第94話 自衛隊パーティーと探索者パーティー2

「はっ、速いですよ!神月さんっ!」


かれこれ30分位走り続けただろうか。全員がそろそろ限界を迎えそうである。そんな中宇佐美さんが声をあげるので、俺と哮天犬は立ち止まる。俺達が立ち止まると皆が「ハァハァ」言いながら地面に座り込む。


「そんなに速かったですか?」


「ハァハァ、はっ速すぎですよ!ハァハァ。」


「そうですか。それで、宇佐美さん。この階層のボス部屋まであとどのくらいなんですか?」


「ハァハァ、そこの角を曲がった所にありますよ。」


「じゃあ、そこまで歩いて行きますよ!」


すると、全員からもう少し休ませろオーラが出ていた。が、敢えてその視線を無視して強行する。

そして、扉の前に辿り着く。


「じゃあ、今からボス戦をしますけど、やりたいパーティーはありますか?」


まず、答えたのが自衛隊員の楢崎さんである。


「俺達は無理だ。戦える体力がない!」


他の3人も同様である。なので、探索者の方を見る。


「おっ、俺達も無理だ。流石に戦えない。」


探索者、全員が頷いている。


「じゃあ、仕方ないですね。今回は俺達が引き受けますね。」


全員が同意をする。そして、俺は扉を開けて中に入る。モンスターが出現するが、モンスターは哮天犬があっという間に始末してしまう。


「もう終わっちゃったの?」


探索者の姉ヶ崎さんが呟いている。要は、戦闘が長引けば休憩も長くなる。だが、戦闘は速攻で終わってしまったのである。他の人達も顔色が悪い。因みに、宝箱の中にはポーションな1個とMPポーションが1個入っていたので、回収する。


「大丈夫ですよ。きちんと休憩は取りますから!」


すると、全員から安堵の声が聞こえる。


「じゃあ、休憩は5分ですからね。しっかり休んでくださいね。」


そう俺が言うと、全員の行動がピシッといったように固まってしまう。そして、全員の視線がゆっくりと俺に向かって来るのが分かる。


「えっ?少ないですか?」


すると、全員か首を縦にふる。


「わかりました。じゃあ、15分にしますね。それまで、ゆっくりしてくださいね。」


俺がそう言うと各々固まって休憩を始める。各言う俺も座って買っておいた飲料水を飲む。その後は、哮天犬をモフモフしながら時間を過ごす。そして、15分経ったので俺達が立ち上がると、またもや全員の視線が俺の方に向く。


「そんなに見られても困るんですけど、次の階層に行きますよ。」


俺がそう言うと皆渋々と立ち上がる。そして、2階層に到着する。俺は、哮天犬にある頼みごとをする。すると、哮天犬は、


「わん!」


と、一吠えすると2階層を駆けていった。


「おいおい!あの犬暴走を始めたぞ!」


少し嬉しそうに楢崎さんが言う。


「神月さん。良いんですか?」


宇佐美さんが、心配な顔をして俺に話しかけてくる。


「大丈夫ですよ。ある頼みごとをしたんで、それをやりに行ってるだけですから!」


「本当ですか?」


「そんなの苦し紛れの嘘に決まってるじゃないか?」


他の全員もそのように思っている顔をしている。


「アイツは暴走したんじゃありません。俺の頼みごとをしに行ってくれたんです。まぁ、信じられないのは分かりますが…………そろそろ帰ってくるので両パーティーは準備をしてもらってもいいですか?」


