第91話 暴走10
待つこと10数分、宇佐南さんが俺達の前にやってくる。
「お待たせしました。終わりましたよ。では、鑑定結果をお伝えしますね。順位的には下位からウルさん、スノウさん、哮天犬さん、神月さん、グラムさんですね。」
「やったーなの!1位なの!!」
「グラムに負けたか。やっぱり手数の差だよな。」
「わんわん!!」
「4位だぞ。次はもっと頑張るぞ!」
「最下位なのです。悔しいのです!」
俺を含めてそれぞれ思うところがあるようである。
「では、次にブラックゴブリンの魔石が合計680個、ブラックゴブリンの皮が610枚ですね。」
「へぇ~!結構あったんだな。」
「そうですね。」
「そうだ。グラム、まだあれだしてないだろ?」
「あれなの?」
「1番最後のやつのドロップ品だよ。」
「あっ、そうなの!わすれてたの!」
そう言うとグラムの分裂体は、ブラックゴブリンキングのドロップ品を取り出す。まず、魔石だが普通のブラックゴブリンの魔石の3倍はデカイ。これには、二階堂さんや鳳さん、長谷部さん、その他の全員が固まった。次に、ブラックゴブリンキングが使っていた剣である。そして、スキルの書が1つである。
「えっ~と、宇佐南さーん!鑑定してもらっていいですか?」
「はっ、わっわかりました。」
俺の声かけに宇佐美さんは正気に戻ると、続々と他の皆も正気に戻っていく。まず、宇佐南さんは魔石の鑑定を行う。
「すみません。ちょっと支部長と相談してきます。」
そう言い、支部長の二階堂さんと話を始める。5分程度話をして宇佐南さんは戻ってくる。
「どうでした?」
「はい。この魔石は100万円で引き取らせていただきます。」
「えっ?そんなにいいんですか?」
「はい。支部長と相談して許可を貰いました。」
「そうですか。」
「では、次にいきますね。」
と、宇佐南さんが剣を手にすると、剣は、大きさを宇佐美さんに丁度いい大きさに変化する。
ブラックゴブリンキングの剣
スキル サイズ補正 ゴブリンソウル
ゴブリンソウル
ゴブリン種を倒すことにより攻撃力が上昇していく。
「っと言う内容になってますね。………どうされますか?」
「そうですね。それは、こちらで引き取ろうと思います。」
サイズ補正だけなら買取りに出してもいいかなと思うが、問題はゴブリンソウルの方だ。性能が少しだけヤバめだから引き取ろうと思う。
「そうですか。わかりました。………それと、言い忘れてましたがスキルの書ですが神月さん以外にもグラムさんが2個とスノウさんが1個ありましたよ。」
「ウルのはなかったのです?」
「………はい。残念ながら!」
「………そっ、そんななのです!?」
ウルは地面に手をついてショックを受けているようである。まぁ、とりあえずはほっとくとして、
「宇佐南さん。内容をお聞きしてもいいですか?」
そう、俺はまだ、自分で鑑定してないから中身が何なのかよく分かっていない。
「はい。わかりました。まずは、スノウさんのですが、影移動でした。そして、グラムさんは、結界と巨大化ですね。最後に神月さんは、空間魔法でした。」
影移動
影の中を移動することが出来る。
結界
結界を作り出すことができる。
空間魔法
空間魔法を使えるようになる。
「影移動、面白そうだぞ!」
「結界は、何か微妙だけど取っておくの!それと、巨大化はもうあるから要らないの!」
それを聞いてウルはグラムの方を見つめる。それに、気がついたグラムは、
「………仕方ないの!巨大化はウルにあげるの!」
「ありがとうなのです!流石、太っ腹なのです!」
と、ウルはとても嬉しそうにしていた。
「よかったなウル。」
「なのです!」
「じゃあ、俺も、空間魔法は取得する方向で!」
全員がスキルの書を使うようであり、早速使用する。すると、宇佐南さんが、
「では、今回の買取りはブラックゴブリンキングの魔石が1つで100万円ですね。ブラックゴブリンの皮については先程の皆さんと同様に後日お支払する予定です。」
「わかりました。」
俺は、自分の探索者証を渡し、入金して貰う。探索者証変換時に、素材の預り証を貰い受ける。
