第60話 天上院朔夜

私の名前は天上院朔夜。私は読書が好きで最近のお気に入りはファンタジー系の小説である。特に魔法を使ったりスキルを使ったりするのは読んでいて憧れる。そんな中、世界に突然、地震が起こった。


地震後に各地で変な穴が沢山見つかり、その中を動画で撮影し、インターネットで流されていた。初め、皆の評価は嘘、作り物って意見が多かったが、全世界で投稿者が同じ様な動画をドンドンとアップしていた。私も、最初は見た時は、信じられなったが、徐々に有るんじゃないかと信じるようになった。そして、地震から数日後、国から重要な発表があった。それは、国が初めてダンジョンと認めた。国は、地震発生直後から、奇妙な穴のことを確認しており、自衛隊を派遣して色々と調べたようである。その結果、これは、小説に出てくるダンジョン以外にはあり得ないと判断したようである。そして、国は国民に地震後に出来た穴が出来ていたら国に報告するよう声掛けをした。もし、それが、ダンジョンだった場合は国がそれ相応のお金を用意してくれるらしい。それに、ダンジョンを一般に開放すると言うではないか。開放は、3ヶ月後の4月1日。それまでに、試験を実施し、それに合格した者だけがダンジョンに入れるという。しかも、16才以上なら犯罪歴がなければ試験の申請を出来るらしいので、私は舞い上がった。でも、流石に1人で行くには少しだけ怖かったので、親友である遙を誘うことにした。すると、遙もダンジョンには興味が有ったようですぐに二つ返事を貰えた。


2月になり、厚生労働省のサイトにダンジョンの探索者試験についての概要がアップされた。私は、受験資格の所に目をやる。取りあえずは最初言っていた通り、16才以上で犯罪歴がなく、暴力団関係でなければ受験出来るらしい。だが、その下に18才未満の方へという項目を見つけたのでクリックする。すると、18才未満の人は親の同意が必要だということである。そこには、一緒に同意書もアップされており、そのままプリンターでコピー出来るようになっていた。私は直ぐに両親の下に行き話をするが両親は娘にそんな危ないことはさせたくないと断固反対をされた。それは、遙の所も同じようであり、私達は、両親の同意を得るのに相当苦労はしたがなんとか無事に同意書を得ることが出来た。そこからは毎日が楽しみで仕方なく、毎日指折り数えて待っていた。


ダンジョン試験は私達は広島で受けたがなんともアッサリしたものだった。合格発表までは大丈夫だと思っても、もし、不合格だったらと思うと不安が過る。合格発表当日は生きた心地がしなかったが、なんとか無事に合格をすることが出来た。勿論、遙も一緒に合格することが出来た。合格から4月までは凄く長く感じてしまった。国からのダンジョンの発表され、探索者試験を受け、合格発表までの時間よりも圧倒的に長く感じてしまった。


そして、待ちに待った4月1日になったが、この日はどうしても外せない用事が出来てしまったので、ダンジョンに行くことが出来なかった。これにはとても堪えたが、4月2日になると漸くダンジョンに行くことが出来る。テンションはMAXであった。だが、いざダンジョン支部に着き、ダンジョンに入ろうとした時、私達2人で本当に大丈夫なのかという思いになった。それは、遙も同じ気持ちだったようだ。そんな時に、男の人達が私達に話をしてきた。要は、女2人では危ないから俺達と一緒に探索をしようという話だった。少しだけあやしかったが、この提案は私達には渡りに船だった。最初は、私達のサポートをしつつモンスターを倒していってたけど途中からドンドンと人気の少ない方向に進んでいるのがなんとなく分かった。不安になりながらも付いていくと、私達は突然男達に襲われる。悲鳴を上げるも人気のない方向に進んできたので人の気配はしない。ましてや、助けようとしても相手は5人も居るのだ。それ相応の人数が居ないと話にならない。よっぽど腕に覚えのある人なら別だが……………。私達が男達に犯されそうになった時、