「準備って何の準備をしたらいいのかな?」


探索者の姉ヶ崎さんが質問してくる。


「勿論、戦闘準備ですよ!」


「「「「「「「「「…………えっ?」」」」」」」」」


「実は、アイツに頼んだ事と言うのはモンスターを釣って来ることなんですよ。その方が戦闘も1回で終わって早く次の階層に行けますから!」


そんなことを言っていると多くの足音が聞こえてくる。


「この足音は、まさか?」


宇佐美さんが、足音のする方をロボットが首を回すような感じで見ると、先頭に哮天犬が走って来ており、後ろに20数匹のゴブリンを連れている。それを見た瞬間、


「お前ら、戦闘準備だ!」


楢崎さんが声を出して指示を出す。


「こっちも戦闘準備だ!」


日下さんも声を出して指示を出す。


「じゃあ、頑張ってくださいね。」


「神月さんは参加しないんですか?」


宇佐美さんの疑問に答える。


「俺が参加したら意味ないですよね?」


「それもそうですね。」


宇佐美さんは納得してくれる。


「仕方ない。やるしかない…………おいっ、探索者!半々でいいよな?」


楢崎さんが探索者の人達に声をかける。


「いい、と言いたいが、少し厳しいかもな。」


日下さんがそう返答する。


「そうか!わかった。じゃあ、こうしよう。とりあえず、モンスターは半々で振り分ける。そして、俺達の受け持ちを殲滅したら直ぐにそちらの救援に向かう。これで、どうだ?」


「了解だ。あと、各々のパーティーの戦闘にならないように少し距離を取って戦うのはどうだ?」


「賛成だ。お前らもいいな?」


「任せろ!」「了解!」「わかったわ!」と3人も了承する。


「あっ、1ついい忘れましたけどヤバそうなら俺達が介入しますので安心して戦って下さいね!」


俺がそう言うと全員の視線が俺に注がれる。全員口には出さないが、この状況にしたヤツが言うな!と言っているのは良く分かる。俗に言う、目は口ほど物を言うというやつである。まぁ、俺もあっちの立場だと同じように考えていたであろう。

そんなことを思っているとモンスターの集団は目の前に迫っていた。


結果としては、自衛隊パーティーは、危なげなくモンスターを倒しており、倒し終えると少しだけ苦戦していた探索者パーティーの助っ人をして倒し終える。


「「「「「「「「ハァハァハァハァ……。」」」」」」」」


全員息が上がっている。


「お疲れさまでした。では、ドロップ品を拾ったら2階層のボス部屋まで走りますよ!」


「ちょっ、ちょっと待て!俺等は今戦闘が終わって息が上がってるんだ!それなのに走れるわけ無いだろ!!」


と、楢崎さんの言葉に周りからはその言葉に同意をするような雰囲気が出ていた。


「わかりました。では、歩きましょう!それで、体力が回復したら走りましょうね!」


「走るのが前提なんですか?というか、何でそんなに先を急いでいるんですか?」


姉ヶ崎さんには、俺が急いでいるように感じたようである。だが、その考えは的を射ている。何しろ、俺は今日の夕方までに5階層を踏破しようと考えていたからである。6階層まで辿り着いたとしても帰る時間が必要と普通は考えるかも知れないが俺には転移の指輪があるので、帰りは一瞬である。その事はここにいる面々には一言も言ってないので疑問に思うのは仕方の無いことだと思うが敢えてここでばらすことはしない。何故ならこれも俺の秘密の1つだからだ。というか、言っても信じてはもらえないだろうと思う。


「えっ?それは、今日中に帰るためですよ。」


「神月さん。それは無理ですよ。その為に、皆、色々と準備をしているんですから。」


宇佐美さんが言うように、皆、それぞれ結構な荷物を持っている。


「ああ、だから、皆さんそんなに大荷物を背負って来てるんですね。俺なんて今日帰るために持ってきたものはペットボトルの飲料水2本と駅の中で買った昼食用のお弁当だけですよ!因みに、今回の探索には何日かけるつもりだったんですか?」


