第57話 出会い
7階層に到達し既に夕方なので帰るために1階層に転移してきた時である。
「キャ~~~~!誰か助けてーーーー!」
という悲鳴が聞こえてきた。
「無視………ってのはやっぱないよな。」
「わんっ!」
俺は声の聞こえた方に走る。すると、曲がり角を曲がったところで声のした所に辿り着く。っが、曲がって目的が見えたところで一旦身を隠す。そして、スマホを取り出して動画を撮影する。一応、後に何かあった時のために証拠を残しておこうと思ってのことだ。
状況は、女の子2人が男5人に囲まれている状態だった。女の子は高校生位で1人は髪型がショートカットで目はつり目ではあるが美人である。もう1人は、髪型はセミロングでこちらも美人な女の子である。2人とも身長は160ちょっとあるかな。
「ちょっといい加減止めてもらえます?」
ショートカットの女の子がセミロングの女の子を庇っている。
「おいおい、俺達は楽しいことしようって誘ってるんだぜ!」
「そうそう。俺達と気持ちいいことしようぜ!」
「興味ないっていってるじゃん!」
「お前達にはなくても俺達には有るんだよ!」
男がショートカットの女の子の腕を掴み自分の方に引き寄せ女の子を後ろから抱き抱えるように捕まえる。それを見た他の男がセミロングの女の子を所謂壁ドンして今にも襲いかかろうとしている。俺は、そろそろ彼女達が危険だと判断して助けに入ろうと思う。だが、一応撮影モードのまま携帯は床においておく。何も撮れないかもしれないけど声くらいは録音できるでしょ。
「きゃー!止めてください!」
パンパン!
俺が手を叩くと全員の行動が静止し音のなった方に視線を向ける。
「はいはい。ここで終了。女の子達が嫌がってるじゃない?それとも、同意の上でのプレイだった?」
「おいおい。誰だか知らないが余計なお世話だ。それに、これは嫌がってるじゃない。照れ隠しだ。」
「って、言ってますけど本当ですか?」
俺は女の子達に確認を取る。もし、それが本当なら俺は只のお邪魔虫である。まぁ、その可能性は極端に低いが……
「嘘です。助けてください。」
「そう言ってますので、離して上げてもらってもいいかな?」
俺がそう提案するが、ショートカットの女の子を捕まえている男が
「おい、やっちまえ!」
そう合図をすると4人の男は持っている武器を抜き俺に襲いかかろうとする。
「えっと、これはどういう状況かな?」
俺は少し惚けてみる。
「はっ、この状況にビビっちまって思考が停止してやがる。いいぜ、教えてやるよ。今からお前は俺達には殺されるんだよ。」
「それは犯罪だと思うけど……」
「ダンジョンの中で人が死んでも全部モンスターのせいに出来るってことよ!」
「はぁ、そう言うことですか!」
「そうだ。ということでお前らやっちまえ!」
俺に襲いかかろうとする4人の前に哮天犬が飛び出してきて
「ガウッ!!グルルルル!!」
と、威嚇をする。それを見た4人は一旦立ち止まる。
「兄貴。アイツ、最近噂になっている白い犬を連れた奴ですよ!」
「何だ?それは?」
「何でもダンジョンからあの犬を連れ帰ったみたいな話になってて話題になってるみたいです。」
「ほうっ!じゃあ、アイツを殺せばあの犬が手に入るのか?まぁ、犬は要らんがどこかの金持ちにでも売れば良い値がつくだろうな!!」
何か、哮天犬を馬鹿にされたみたいでムカつく。
「哮天犬。お前は下がってろ。アイツらは俺がやる。」
「クーン。」
と言いながら俺の後ろに下がってくれる。
「あはははははっ!アイツは馬鹿だ!俺達があの犬を傷つけないように戦えば少しは勝てる目もあったかもしれないのに完全に勝機をなくしやがった!」
「そう思うなら早くかかってこいよ。」
俺は木刀を抜く。
「ぎゃはははは!しかも兄貴、奴の武器は木刀ですよ。俺達を笑い死にさせるつもりなんですかね?」
「はははっ、確かにな!」
「はぁー!いいから早くしろよ。それと、お前ら人に武器を向けるんだからそれなりの覚悟をもってるんだろうな?」
「はぁ~?覚悟?そんなもんは必要ねぇ!俺達は怪我なんかしないからな。出るのは死人お前だけだ!!!」
