第96話 スタンピード後の総理官邸
さて、少し時間を遡って、ここは総理大臣官邸である。
「それで、まだ情報はないのか?」
少しイライラした感じで腕組みをしているのは、総理大臣の本堂昴である。ここには、防衛大臣の三枝真実子、ダンジョン庁の長官の御堂蒼真が部屋が部屋のソファーに座っている。御堂が
「総理。少し落ち着いたらどうです?」
「そうは言うがな、これからの事を考えると胃が痛くなる。それに、もし、今回の件が解決しなかったらと思うと……。」
「今は報告を待つしかないんだからオロオロしてても仕方ないでしょ?
三枝も落ち着いている。すると、執務室の扉が開かれる。
「どうした?何かあったのか?」
と、本堂が質問をする。入ってきた官邸職員に聞く。
「今、報告がありました。東京駅ダンジョンのスタピードは、無事に収まったそうです。」
「そうか。…………それで、被害の方は?」
「被害ですが、とりあえず、死者はいないようです。怪我人は多数いるようですが、ダンジョン庁がポーションを惜しみ無く使用しているらいしです。報告は以上です。詳細はまだ、分かりません。」
「そうか。ご苦労!」
「はい!では、失礼します。」
官邸職員は一礼して部屋を後にする。それと、同時に、本堂は椅子に倒れ込み思いっきり背もたれにもたれ掛かる。
「よかったですね。どうやら無事に終わったようですね。」
「ああ、ダンジョン庁の働きには感謝している。それと、三枝大臣。今回任務に当たった自衛官をここに呼んで貰えるか?」
「その、理由をお聞きしても?」
「詳細が知りたいだけだ!」
「分かりした。直ぐに手配します。」
三枝は、そう言い立ち上がり部屋を出ていく。
「それで、総理。これで、終わりだと思いますか?」
「それは、東京駅のダンジョンがと言うことか?それとも他のダンジョンでもあり得ると言いたいのか?」
「両方ですよ。」
「はぁ~、私は専門家ではないんだがな。ただ、こう言う事に詳しいというか、ファンタジー系が好きな秘書が言うには東京駅のダンジョンは心配なさそうだ。だが、他のダンジョンが同じことになる可能性は十分にあると思っている。」
「それを、聞いて安心しました。モンスターが蔓延る街なんて見たくないですからね。」
「そうだな。それには同感だ。」
そんな話をしていると、三枝が帰ってきた。
「総理。今、連絡したところ部下に指示を出したら直ぐにここに来るそうです。」
「どのくらいかかる?」
「30分程かと。」
「わかった。」
それから30分経とうとした時、執務室のドアをノックされる。
「入れ!」
「失礼します!」
そこには、鳳の姿があった。鳳は部屋に入るなり敬礼を行う。すると、本堂が
「とりあえず、座れ!」
「いえっ、自分はここで大丈夫です。」
「いいから座れ。どうせ話は長くなるのだろう。」
「わかりました。失礼します。」
鳳は本堂の促されるままにソファーに座る。
「それで、経緯を説明して貰えるか?今は、普通に話して構わんぞ!俺とお前の仲だ。」
鳳と本堂は、昔ながらの知り合いであった。
「わかった。まず、最近、東京駅のダンジョンで目が赤いモンスターが多数確認されていた。それで、今日、俺の部隊が調査をする予定になっていた。そして、準備が出来たのでそろそろ調査に行こうとした矢先、ダンジョンからモンスターが出てきたんだ。そこからは何匹ものモンスターが出てきた。考えたくはないが、もし、俺らが突破されでもしたら人的被害になると思ってな。俺の独断だか東京駅にいる人達を避難させた。すまん。」
鳳は、本堂に頭を下げる。
「いや、見事な状況判断だと思うぞ。その辺の拝めはないから安心しろ!」
「そうか。それは助かる。それで、何人かに報告と物資の調達を頼んだ。それなりには有ったが尽きるのが怖かったからな。それに、探索者や支部の連中にも力を借りて対処に当たったが徐々に押され始めたんだよ。理由としては、最初はゴブリンだけだったが次第に上位種が出てきたのが主な原因だな。そんな中、2人の女子高生がクエストを受けに来た。」
「女子高生?まぁ、探索者になれない年齢ではないな。それで?」
「ああ。俺は、何故かその2人に違和感を覚えたんだ。」
「違和感?」
「ああ。謂わば命のやり取りをする場で制服姿なんだぞ。」
「確かに。」
「そしたら、その2人が袋の中から武器を取り出したんだ。しかも、その袋には2つの武器が入るなんて到底思えない袋だった。」
