一杯だったのである。


「ふんっ、そんなの昨日の状況を見ていれば自ずと分かるわ!」


【どうしたら言いと思う?】


「簡単だ。ダンジョンを探索すればいい!」


【??????】


「ダンジョンを探索することで、今の人間には到底辿り着けない物が沢山あるだろ!例えば、武器、防具、アイテム、スキルの書。そして、地球上には存在しない金属とかだ。それらを、有効利用していく必要性があるんじゃないか??」


【やはり、そう思うか!】


「当然だ。そして、それらは多くの利益が出る。っと言うことは、雇用も増えると言うことだ。だが、儂はここで1つだけ注意しておかなければならないことがあると思う。」


【それは、何だ?】


「それは、外国に対してだ。」


【外国??】


「そう、外国だ。ダンジョン産の武器やスキルの書が出回ればダンジョン探索には有効だと思う。だが、それらを軍事的に利用されたらどうだ?」


【………………確かに、面倒な事になるな!】


「その辺の事は政治家連中は分かっているのか?」


【どうだろうな?その辺はよく知らん。】


「まぁ、それは、儂達が考えても仕方の無いことだ。」


【そうだな。】


「それで、今日の用件はそれだけなのか?」


【あっ、イヤイヤ、重要なことを忘れていた。】


「何だ?」


【実はな、総理が神月に会いたいそうなんだ。】


「神月にか?」


【そうだ。どうだろう?】


「分かった。但し、幾つか条件がある。」


【条件?】


「そうだ。1つ、どんな格好でも文句は言わない。2つ、言葉使いを気にしない事だな。」


【そんなことか!大丈夫だと思うぞ!】


「そうか。それで、時間は?」


【明日の朝9時でどうだろう?】


「了解だ。」


【では、首相官邸に行ってくれ。】


「ああ、分かった。」


【じゃあ、またな!】


「またな!」


そう言い電話を切る。

玄羅は、面倒な事になったと思ってしまうが、仕方ない。ソファーにゆっくりもたれ掛かる。取り敢えずは神月を明日、神月を連れて首相官邸に行けばいいんだろう。

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