パンパン


と手を叩く音が聞こえてくる。そこには、1人の男の人が立っていた。私は一瞬助けが来たのかと思ったが来たのが1人だけなのを見て愕然とする。だって、普通に考えたら男5人に対して男1人なんて負ける確率の方が高い。数は暴力なのだ。そんなことを考えているとその男の人は意味の分からないことを言い始めた。同意の上でのプレイとかそんなわけ在るわけがないじゃない。いや、もしかしたら在るのかもしれないけど私達にはそんな性癖はない。でも、どうやら助けてくれる気みたいなので最後の希望と思って助けて貰おうと考えたが、男達は少し予想外の行動に出た。それは、助けに来てくれた人を殺してしまおうと言う。確かにこの中で死んでもモンスターに殺されたと思うだけである。だが、助けにきてくれた人は顔色を一切変えずに対応している。男達4人が武器を抜くと、助けに来てくれた人も仕方なく自分の持っている武器を抜き出す。腰には結構な日本刀を帯剣しているかと思ったが、武器を抜いてみてちょっと愕然とした。それは、持っていた武器が木で出来ていたのである。所謂というか普通の木刀である。但し、外見は日本刀にしか見えないようになっている。こんな加工は木刀には必要ないんじゃないかと思ったが、それ以前に、鋭利な武器に対し只の木刀では歯が立たないと思っていた。だが、その結果は私の思っていたのとは真逆であった。私の予想では、助けにきてくれたのは嬉しいが恐らくこの人は負けると思っていたが、気付けば4人は地面に伏している。あっという間の出来事で頭がついて回らない。そして、最後のリーダー格の男は見方を全滅させられて頭に地が上ったのか助けに来てくれた人に襲いかかるが、そいつも一瞬の内に倒してしまった。倒した後、何をするのかと思えば全員をロープでグルグル巻きにしたのである。そして、その後男達と私達を連れてダンジョンを脱出するというのだ。勿論私達ではモンスターを倒すのは少々心許ない。しかも、男達は拘束されて使い物にならない。助けてくれた人は拘束された男達を率いるので戦闘どころではないだろう。そう、不安に思っていたので声をかけると、何と犬にやらせるという。確かにさっきから気にはなっていたが、ダンジョンに犬がいる。しかも、この犬、滅茶苦茶人懐っこくて毛もサラサラでとても気持ちがいい。この犬に戦闘をさせるなんてこの人は鬼畜かと思ったがそうではなかった。私達が襲われた場所から移動すると直ぐにモンスターが現れる。すると、主人の掛け声もなく犬は嬉しそうに走っていく。私は不安になりながら見守るが、その不安は杞憂に終わる。何とコボルト相手に一撃で仕留めて戻ってくる。一撃といっても全力ではなさそうで、軽くやってやったって感じである。それからもモンスターは全て犬により撃破されて行っていた。そして、モンスターからのドロップしたものを一切拾おうとはしなかった。何故拾おうとしないのか聞くと、必要なら私達に拾ってもいいと言われる。確かに彼のリュックを見るとパンパンになっていたので、これ以上入らないから放置するもの納得が出来る。なので、私達はお言葉に甘えることにした。そして、私達は無事にダンジョンを出ることが出来たのである。


やっと、ダンジョンを出ることが出来た私達は注目されることになる。それは当然だろう。なんたって5人の男達をロープで拘束しているのだから。これを見た支部の職員が血相を変えて来た。その理由は私達が考えていたのとは少しだけ違った。その理由は、拘束されていた男の中に県会議員の河原田権蔵の息子が混ざっていたのだ。その職員は、直ぐに拘束を解くように助けてくれた人に言うが何か釈然としない。それはそうだろう。罪を犯したのに親が政治家ってだけで罪が軽くなるなんて小説やドラマじゃあるまいし、と思う。でも、これには、助けてくれた人もどうしようもないのかと思っていると、解放しないと言う。それに、もっと上の人を呼んでくるように話をしていた。だけど、その職員は、頑として上の職員を呼んで来る気はなく、議員の息子を放せの一辺倒である。それには、助けてくれた人も困った顔をしていた。恐らく、この人は、県会議員の河原田権蔵の支持者か恩を売りたいのだろう。でも、この状況は、これ以上続けるのはよくないと思う。段々と野次馬が集まり始めている。たが、この状況を納める人が現れる。どうやら葵さんという人が現れた。どうやら助けてくれた人とは知り合いのようである。その葵さんは、的確に指示し、男達を支部の警備員に引き渡す。それに、犯罪の証拠として動画を撮影してたなんて正直ビックリである。それに、厳しく取り調べをするように言っているので任せることにする。そして、私達も事情聴取されるようであり、助けてくれた人も葵さんという人に連れて行かれそうになる。私はこのまま何のお礼もせずに別れることはどうしても出来なかったので、体が勝手に反応し、後で会いたいなんて言ってしまった。でも、そう思っていたのは私だけではなく遙も同じ気持ちだった。


さて、事情聴取は意外と早く終わった。なので、待ち合わせ場所に行くが、まだ、私達を助けてくれた人は来ていなかった。なので、私達は待つことにし、雑談を始める。雑談の最中、私は助けてくれた人の言葉の1つが引っかかる。それは、パーティーを組む相手を間違えたということだ。これは、遙も同じようである。そして、組むなら同性のみのパーティーか同姓がいるパーティー、後は信頼が出来る人って言われたけど正直どれも知らない。いや、知らなかったと言うべきかな。今日、助けてくれた人なら信頼できる。しかも、強いときている。この事を遙に話すと二つ返事でオッケーしてくれた。話がまとまると、助けてくれた人が姿を表す。声をかけフードコートに移動する。今回はお礼なのだから代金は私達が負担する。そして、話を始めるが、まだ、自己紹介をしていないことに気が付き助けてくれた人お礼と一緒にする。どうやら名前は神月サイガさんと言うらしい。話した感じはとてもいい人だった。なので、私達は、一緒にパーティーを組むことを提案すると、直ぐに良い返事は貰えなかったが、幾つかの条件を飲むことで了承して貰えた。まぁ。その条件も私達にはそれほどハードルが高いものではなかった。私達は、4月3日の9時に今日の待ち合わせと同じ場所で待ち合わせをすることになった。神月さんのことは遙と話し、「師匠」と呼ぶことにした。私達は師匠を見送ると小躍りしそうなほど嬉しかった。


私達は家に帰ると師匠の言われた通りに今日あったことを両親にはなした。勿論、師匠の事も話した。両親は何とか納得はしてくれたが、ある条件を出してきた。その条件とは明日の探索を終えた後に我が家に招待しろというのだ。要は自分の娘を預けられるか見極める為だろう。私の家は少々面倒な所があるが、これからも探索者としてやっていきたいので、師匠には頑張って貰いたいものである。まぁ、この事を言うのは明日の探索が終わってから話そうと思う。

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