兄貴という奴がそう言うと4人は一斉に襲いかかってくる。どいつもこいつも動きが鈍くすれ違い様に木刀の柄を腹部に叩き込む。4人は意識を手放し前のめりに倒れる。
「おっ、お前ぇぇーー!一体何をした?」
「えっ?普通に倒しただけだけど?それよりも、後はお前だけなんだけどどうする?」
「こうなったら俺だけで殺ってやる!」
「きゃ!」
ショートカットの女の子を放り投げて、持っている剣を抜き俺に襲いかかってくる。まぁ、コイツも他の奴と同じ様に木刀の柄で男の鳩尾を突きコイツも前のめりに倒れ意識を手放している。
「さて、君たち大丈夫?」
女の子2人はキョトンとしている。意識を失なってるのかなと思い2人の目の前で手を振ってみる。
「「はっ!」」
2人の意識が戻ってくる。すると、ショートカットの女の子が
「あっ、ありがとうございます。助かりました。」
ショートカットの女の子が俺にお礼を言うと、セミロングの女の子も
「ありがとうございました。」
と、頭を下げてお礼を言ってくれた。
「怪我はない?」
「「ないです!」」
2人の返答がハモってしまう。
「ところでどういう状況だったの?」
俺がどうしてこうなったのか話を聞くとショートカットの女の子が教えてくれる。
「私達は、学校の同級生でダンジョンに興味があって一緒に探索することにしたんです。でも、いざ女2人で探索するには不安があったんですけど、丁度この人達が探索に誘ってくれて、それで、一緒に探索することになったんです。最初は、真面目に探索をしていたんですが徐々に人気のない方に来て、さっきみたいなことになったんです。」
「はぁ~!そうなんだ。確かにコイツらが悪い。だけど、君らも悪いところもあるぞ!」
「なっ、どういうことですか!!」
ショートカットの女の子が食って掛かってくる。
「まず、君らの容姿だよ!」
「「容姿??」」
「君ら、世間一般的に言っても美人だと思うぞ!」
「そっ、そんな美人だなんて……。」
2人とも美人と言われて満更でもないようだが俺は話を続ける。
「そんな子が2人だけで居たら狙われるのも仕方ないと思うぞ。それに、見ず知らずの奴に同行するのもいただけない。女の人が一緒にダンジョンで探索するなら信頼の置ける男か若しくは女の人がいるパーティーか女の人のみのパーティーにするべきだったと思うぞ。」
「そう言われればそうかもしれないですね。」
セミロングの女の子が納得するが、ショートカットの女の子は何故か納得したくないような顔をしている。
「ところで、コイツらはどうする?」
「えっーと、普通ならどうした方が良いんですか?」
「普通なら支部の事務所に突き出せば問題ないと思うけどな。」
「じゃあ、それでお願いします。」
「わかりました。」
「ところで、あの子は何なんですか?」
セミロングの女の子が聞いてくる。
「あの子?」
「あの犬?のことです。」
「ああっ、アイツは俺の相棒だよ!」
「えっーと、触ってみも良いですか?」
「いいぞ!おいで!」
声をかけると哮天犬は俺の元にやってくる。
「お前を撫でたいって言ってるんだけどいいかな?」
「わんっ!」
「いいらしいぞ!」
「「ありがとうございます!」」
2人は喜んで哮天犬を撫で始める。
「うわっ、すごい気持ちいい!」
「モフモフだね!」
どうやら2人を哮天犬が癒してくれてるみたいだ。俺はその間に、倒した5人組はリュックの中からロープを取り出して拘束しておく。ロープは、本当はリュックの中じゃなくてアイテムボックスから取り出したんだけどね。
さて、拘束したはいいが、このままではコイツらを引きずっていかなければならないが、それは面倒なので自分で歩いて貰うとしよう。俺はリュックと見せかけてアイテムボックスから2リットルの水のペットボトルを取り出して男達に頭から水をかける。
「はっ、俺はどうしたんだ?」
「気絶してたんだよ。」
「あっ、お前は……これをほどけ!!」
兄貴と呼ばれている男は自分がロープで拘束されているのを見て騒ぎ出す。すると、他の奴らも起き始めめ、兄貴同様騒ぎ出す。