「恐らく、その袋の中は異空間になっているんでしょう。」
「御堂。どう言うことだ?」
「簡単に説明すると、何の変哲もないカバンでもこの部屋くらいの物ならカバンに入れれると考えれば良いかと。」
「そんなものがあるのか?」
「さぁ?でも、彼女たちは持っていたんでしょ?」
「そうですね。それに、彼女たちが袋から出した武器もまた異様でした!」
「「「異様??」」」
「ええ、1人は弓だったのですか弦が付いてなかったんです。」
「お前、それは単に弦が切れてるだけの使えない弓じゃないのか?」
「ええ、俺も最初はそんなことを思っていたんですが、MPを矢にする弓だったんです!」
「ほう、それは素晴らしいですね。」
「どういう意味だ?御堂。」
「分かりませんか?弓を使うものが一番気にしなければいけないことは矢の残数です。ですが、それを、気にしなくていいなんて最高じゃないですか。」
「そっ、そうか!」
「それで、もう1人の彼女はどんな武器だったんですか?」
「もう1人は三ツ又の槍でした。」
「何か最初の彼女に比べれば普通ですね。」
「それがそうでもないんですよ。」
「どういう意味ですか?」
「彼女曰くその槍は水を生み出すことが出来て尚且つ自由自在に操ることが出きるらいしんです。」
「水を操る?」
「ええ。まだ、そこまでの量は操れないみたいですけどそれでも充分にすごかったですよ。」
「それで、彼女たちの活躍のお陰で乗り切ることが出来たんだな。」
「ああ。第一波はな。」
「第1波?っというこは、第2波もあったと言うことか?」
「そうだ。一旦収まったと思ったら次は全身真っ黒なゴブリンがダンジョンから姿を表した。」
「「「真っ黒なゴブリン??」」」
「そうだ。その真っ黒なゴブリンには銃等の武器が殆んど効果がなかったんだ。」
「効果がないだと?それじゃあ、どうやって倒したんだ。」
「まずは、彼女たちだ。彼女たちには倒すことが出来ていた。しかも、普通のゴブリンとあんまり変わらない程度に。なので、我々が出来ることと言えば彼女たちの援護をする以外なかった。だが、そんな彼女たちも圧倒的な数の前に徐々に押されはじめた。すると、そこに1匹の白い犬が乱入してきた。」
「おいおい、鳳。何を急に言い出してるんだ?」
「まぁ、いいから聞いてくれ。その白い犬が乱入してきたら彼女たちの表情は一気にあかるくなった。どうやら白い犬を知っているようだった。その白い犬は、目の前に広がるモンスターをあっという間に倒してしまったんだ。」
「「「…………。」」」
「まぁ、疑いの目は分かる。だが、事実だ。それに、まだ、これで終わりと言う訳じゃない。その、白い犬がモンスターを倒し終えると2人の人物が支部に入ってきた。1人は彼女たち一方の祖父でした。この祖父は私の古い知り合いでした。正体は後程としてもう1人は彼女たちから師匠と呼ばれていた。」
「師匠だと?」
「ああ。しかも、黒いゴブリンどもは、まだ、沢山湧いて出てきていたな。そしたら、師匠と呼ばれた男から3体のモンスターが出てきた。性格にはそいつの指輪からだがな。」
「というとこは何かのアイテムなのでしょうね。」
「そう思って間違いないと思うぞ、御堂長官。そのモンスターが、スライムに白い大きな虎みたいなのにちょっと小さめの熊だったな。」
「ちょっと待て鳳。真ん中に出てきた白い虎って言うのは強そうに聞こえる。まぁ、100歩譲って小さくても熊だから分からんでもないが、流石にスライムって言うのは無いだろ?スライムと言えば私でも知っている最弱のモンスターじゃないか!」
御堂も三枝も、本堂が言っていることに頷いている。
「そうだよな。俺も最初はそう思ったさ。だけどな、奴らこっちの言葉を理解するだけじゃなく話をしていた。それを、聞いていたがどうやら勝負をするらしかった。」
「モンスターが話すのには驚愕したわね。それて、その勝負の内容は何だったの?」
三枝が質問をする。
「内容は、誰が一番多くのモンスターを倒せるのかという勝負だ。」
「待て!その前に、そいつらは黒いゴブリンを倒せたのか?」