「はっ、道理で荷物が少ないと思ったぜ!一応言っておくが、俺達自衛隊は、3日ないし4日と考えている。だが、念のため食料は5日分用意している。」


楢崎さんがそう答えてくれる。すると、今度は日下さんが、


「自分達、探索者の方は自衛隊さんよりも少し多めに見積もって、4日か5日必要かと考えてます。」


「だ、そうですよ。」


「それは、貴方たちの目線であって俺には当てはまりませんよ。じゃあ、行きますよ。それと、荷物は最低限にした方がいいですよ。」


「っと言うことは最低限の荷物以外はどうしたら良いんですか?」


宇佐美さんが質問してくる。


「簡単ですよ!置いていけばいいんですよ!帰りにでも回収すれば問題無いでしょ?」


「馬鹿なことを言うな!そもそも俺達はあんたをそこまで信用している訳じゃない。」


楢崎さんの発言に他の自衛隊員も頷く。


「まぁ、普通はそうですよね。それは、探索者の皆さんも同じですか?」


「基本的にはそうですね。」


日下さんがそう答える。


「じゃあ、荷物は持っていくと?」


「はい。そうなりますね。」


「わかりました。じゃあ、2パーティーとも遅れずについてきてくださいね。」


俺がそう言うと少しだけ空気が重くなるがそんなことは無視して先に進もうと思っていると、楢崎さんが


「ちょっと待ってくれ!」


その言葉に全員の視線が楢崎さんに向く。


「そこの犬はある程度の戦闘力があるが、そもそもあんたは強いのか?」


「はい!私もそれが気になってました!」


探索者の森本さんも手を上げている。そもそも、この2パーティーは昨日のスタンピードの現場には居なかったのてある。なので、俺達の実力は知らないのである。他の皆も同じような目線で見ている。この中で唯一俺の実力を知っているのは宇佐美さんのみである。


「皆さんも同じ意見ですか?」


宇佐美さん以外が頷く。


「そうですか。じゃあ、俺の実力を見せましょうか!哮天犬、また頼むな!」


「わん!」


哮天犬は駆けていく。


「じゃあ、皆さんもさっきの戦闘で疲れているみたいですのでゆっくり歩きなから進みましょうか!」


「あのワンちゃんは、まさか?」


「そのまさかですよ日向さん。さっきみたいにモンスターを釣りに行ってくれたんですよ!」


「なるほど!」


「じゃあ、行きますよ!」


それから歩いて2階層を探索を始める。歩くこと10分経つが哮天犬はまだ戻ってこない。


「おい、あの犬帰ってこないぞ!」


「そういえばそうですね。私たちの時はもう少し早かったはずですけど……。」


楢崎さんと日向さんがそんなことを言っていると。確かにさっよりも明らかに遅い。


「まさか、あの犬、飼い主が嫌で逃げたしたとかじゃないだろうな?」


「亮介そんなこと言わない方がいいよ。飼い主が気にするでしょ?」


「大丈夫ですよ。そのうち帰ってきますよ。」


と、話していると、さっきよりも大きなしかもより多くの足音が聞こえてくる。その先頭を哮天犬が走ってくる。


「おいっ、あの犬なに考えてるんだ?あんなの捌ききれるわけないだろ?」


「逃げましょう!」


と、全員は焦っている。


「大丈夫ですよ。」


宇佐美さん以外は懐疑的な目線を向ける。哮天犬は、俺の元に帰って来る。俺は今日は武器を持ってきていない。アイテムボックスにはあるがここで出すのは俺がそう言うスキルを持っていると勘違いされるのでしたくはない。そうなると、モンスターを倒す選択肢は限られてくる。殴ったりしてゴブリンの体に触れたくは無いので、ここは魔法を使って倒すことにする。俺は、目の前に自分くらいの火の玉を作り出す。それを、今向かっているゴブリンに向け放つ。因みにゴブリンはざっと30から40匹位いる。そして、ゴブリン達に火の玉が接近した所で炎を玉を小さく分裂させて殲滅をする。


「やっぱり、こういう時は質よりも量でしょ!」


「わん!」


哮天犬だけが肯定してくれ尻尾を振っている。


「そういえば、お前も良くやったな。」


俺は哮天犬をモフモフしてやると哮天犬も嬉しそうにしている。周りを見ると皆、目を見開いて固まっている。いち早く復帰したのは宇佐美さんである。


「しっ、神月さん。魔法も使えたんですね。」


「ええ、まぁ、使えないとは言ってませんし、手の内はあんまり曝したくないものでしょ?」


「たっ、確かに!」


「はぁーい、皆さん。そろそろ復帰してくだい。行きますよ!」


そこからは、簡単であった。俺の実力を知った皆は指示に従ってくれた。ただ、荷物だけは持っていくと言うので好きにさせた。それから、2階層のボスも皆疲れて相手が相手が出来なかったので、哮天犬に任せた。あとは、3階層の真ん中辺りの開けた場所で昼休憩を取った位で、やることは変わらなく新しい階層に行くと2パーティーにモンスターとの戦闘を行ってもらい、以前との比較をしてもらう。そして、ボス部屋まで走る。ボス部屋に到着する頃には2パーティーともへばっているからボスは俺、もとい哮天犬が始末をする。そして、少し休憩を取って次の階層に行く。という、行為を繰り返す。そうして、午後6時には6階層に到着する事がて来ていた。

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