第61話 パワーレベリングと苦情

さて、そんなわけで俺達は今はダンジョンの7階層にいる。グラム達の自己紹介も終わったことだしこれから探索を始めようと思う。彼女達に戦わせる気はないが攻撃を加えないと経験値を獲得できない。だからといって初めからよく切れる武器を渡すのはどうかと思うので今回は殴打系の武器にしようと思う。殴打系の代表格としてはハンマーが直ぐに思い浮かぶが、使うのはなんたって女の子だ。なので、メイスにすることにする。鍛冶スキルを使い速攻でメイスを2つ製作し2人に渡す。


「今日はこの武器を使ってくれ。」


「分かったっす。」


「わかりました。」


「じゃあ、行こうかな!」


「ご主人、ちょっと待つの!」


「どうした?何かあったのか?グラム!」


「まだ、戦う順番を決めてないの!」


「ああっ、そうだったな!じゃあ、順番はどうする?」


「じゃあ、グラムが「ウルが1番なのです」」


グラムが1番を主張しようとしたらウルが割り込んでくる。


「俺は3番目でも良いぞ!」


グラムは少しだけイラッとしたようだがいつも最初にやっていたので今日はウルに最初にやってもらうことになった。順番は、ウル→グラム→スノウ→哮天犬→俺の順番となった。


「但し、目的は彼女達のレベルアップだから戦いの最中に相手の動きを止めて攻撃の隙を作ってやること。」


「分かったの!」


「了解だぞ!」


「分かったのです!」


「わんわんっ!」


「朔夜と遙は、俺達がモンスターの動きを止めたら攻撃を加えて直ぐに離脱すること。いいか?」


「わかりました。」


「分かったっす。」


「じゃあ、行こうか!」


俺達はダンジョンを進んでいくと直ぐにモンスターに出会う。出てきたのはサンドリザードマンが2匹同時に出てきた。まずは、ウルが飛び出していく。恐らくウル1人ならアッサリ倒して終わりなんだろうが、今回は彼女達がいるのでどう戦う気なんだろう。


「じゃあ、まずは、ウルが行くのです!」


「おうっ!頑張ってな。でも、動きを止めるの忘れるなよ!」


「了解なのです!」


ウルはサンドリザードマンに向かって走っていく。それを見て、


「あのー師匠。ウルさんって強いんすか?」


「この階層の敵なら楽勝だと思うぞ!」


「そうなんすか!」


ウルは、サンドリザードマンの所に行くとゴーレムを作り出しサンドリザードマンを倒さないように組み伏せる。


「取りあえずこれで良いのです?」


「見事な手際だったぞ!」


「ありがとうなのです!」


「さて、2人とも両方に一撃ずつ攻撃してきな!」


俺が2人に話しかけるも2人とも反応がない。呆然として動けないでいるので肩を叩いて正気に戻す。


「「はっ!」」


「2人とも行ってこい!」


「わかりました。」


「了解っす!」


2人ともサンドリザードマンそれぞれに攻撃を加えて戻ってくる。


「もういいのです?」


「おう!ウル。お疲れ、もういいぞ!」


「分かったのです!」


ウルは、サンドリザードマンの頭部を殴り一気に決着をつける。


「ドロップしたものはどうするのです?」


「魔石だけでいいぞ!」


「分かったのです!」


「魔石だけでいいんですか?」


「いいんだよ!今日は他に目的があるから、それを入れないといけないから目的の物が入らなくなるから今日は回収しないんだよ。なんなら君達にあげるよ!」


「えっいいんすか?」


「そんな悪いですよ!」


「いいのいいの!どうせ放置する予定なんだから有効利用してくれる方が俺も嬉しいし!」


「わかりました。では、私達が持ってきたバックに入るだけ頂きます。」


「ありがとうっす!師匠!」


ドロップ品を回収すると、次のモンスターを探しに行く。次はグラムの番である。


「よーし!次はグラムなの!」


「ほどほどにな!」


「師匠、疑う訳じゃないっすけど、グラムさんも強いんですか?」


「多分、家じゃあ1番強いんじゃないか?」


「マジっすか?」


「マジ!」


遙は驚き、朔夜も声が出ないくらい驚いている。


そして、グラムのの出番が回ってきた。


「よしっ!行くの!」


「頑張れよ!」


「あんまり頑張るとグラムの場合瞬殺しちゃうぞ!」


「ほど程なのです!」


グラムの戦闘は正直あっという間だった。グラムは、サンドリザードマンを巨大化して押し潰している。確かに動きは止まっているが、2人とも顎が外れるくらい驚愕している。まぁ、現実に引き戻しウルの時と同じ様にする。


さて、次はスノウだ。スノウの戦闘はサンドリザードマンの後ろに回り飛び付き地面に叩きつけて動きを止めていた。その次の哮天犬は、スノウのを参考にして同じ様にしてサンドリザードマンの動きを止めていた。最後は俺だが俺は至ってシンプル。サンドリザードマンに雷撃を使い、麻痺させてから2人に攻撃を加えさせてから、後は普通に木刀で仕留める。すると、俺の戦い方を見ていた従魔達から不穏な空気を感じる。