「ああ。余裕そうだったぞ。そこで、白い犬も交えて勝負が始まった。彼女たちは勝負には参加しなかったが黒いゴブリンどもを倒して廻っていたぞ。それと、爺さんたが、勝負には参加したそうにしてが、実力が伴わないからと孫達に止められていたぞ。アイツは昔から知っているが戦闘狂なところがあったからな。それで、黒いゴブリンを殲滅できたが、師匠と言うやつが言うには、まだ、入り口に向かって大物が来ているらしかった。」
「「「大物!!??」」」
「そうだ。見た感じ4、5メートルくらい有る黒いゴブリンだったな。」
3人が固唾を飲む。
「それを、アイツらときたら、全員でやればいいものを誰がやるのかあみだくじなんてやってやがるんだよ。呆れたぜ!」
「それで、どうなったんだ?」
「本堂。慌てるな。それで、クジの結果、師匠と呼ばれていたヤツが相手をすることになった。だが、その野郎、さっさと方を付けやがった。そこから、様子を見ていたがダンジョンからモンスターが出てくることは無かったな。それと、勝負の行方だが、スライムが一番多くを倒したらしい。あと、今回、死者が出なかったのは奴等のお陰だ。」
「スライムが一番だったのですか?」
「ああ、そうだ。俺もまさかと思ったよ!ははははは!」
その笑いに3人とも苦笑いを浮かべている。は
「鳳。もし、今言った奴等が居なかったらどうなっていたと思う?」
「そんなの言わなくても分かるだろ?まず、俺はここには居られなかった。というか、この世界にはな。後は、想像に任せるよ。」
すると、全員が押し黙る。今回の結果としては、最上の結果であったが、もし、俺達が居なかったらモンスターは街に飛び出していただろう。その結果、何人、いや、何十、何百人もの犠牲者を出していただろう。もしかしたら、千を軽く越えていたのかもしれない。
「後、被害らしい物と言えば、奴等がモンスターをぶっ飛ばして、建物に多少の被害が出たことだな。」
すると、御堂の方からピシッという音が聞こえてきた。
「だが、奴等、黒いゴブリンの魔石は支部を壊したって言って全部寄付しやがった。他の有用そうなドロップ品は奴等が回収していったけどな。」
それを、聞いて、御堂は復帰する。
「ですが、魔石がなければ彼等にはメリットは殆んど無いのではないですか?」
「いや、そうでもないらしい。どうやら、黒いゴブリンを倒すと経験値が旨かったそうだ。」
「そうか!今回は何とか無事に終わることが出来て良かった。」
「1つ俺からの意見というか奴からの助言なんだがいいか?」
「何だ?」
「まず3人に聞きたい。今回の様なことが起こるような可能性が有ると思うか?」
「可能性は大いに有ると思いますね。東京駅ダンジョンだけが特殊と言うなら分かりますが、他のダンジョンとの相違が見られない以上も有ると考えなければいけないでしょうね。それに、もう1つ懸念材料としては、今回はゴブリンでしたが次は違うモンスターが出てくるかもしれません。それが、弱いモンスターならいいですが、強いモンスターだと対処が出来なくなる可能性があります。」
「御堂長官の意見に意見に私も賛成ですね。それに、備えあれば憂いなしと言いますし。」
御堂も三枝も同じ意見のようである。
「それに、関しては私も同意する。」
どうやら本堂も同じ意見のようである。
「なら、話を進める。今現在、恐らく今回の現象が起こった際に対処出来るのは奴等だけだと思う。だが、現状、何百と有るダンジョンが同時に今回の現象が起こった場合、対処は難しいと考える。」
「それには同感だな。」
本堂の返答に御堂も三枝も頷く。
「そこで、今回の俺達の間違っていたところを言うと、銃等の武器に頼りすぎていたと思う。」
「分からんな。銃は充分に強力な武器だと思うぞ!」
本堂がそう言う。
「ああ。それは俺も認める。銃で生き物を打てば必ず傷を負う。若しくは死に至らしめることだって出来る。」
「そうだ。」
「だがな、今は違う。黒いゴブリン達には銃が一切効果無かった。その理由は何だと思う?」
「はっ、そうか。私たちは勘違いをしていたと言うことですね。」
御堂が急に顔を上げて話し出す。
「どういことだ?」
「つまり、ダンジョンでモンスターを倒すと経験値たまってレベルが上がるじゃないですか。それに伴って身体能力も向上していきます。さらに、スキルの書と言うものがあり、スキルを取得することが可能になりました。」
「そのくらいなら知っているが?」
「総理。答えは今、言った中にあるんですよ。」
「何っ?どう言うことだ?」