「よしっ、これで終わったから帰るか!」
俺は、帰るとは言うがこれからどうしようかと考えていた。が、
「あのっ、ちょっと待ってください!」
と、二階堂さんに引き留められる。
「何ですか?」
「実は、神月さんにお願いしたいことがあるんですけど。」
「何ですか?」
「実はダンジョンの事なんてす。今晩は、自衛隊の皆さんがダンジョンが異常はないか監視してくださるんてすけどいつまでも甘えるわけにはいなかいんです。それで、もし今晩何もなければ明日ダンジョンの安全確認を行いたいと思ってるんてすが、万が一今日のようなモンスターが出現していれば全滅は必死です。なので、ダンジョンの安全確認をして貰えませんか?もちろん、こちらからの依頼と言うことで報酬は弾まさせて頂きます。」
「仕方ないですね。俺達にしかできなさそうですし。」
「ありがとうございます。つきましては、ダンジョン支部の方から何人か確認作業に動向させて欲しいのです。」
「ちょっと待ってもらっていいか?そういうことなら自衛隊員も何名か動向させてもらいたい。」
と、鳳からも同じ様な事を言われる。
「はぁ~!………わかりました。それで、何階層まで行けばいいですか?」
「そうですね。出来たら5階層までお願いします。」
「わかりました。鳳さんの方もそれでいいですか?」
「ああ。」
「わかりました。では明日同行する人達には充分休息を取らせといてくださいね。足手まといになられても困りますからね。」
「承知した。」
「じゃあ、明日の9時でいいかな?」
「私の方はそれでいいですよ。」
「ああ、こちらもそれで構わない。」
「わかりました。」
これで、ここでの今日の用事は済んだようである。すると、玄羅が、
「神月!こらからどうするんだ?」
「今から家に帰るのは無理だろうし、明日またここに来ないといけないから今日は東京こっちに泊まることになるだろうからまずはどっかのホテルでも探さないとな。それが終わったら美味い物でも食べに行くさ。東京だから美味いものは沢山あるだろう。」
「そうか。では、宿は家に来ればいい。部屋は余ってるからな。」
「家??」
「何をビックリしている。こっちにも家はあるぞ。」
「そういえば、じいさんは大会社の元社長だったな。」
つい、忘れていた。天上院グループといえば、世界でも有数の超有名企業であるのをすっかり忘れていた。今は息子に代替わりして、自分はグループの顧問に落ち着いてはいるが、元は大企業の社長さんである。そりゃあ、家の一軒や二軒持っていても不思議ではない。ただ、俺の中ではこのじいさんは、只の戦闘狂のじいさんである。
「なんじゃ。儂が大会社の元社長じゃと言うことを忘れていたおったろう?」
「そんなことはないぞ。きちんと覚えていたぞ。そんなことよりも早く行こうぜ。」
どうやら今晩の宿や夕食の場所を探す必要がなくなったし、じいさんの所なら美味いものもの出てくるだろうから一石二鳥だな。俺がじいさんに早く行こうと促していると朔夜が俺のところに来て。
「すみません。少し時間をもらっていいですか?」
「ああ、いいけどどうした?」
「ここに来る前に別れた友達が心配していると思うので無事であることを伝えたいんですよ。」
「そうなのか。友達が心配しているといけないから速く教えてあげるといい。」
「わかりました。では、早速かけてきます。」
そう言い朔夜は遙を引き連れて行く。俺と玄羅は少しだけ待つことにする。
時を同じくして、朔夜と遙が心配で、1人で居ることが出来ないでいる一条愛理と美堂霞はファミレスで時間を潰していた。事が済めば朔夜と遙から連絡が来る筈と携帯電話をてテーブルの上に置き今か今かと待ち焦がれている。だが、連絡はなかなか来ることはなくそろそろ夜の9時を過ぎようとしていた。一条愛理と美堂霞もお嬢様である。なので、家に帰るのがそんなに遅くなるわけにはいかなかった。だから、予め9時には帰宅をする予定であり、その時間が迫っているので2人はソワソワしていた。
「霞ちゃん、どうしようか?」
