第95話自衛隊パーティーと探索者パーティ3そして、出会い前半
「ははは、マジで今日中に6階層ここまでに来ることが出来やがった!!」
乾いた笑いで楢崎さんが言う。
「ああ、夢みたいだ
日下さんも同意見のようだ。
「それで、神月さん。これから地上に戻るには少し無理があると思うんてすけど……。」
「宇佐美さん、大丈夫ですよ。奥の手がありますから!」
「奥の手……ですか?」
全員が俺の方を見る。
「じゃあ、皆さん、俺の周りに集まってもらっていいですか?」
全員が俺の周りに集まり出す。全員が集まり俺は直ぐに転移の指輪を発動させ、1階層の入口に転移をする。
「「「「「「「「「えっ???」」」」」」」」」
全員が辺りをキョロキョロを見回している。俺は、放っておいて入り口の方に歩みを進める。すると、宇佐美さんが、
「しししっ神月さん。ここはどこで、どうなっているんですか?」
「言わないとダメですか?」
「出来れば、言ってほしいです!」
「はぁ~、わかりました。まず、ここは1階層の入り口です。ここを登れば地上に出ます。そして、どうやってここに来たかと言うとこれです!」
俺は、指に嵌めている指輪を指差す。
「それは?」
「これは、転移の指輪といってダンジョン内の行ったことある階層に行くことが出来るアイテムです。ただし、使用できるのはダンジョン内のみに限られますけどね!」
「そんな超便利アイテムどうやって手に入れたんですか?」
「普通にダンジョンのボスだったかな?の宝箱の中にはいってたんですよ。攻略していってればその内手に入るんじゃないですか?」
「イヤイヤイヤ!そんなアイテムがあるなんて聞いたこと無いですよ。」
「宇佐美さん。そんなこと言われても、実際にドロップしたんだから仕方ないじゃないですか!それよりも行きますよ!」
俺は、強制的に話を打ち切って先に進む。ダンジョンを出て受け付けに行き、支部長を読んでもらうよう頼むと直ぐに飛んできた。
「それで、ダンジョン内はどうだったんですか?」
支部長の二階堂さんは俺の両肩を掴み前後に揺する。なので、俺の脳も前後に揺れて気持ち悪くなる。まぁ、気持ちは分からないでもない。ここは天下の東京しかも、様々な電車や新幹線が到着、発車する超大規模な駅である。そんな所のダンジョンが使えなくなるなんてあり得ないことなのである。
「特にこれと言った問題は無かったですよ!とりあえず、6階層まで見てきましたがモンスターは以前との同じくらいの強さで他に目だった所はありませんでした。」
「はぁ~~、そうか!それは良かった!」
思い切り息を吐いたあと俺の背中をバシバシと叩く。
「痛いですって!」
「ああ、そうか、すまなかったな。つい嬉しくてな。」
「まぁ、別にいいですけど……!」
「それよりも後ろの連中は何だか疲れてないか?」
「大丈夫ですよ。今日1日で6階層まで行くために道中は殆ど走っていたので疲れたんでしょう?」
「はっ?今、走ったと聞こえたんだが、ダンジョンの中をか?」
「勿論!他にどこを走るんですか?」
「いやっ、ダンジョンの中にはモンスターが居るだろ!走ってたらモンスターの格好の的じゃないのか?」
「その辺大丈夫ですよ。そのモンスター連中は哮天犬こいつに全部倒してもらいましたから!」
「わん!」
俺は、哮天犬を撫でてやる。
「そうか!では、報酬を渡そう。」
「そういえば、聞きそびれてましたけど報酬は何なんですか?」
「ああ、言って無かった。」
「聞いてないですね。」
「よく、報酬も聞かずに受ける気になったわね?」
「全くメリットが無いわけでは無いからな。それに、報酬を弾むって二階堂さん言ってたし!」
「あら、うれいしこと言ってくれるじゃない!」
「それで、報酬は?」
「一応考えていたのが現金で700万円よ。でも、まさか1日で終わらせるなんて思っても見なかった。だから、上乗せして1000万円に上乗せするわ!」
「良いんですか?そんなことして?」
「いいのいいの!何しろここは日本の首都のど真ん中よ。というこは、ここに来る探索者も沢山いるということ。そんなダンジョンを1日でも立ち入りを禁止すると飛んでもない額の赤字になるはずだけど、それを防ぐことが出来たお礼の意味もあるから受け取って。」
「そう言うことなら受け取ります。」
俺は受付にて報酬をもらうことにする。勿論、お金は探索者カードに入金してもらう。そして、俺は帰るために執事の藤堂さんに連絡を取る。藤堂さんには、どの出口を利用するのか聞かれたが、俺はお上りさんであり東京駅の構造も全く分かっていないので、その旨を伝えると、ダンジョン支部まで迎えに来てくれると言うのだ。流石にそこまでしてもらったら申し訳ないと伝えると、違う出口に行かれたりして合流できないと困ると言われたので大人しく待つことにする。
30分くらい待つと運転手さんが迎えに来てくれて無事に車に乗ることが出来た。
「神月さん。申し訳なんですが今から旦那様を迎えに行かないといけなのですがよろしいですか?」
「そんなの良いに決まってるじゃないですか!俺は言わばついでみたいなものですから本来の仕事を優先して下さい。」
「すみません。ありがとうございます。」
どうやら、朔夜の父親である天上院宗吾を迎えに行かなければならないようで、わざわざその事を伝えてくれたようである。俺のことは本来なら仕事の範囲外のはずである。なので、俺は宗吾さんを迎えに行くのを快く了承する。
車に揺られること3、40分。漸く、到着したのか運転手さんが降りて俺が座っている後部座席の反対側を開ける。すると、そこに宗吾さんが乗り込んできた。乗り込んできた宗吾さんは、一瞬大きく目を見開き、驚いた表情を見せる。