「はぁ~、成る程!身体能力が上昇すると言うことは、近接系の武器を使うことにより攻撃力が上昇してモンスターにより大きなダメージを与える事が出来ると言うことね。」
「そういうことです。」
「だが、銃の方が強いんじゃないなか?」
「本堂!そこが間違っているんだよ。」
「どういう意味だ?」
「つまり、銃は一定の攻撃力しか出せないと言うことだ。命中率は考慮に入れなくてもな。つまり、レベル1の奴が銃を使っても、レベル10の奴が使っても同じ攻撃力しか出せないんだよ。だが、近接系の武器を使うと、レベル1とレベル10が使うのでは全く攻撃力が変わってくるんだよ。それも、レベルが上がれば上がる程な。」
「そういうことか。だが、そんな武器はないぞ!」
そこで、御堂が何かを思い出したように言葉を放つ。
「いえ、無ければ作ればいいんですよ!」
「御堂、どういう意味だ?」
「最近、ダンジョンの中から金属のインゴットが見つかったと報告があったんですよ。その時は何とも思いませんでしたが、その金属で武器を作ればいいんですよ。」
「なっ、成る程。」
「それに、モンスターのドロップ品でも作れる可能性は有ると思いますね。それに、防具もそのドロップ品で作れると思いますよ。」
「話が盛り上がっているところ悪いがその辺の話しは後にしてくれるか?」
「うっうむ。そうだな。」
「それで、これから取り組まなければいけない問題が幾つかある。まず、第1に今回の騒動を解決出来る人材の確保、第2に武器と防具。それを作れる人員の確保。又は、民間企業に委託だな。そして、第3に生産系のスキルの書の確保。これらが、俺のというか奴等と話をして思ったことだ。今、俺が言ったことをどう判断するのかは政治家が決めることだ。ただ、1つだけ言っておくが、この問題は国が存続出来るかどうかの問題だと思う。」
「わかった。この問題は気合いを入れてやらせて貰おう。ところで、さっきの話に出てきた爺さんと言うのは誰だ。俺も知っている風な事を言っていたが?」
本堂は、ネクタイを締め直して緊張した面持ちで返答をする。それは、御堂も三枝も同じであった。
「その事か。……居るだろ?1人、武道が大好きな奴が!」
「まさか…………いや、そうなのか?」
本堂は頭の中で思い当たる人物を検索している。そして、1人の男の存在を思い出す。
「その、まさかで間違いないと思うぞ!」
「天上院玄羅か?」
「正解だ!」
「やはりそうか!……暫く会ってないが元気そうだったか?」
「元気もなにも、生き甲斐を感じているような感じだったぞ!まるで、水を得た魚のようだったぞ。」
「総理。天上院というと、あの天上院グループですか?」
「そうだ。だが、玄羅は現在は現役を引退して悠々自適な生活を送っているはずだが。」
「今は探索者をすることが悠々自適な生活みたいだぞ。」
「そうか!元気そうでなりよりだ。じゃあ、師匠と呼ばれていた奴も天上院グループの関係者か?」
「いや、本人はただの探索者の様だったぞ!」
「そうか。出来たら、その男にも一度会っておきたいな!」
「その方が良いと思うぞ。その時は玄羅も連れてこよう。」
「ああ。頼む。」
「報告は以上だ。俺はこれで下がらせて貰うぞ。」
「ああ、ゆっくり休んでくれ!」
「お疲れ様です。」
「お疲れ様でした。」
「ゆっくり休みたいが明日の朝までダンジョンが異常がないか観察する。万が一にもまたモンスターが出てこないとも限らないしな。」
「そうですか。では、お願いします。何かあれば直ぐに言ってきてください!出来ることは対応します。」
三枝は、そう言う。
「分かりました!では、失礼します。」
鳳は敬礼し部屋を後にする。
「それで、さっきの話は、どう思う?」
「そうですね。私は賛成ですね。この国には多数のダンジョンがあります。それにさっきの話が本当なら対応出来る者があまりにも少なすぎると思いますね。早急に育成する必要がありますね。」
と、三枝は、答える。
「私も基本的には賛成ですね。ただ、師匠と言われてた彼がどうやって強くなったのかは気になりますね。」
と、御堂が答える。
「それは、私も気になっていた。今度会った時にでも話を聞いてみたいな。ハハハハハ!」
本堂とどうやら賛成のようであり、俺はこの時背筋が凍る思いをするのである。
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