「うーん、どうしようか?」
「私、帰って1人でいる自信ないよ。」
「そうだな。」
霞がこのまま帰ることに難色を示していると
ブルブルブルと携帯電話が振動する。一応ファミレス内だから携帯電話をマナーモードに設定していた。愛理は、携帯電話を手に取り着信の相手を見るとそこには朔夜の名前が表示されていた。
「朔夜ちゃんからだよ。」
愛理は、携帯電話の朔夜の名前が表示されているのを霞に確認するように見せる。
「いいから早く出ろ!」
霞が愛理に電話に出るように促し、愛理は電話に出る。一応、霞にも聞こえるようにスピーカー状態にして話し始める。
「うん!………もしもし。」
『もしもし、愛理ですか?』
「うん!そうだよ。無事なの?」
『はい。無事に終わりました。私も遙も無事ですよ。そこには霞もいるんですか?』
「うん、いるよ。」
「心配したんだぞ!怪我もないのか?」
『大丈夫です。怪我もなくむしろ行く前よりも状態はいいですね!』
「「?????」」
愛理と霞は、朔夜が言っていることが今一理解できなかったが、とりあえずは怪我もなく無事ですあったことを喜ぶのである。
『それで、2人はまだ一緒にいるんですね!』
「そうだよ。あのまま家に帰っちゃったら、1人になって不安で押し潰されそうになっちゃうよ。だから、霞ちゃんにお願いして一緒に居てもらったの。だけど、そろそろ帰らないと家族が心配するだろうからどうするのか話していた所に、丁度、朔夜から電話があったってわけ。」
『そうなんですね。』
「安心したから今日はもう帰るね。」
『そうですか。わかりました。』
「じゃあ、明日、学校でね。」
「絶対に来いよ!」
『わかりました。では!』
明日、学校にて会うことを約束してから電話を切る。
「よかったね、霞ちゃん。2人とも無事で!」
「そうだな。じゃあ、安心したところで私たちも帰ろうか?」
「そうだね。家族も心配してるだろうから早く帰ろ。」
愛理と霞は、この後すぐにファミレスを出て帰路につく。
一方の電話が終わった朔夜と遙は、
「遙は、2人と話さなくてもよかったの?」
そう、朔夜が携帯電話をスピーカー状態にして電話しており、遙も愛理と霞の話を聞いていたが一言も発しなかったのである。
「だって、朔夜が全部話していたから私が話す必要性をかんじなかったっす。それに、明日、私たちの元気な姿を見背てあげる方がいいって思ったっす。」
「そう言われればそかもしれないわね。」
「じゃあ、早く師匠のところに戻るっす!師匠達、夕食を何も食べてないって言ってたっすからお腹すかせて待ってるっす。」
「そうね。じゃあ早く戻りましょう。」
「了解っす!」
朔夜と遙が、電話を終えて戻ってきた。ここに来ることを知っている友達に、無事に終わったことを説明し、安心させたようである。その後、俺達は、じいさんの車に乗せられてじいさんの家に招待された。途中に遙は自分の家に送り届けた。じいさんの家は、東京の高級住宅地である成城である。因みに、遙の家もこの近所にあるらしい。
「へぇ~!いいところだな。」
俺は、何も考えずに独り言を言う。それを聞いていた玄羅が、
「何だ。知らんのか?ここは、高級住宅街と言われている場所だぞ!」
「悪かったな。田舎者で!今まで、東京に行くなんて考えたこともなかったんだよ。」
「すまんすまん。悪気があっていったわけではない。」
「いや、わかってるからいいさ………。」
そんな話をしていると目の前に大きな門が見えてきた。車が門の前に来ると扉は自動的に左右に開き、そのまま車は門の中に入っていく。門の中は、ものすごく広く超でかい平屋の日本家屋が目に入ってくる。
「想像はしてたけど、やっぱりバカでかいな………。」
「誉めても何も出んぞ!」
「誉めてない。」
「お爺様。そんな冗談言ってないで、もう、着きますよ。」
「おお、そうじゃな。」
それからすぐに玄関先で車が止まったのである。
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