「どうした?お前ら?」


「「???」」


朔夜と遙はよくわかっていなかった。


「何か馬鹿らしいの!」


「そうだぞ!」


「確かになの!」


「どういう意味だ?」


「ご主人の魔法があれば簡単にモンスターを足止めできるの。グラム達が苦労して足止めをする必要はないと思うの!」


ギクッ!確かに、さっきの戦いを見たら皆手加減して敵を殺さないように足止めをしていたが、俺の場合、雷系の魔法を使えば相手を麻痺させることが出来るから足止めには持って来いだと認識させられた。


「確かに、グラムのいう通りだな。それで?」


「この階層を自由に探索したいの!」


「賛成だぞ!」


「ウルもそっちの方がいいのです!」


「はぁ~!仕方ない。じゃあ、集合時間は今日の夕方で、場所はこの階層のボスの前でいいか?」


「いいの!」


「わかったぞ!」


「やったーなのです!」


そういうと3人は行ってしまい残ったのは俺と哮天犬、朔夜と遙になってしまった。


「あのっ、どういうことでしょう?」


「アイツら、足止めするには俺の魔法があれば十分で、手加減して足止めするのは面等だから別行動したいってことみたい。」


「えっ!それを、許したんすか?」


「まあね、戦いでストレスが貯まるのは良くないからね。」


そういうわけで4人で探索を開始する。出てくるモンスターは、俺が雷撃で麻痺させて、俺もその後の攻撃が面倒になってきたので止めは哮天犬に任せることにする。


「本当にこれでいいんすか?」


「いいんじゃないか!今回の目的は2人のレベルアップだし!」


「そう言われればそうなんですけど!」


「じゃあ、いいじゃん!」


そう言い探索を開始し、昼前に漸く目的の物を発見する。そう、トマトだ。


「おっ、やっと見つけた!」


「何をですか?」


「トマト!」


「「はい???」」


「だから、トマト!」


「トマトって赤い野菜のですか?」


「他にないでしょ?」


「いやいや、ダンジョンの中にあるわけないっすよ!」


「じゃあ、あれは何?」


俺は、トマトの方を指差すと2人は驚愕する。


「あっ、あれって!」


「トマトっね!」


「よしっ、じゃあ、収穫しようか。」


「わん!」


哮天犬からの返答は返ってくるが2人からの返答は返ってこない。まあ、いいかと思い俺はリュックから園芸用のハサミを取り出しトマトを回収する。回収したトマトを2人に投げてやる。


「2人ともここまで疲れただろうから、それでも食べて待ってな!」


「えっーと、これって食べられるんですか?」


「そりゃ、トマトだから食べられるぞ!」


「ほんとっすか?」


「嘘はいわないから食べてみな!」


2人が顔を見合わせて、本当に大丈夫?という顔をしている。俺ってそんなに信用がないのかな、と思ってしまう。そう思っていると2人は意を決して


「「いただきます!」」


トマトにかじりついた。


「あっ、美味しい!」


「うまいっす!」


2人は、一気に持っていたトマトを食べ尽くした。その間に俺もトマトの収穫を終える。


「とても美味しかったです!」


「師匠、うまかったっす!」


「それは、良かったな。」


「でも、何でダンジョンにトマトなんてあったんでしょう?」


「さぁな?それは、ダンジョンに聞くしかないんじゃないか?」


「そうですね。」


「じゃあ、先を急ごうか?」


「はい!」


「了解っす!」


その後は2、3度戦闘を行い昼休憩にする。


「さて、休憩にするか?」


「やっとっすか!疲れたっす!」


「確かにきついですね!」


2人は少し疲れた様子である。このままダンジョンのフィールドで休ませても緊張感が続いて休んでも休んだ気にはならないと思ったので取って置きを出すことにする。


「2人に今からやることも絶対に秘密で頼むな!」


「まだ、あるんですか?」


「もう、ビックリしないっす!」


「約束できるな!」


「はい。」


「守るっす!」


俺はアイテムボックスから魔法のテントを取り出す。すると、またしても2人は驚愕の顔をしている。


「何もないところからテントが出てきたようにみえたんだけど………。」


「私もそう見えたっす。」


「あっ、もしかしてあれが有名なアイテムボックスですか?」


「正解!」


「師匠、すごいっす!」


「まぁ、取りあえず中に入ろうか?」


「えっ、この中に皆入るんですか?」


「そうだけど?」


「師匠、このテントに皆入ったらぎゅうぎゅうで余計にしんどいっすよ!」


「まぁ、中に入ってみればわかる!」


「「?????」」


2人の背中を押しテントの中に入る。すると、2人は入ったところで立ち止まった。俺はそんな2人を無視して


「今から昼飯作るから適当に座って待っててくれるか?」


2人からの返事はないが俺は昼飯の準備を始める。


「朔夜、なんすかこれ?」


「さぁ??」


「見た目は普通のテントなのに中がなんでこんなに広いんすか?」


「わからないわ!」


「もしかして、私達、とんでもない人の弟子になっちゃったっすか?」


「うん。多分それは、間違いないと思う。」


2人はそんなことを言いつつソファに座る。

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