「お前ら、五月蝿い!今の状況を理解してないようだからしてやる。このまま拘束された状態で大人しく俺達に付いてくるか、このままの状態でここに放置するかの2択だけだ。後者を選んだらお前達はコボルトの餌食になるだろうな!」
「わっ、わかった。大人しくお前らに付いていく。」
「「「「うんうん!」」」」
他の4人も首を縦に振っている。
「さて、じゃあ行くか!あっ、そうそう君らもちゃんと付いてきなよ!」
俺は女の子2人も一緒に来るように言う。
「「はっ、はい!」」
俺は、拘束しているロープの端を持ち男どもに付いてくるように促す。その男どもの横に付いてくる。
「おい、オッサン!」
「あっ、俺のことか?何だ?」
一瞬分からなかったがコイツらから比べたら確かにオッサンだな。
「あんた俺達とこの女達を連れて行け分けねーだろ!!」
「「「「うんうん。」」」」
他の4人と女の子2人も頷いている。
「そんなことか。その心配はないぞ…………。あっ、丁度モンスターが現れたな。」
「何っ?どうするんだよ?」
「まぁ、黙って見てろ!よしっ、行ってこい!」
「わんっ!」
俺が許可を出すと哮天犬が嬉しそうに飛び出していった。
「おっおい、あんな犬が役に立つのか?」
兄貴と呼ばれている男は不安そうにそう言う反面
「あっ、ワンちゃんが………!」
女の子2人は悲しそうに見送る。
「黙ってみていろ!」
相手はコボルトなので速攻で倒して戻ってくる。
「よしよし!良くやったな!」
「わんっ!」
俺が撫でてやると体を俺の足にすり寄らせてくる。
「何だ?あの犬?」
勿論質問には答えてやらない。他の男達も今見た光景が信じられないのか目が真ん丸になっている。一方で、
「ワンちゃん強ーい!」
「ホント、あんな強いワンちゃん見たことないかも。」
こっちの女の子は嬉しそうに騒いでいる。
「そう言うことで先を急ぐぞ!」
俺はドロップしたものを放置して行こうとした時、セミロングの女の子が
「あのー、拾わないんですか?」
「えっ、ああ、ドロップ品のこと?拾わないよ。っというかもうリュックが一杯で入らないんだよね。もし良かったら君たちが拾ってもいいよ。」
「本当ですか?ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
こうして、哮天犬がモンスターを倒し、女の子がドロップ品を拾いながら30分ほどダンジョンを歩くと出口が見えてきた。俺達がダンジョンの出入り口に差し掛かるとそれを見た支部の職員が俺達の方にやってくる。
「これはどういう状況なんですか?」
支部の職員が俺に話しかけてくる。
「コイツらがそこの女の子2人を強姦しようとしたところを助けたんだよ。それで、コイツらを支部に突き出すためにわざわざ連れてきたって訳。」
俺はロープを引っ張り男達のことをアピールする。
「俺達は何もやってない。このオッサンに濡れ衣をきさせられたんだ。」
「「「「そーだ!俺達は無実だ!!」」」」
「あれっ、あなたは河原田正樹さんじゃないですか?」
「おっ、お前、俺のことを知っているのか?」
どうやら兄貴と呼ばれている男のことを支部の職員が知っているようである。
「こいつの事を知っているんですか?」
「なっ、あなた、コイツとは失礼ですよ。この人は河原田権蔵氏の息子さんですよ!」
「えっーと、誰、それ?」
「かぁぁーあなたは何も知らないんですね!この人は県会議員の息子さんなんです!」
「へぇーそうなんだ。」
「だから早く離してあげなさい。」
その言葉を聞いて河原田正樹は何か勝ち誇ったような顔をする。
「断ります。」
「なっ何を言ってるんですか?この人は県会議員の息子さんなんですよ?」
「だから?」
「後々問題になりますよ?」
「はぁ、あなたじゃ話にならない。もっと上の人を読んできて貰えますか?」
「そんなことよりも早く離しなさい!」
「埒が明かないな。」
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