「神月さん。どうしてここに?」
「執事の藤堂さんに、ダンジョン探索が終わったら迎えを向かわせるから連絡するように言われてたんですよ。それで、本当ならもう少し早く帰って来るつもりだったんですけど、ちょっと思いの外時間がかかっちゃいまして今になったんですよ。そしたら、宗吾さんも、今、帰りだからたまたま一緒になったんですよ。それで、今の状況と言うことなんですよ。」
「そうなんですね。じゃあ、帰りに軽く一杯どうですか?」
「お酒ですか?飲めない訳じゃないんですけど、あんまり好き好んで飲もうとは思わないんですよね。……でも、ジュースでも良ければ付き合いますよ!宗吾さんクラスになると相当高いお店なんでしょうね?」
「そんなことはありませんよ。それに、今回は私が支払わさせて貰いますよ。」
「えっ?そんな、悪いですよ。ただでさえ、家にお世話になっているのに、それプラス奢ってもらうなんて悪いですよ。」
「いえいえ、神月さんには、娘を救ってくれた途轍もない恩があるんです。それに、今現在も進行形でお世話になっているですから父親としては当然です。」
「そうですか?じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。」
その後、宗吾さんが運転手さんに行先を告げ、その場所に到着する。そこはどうやら六本木のようである。何故、分かるかと言うと、標識に六本木の文字が刻まれていたからである。
「あの~、宗吾さん。俺、こんな格好でこんなところに居て良いんですかね?それに、コイツもいますし!」
「わんっ!」
そう、俺の今の格好は、下はジャージで、上は半袖のTシャツである。そんな格好で六本木にいるなんて場違いにも程があると思う。それに、哮天犬だ。哮天犬は見た目は普通の犬にしか見えない。
「大丈夫ですよ。私、大抵の店に顔が利くので格好位では文句は言わせませんよ。それに、哮天犬君は犬ではなくアイテムと言うことらしいから連れていっても問題はないよ!ハハハハハ……。」
それはそうだろう。何せ天下の天上院財閥の実質的なナンバー1である。そんな人に意見が出来る人はあまりいないだろう。まっ、今、俺は何の柵もないので宗吾さんであっても言いたいことは言うつもりである。そうして、俺達は宗吾さんに連れられてビルに入っていく。ビルに入る直前に、哮天犬が急に止まり進行方向とは逆の方を向き俺に付いて来いとひと吠えする。俺は訳が分からず
「宗吾さん。先に行っておいて下さい。後で行きますから!」
そう言うと、俺は哮天犬の後を追う。
「わかりました。ここの2階のベルっていう店に居ますので~!」
「了解です!必ず後で行きま~す!」
と、走りながら宗吾さんに答える。哮天犬はというと路地を入っていく。すると、そこには4、5歳の女の子が柄の悪そうな所謂チンピラ3人に絡まれていた。っと、言うか見た感じほぼ誘拐の現場じゃないかと思う。チンピラどもの手が女の子に迫るが、そこに哮天犬が割って入る。
「なっ、何だ?この犬は?」
チンピラどもはイラついたような声を上げる。それに、対し哮天犬も
「グルゥゥゥゥゥ!!」
と、低い声で威嚇をする。女の子は、目の前に飛び出してきた白い物を手で触っている。
「もしかして、ワンちゃん?」
「ワン!」
どうやら彼女は、視力があまり良くないのだと前職看護師の経験で分かる。そして、俺も到着し、
「それて、この状況は何なの?」
俺がそう言うとチンピラどもは少したじろぎ
「むっ、娘をどうしようが親の勝手だろうが?」
「この人達の誰かが君のお父さんなの?」
「違うの。お父さんとさもお母さんももういないの!」
「っと、言ってますが?」
「っち、おっお前ら今日の所は引くぞ!」
「「あっ、兄貴~!」」
何か典型的な捨て台詞を言って帰っていく。女の子は、哮天犬をモフモフして気持ち良さそうな顔をしている。
「お楽しみの所、悪いんだけど、君、名前は?……はっ、こういう時は、聞いた方から名乗るものだね。俺は、神月サイガ。よろしく。」
「わたしは、芽衣めいです。5歳です。」
「じゃあ、芽衣ちゃんと読んでいいかな?」
「うん!」
にこやかな笑顔で答える。
「じゃあ、芽衣ちゃんは何でこんなところに1人で居るのかな?」
「それは…………お姉ちゃんに会いにきたの。」
「お姉ちゃん?」
「うん!この辺のベルっていうお店ではたらいてるの!」
「じゃあ、お姉ちゃんとは随分と歳が離れてるんだね。」
「うん!」
「お父さんとお母さんはいないって言ってたけど、今はお姉ちゃんと2人で暮らしてるの?」
「そうだよ!」
「それで、お姉ちゃんに会いたくて今日はここまで来たんだ?」
「うん。でも、わたし、他の人よりも目がよく見えてないからここまで来るの大変だったの!」
「そりゃ、大変だったね。ちょうど俺もそのベルっていう店に行くところだから一緒に行かない?」
「本当なの?いくの!」
「よしっ、じゃあ、行こうか?」
「はい!ありがとう。おじちゃん!」
俺は、おじちゃんと言われたことに少し心が折れる。何せまだ、おじちゃんと呼ばれるには早い気がしていたからである。だが、この子とは30歳以上の年齢が離れているので、仕方ないと思うが、まぁ、それは、徐々に受け入れていくしかないかな。さくらちゃんは、片方の手で俺と手を繋ぎ、もう片方の手で哮天犬を撫でながら目的地へ向かうのである。
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