第56話 如意棒

さて、俺は現在5階層のボス部屋にいる。因みに俺はボス部屋の壁に背中を預けもたれ掛かっている。何故、俺がのんびりしているかと言うと 哮天犬がやりたいと言うので任せているのだ。敵は、コボルトジェネラルが2匹とハイコボルト5匹居た。まぁ、哮天犬が圧倒しているのだが。戦闘は2分と掛からずに終わる。が、コボルトジェネラルは1匹だけ残してもらっている。それは何故かと言うとちょっと魔法の実験台になってもらおうと考えているからだ。哮天犬は、嬉しそうに戻ってくるが、まだ、モンスターが残っているので撫でてやるのは後回しだ。


「ちょっと、待っててくれよ。」


「わん!」


元気よく返事をしてお座りをしている。


「さて、やるか!」


俺が考えていたのは火魔法である。火の魔法の色は基本赤い色をしている。だが、青い炎を作り出すことが出来ないのかと思ってしまったのだ。火は赤よりも青の方が温度が高い。と言うことは、魔法で青い炎を作り出せれば威力も向上すると考えられる。取りあえず、酸素を多く含ませて火力をあげるイメージで掌の上に掌と同じくらいの火球を作り出す。すると、見事に青い火球が完成している。


「おおっ、やれば出来るな!!では、発射!」


青い火球はコボルトジェネラル向けて飛んでいく。スピードはまあまあで見事コボルトジェネラルに命中すると、青い炎の火柱を上げる。火柱が収まるとそこには何もなかった。恐らく、火柱が上がっている途中でコボルトジェネラルを倒してしまい、その後にドロップしたものまで燃えてしまったようである。


「おおっ、結構な威力だな。それも、MPの消費も普通の時とあんまり変わらないか!」


やっぱり、要は魔法は想像力次第なのかな。まぁ、取りあえずドロップ品を回収していく。ドロップ品は魔石とハイコボルトからは武器がドロップしている。これは、無視で良いと思う。コボルトジェネラルからはスキルの書であった。これは、剣術であったので買取に出しても問題ないと思いリュックにいれておく。さて、いつものお楽しみの宝箱である。宝箱を開けると1本の棒が入っていた。赤色がメインで豪華な金が装飾されている棒であった。


如意棒

スキル 炎生成 伸縮 炎操作


炎生成

炎を作り出すことが出来る。


伸縮

自由自在に伸ばしたり縮めたり出来る。


炎操作

炎を操作することが出来る。


「如意棒ってあの如意棒だよな?」


恐らく間違いはないと思う。何せ伸縮ってスキルがあるくらいだから間違いではないと思う。西遊記に出てくる如意棒に間違いないと思う。こんなものは世の中に出せないので俺のアイテムボックスの中に仕舞っておくとする。


「さて、気を取り直して下の階層に行こうか!家にあるダンジョンは6階層から草原と森が半々のフィールドだったけど、ここはどうなんだろうな?」


と、つい独り言を行ってしまうが、俺の足に何かがあたる。下を見ると


「わん!」


哮天犬が自分が居るぞと訴えている。


「そうだったな。お前が居たんだな。」


俺はそう言い哮天犬をモフモフしてやる。


「わふっ、わふっ!」


と、嬉しそうである。


「さて、じゃれたことだし次に行こうか?」


「わんっ!」


こうして、少し楽しんだ後に6階層に下りていく。6階層について見えた景色は余りにも殺風景であった。それは、緑は一切なく大きな岩と砂の世界であった。荒野と呼ばれる景色が目の前に広がっていたのである。


「前にも荒野があったな。もしかして、オークが出てくるのかな?それだと代わり映えがしなくて面白くなさそうだから、何か気が滅入りそうなのは俺だけか?」


「わふ!」


と、哮天犬は、首を横に振り「違う」と言っているようである。さて、やる気の無くなった俺であるが行くしか選択肢はない。だが、その前にそろそろ昼に近い時間なので6階層の探索の前に昼食にすることにする。


「よし、昼食にするぞ?」


「わんっ!……………わふ?」


どうやら哮天犬は、俺の昼食という言葉に疑問に思っているようである。


「そうか。お前、知らなかったな!」


「わふっ?」


さて、哮天犬が知らないことを見せるとしよう。俺は、アイテムボックスから魔法のテントを取り出す。


「わふっ!」


どうやらビックリしているようである。だが、ビックリするのはこれからである。


「中に入ってみな!」


「わん?」


俺が入るように促すがなかなか入ろうとしない。俺が薦めてもダメである。どうやら警戒しているようなので、俺が先に入ってみることにする。


「じゃあ、先に行くぞ!」


俺は、哮天犬より先にテントの中に入る。それを見た哮天犬は俺について来る。テントの入り口を潜ると広間になっているのを見て哮天犬はビックリしているようである。それはそうだろう。何せテントの大きさの割には中は圧倒的に広いのだから。


「その辺で寛いでて良いぞ!」


「わんっ!」


哮天犬は、広間でゆったりとお座りをしている。


「そー言えば、お前ってなに食べるんだ?」


そういえば、哮天犬と出会ってから何かを食べているのを見かけていない。


「クーン。」


と、首を横に振る。


「何も食べないってことか?」


「わんっ!」


何か肯定されてしまったのかな。


「そうか。じゃあ、お前の原動力って何だろうな?」


「わんっ!」


すると、目の前に雷の魔法を出現させる。


「???…………そうか。魔力か?」


「わんわん!」


「んー、ってことは空気中の魔力を吸収してるってことなのかな?」


「わんわん!わん!」


哮天犬は、嬉しそうに首を縦に振る。そして、俺の方に手を向けてくる。


「俺?……もしかして、俺からも魔力を吸収してるのか?」


「わん!」


何か納得してしまう。俺の魔力を吸収してるってことは俺の魔法とか使えても不思議ではないからな。

さて、じゃあ、哮天犬のご飯は用意しなくても問題ないから俺だけなら適当に済ませることにする。既に炊いてあるご飯を茶碗に移し、卵を割ってご飯の上に乗せてかき混ぜ醤油をかける。所謂、卵かけご飯である。あとは、その上にふりかけをかけて食べる。まぁ、これなら直ぐに食べ終わるのだが、直ぐに探索に行く気にはならないので一休みすることにする。


「少し、休もうか?」


「わん!」


俺は、哮天犬を俺の部屋に連れてい行きベッドにダイブする。哮天犬も俺の隣に来る。暫くベッドで寝ることにする。


少し寝るつもりがついつい気持ちが良すぎて1時間半も寝てしまっていた。


「さて、起きて行くか?」


「わんっ!」


俺達は準備を整えてテントを出る。テントを仕舞い行きたくはない荒野を進んでいく。荒野には大きな岩があり、モンスター等が隠れやすそうなところが一杯あり普通なら奇襲を受けやすそうな場所である。でも、俺には気配察知のスキルがあるので、奇襲などは受けない。そんなことを考えていると、右前にある大きな岩影に敵の気配を感じとる。俺は普通に気づかない振りをして岩に近付くと岩の上からモンスターが俺に向かって2匹飛び掛かってきた。俺は既に知っていたので軽々と回避する。俺に飛び掛かってきたモンスターは、体は砂のような色をしており、見た目は蜥蜴を大きくして2足歩行出来るようにした感じで鎧と剣を持っている。


サンドリザードマン

レベル 10

HP 600

MP 200

スキル 剣術3 体色変化3 硬化3 


鑑定結果はサンドリザードマンであるらしい。砂地に住むから砂地に合うように適応した結果だと思う。まぁ、余り強くないので哮天犬が、


「わう!」


自分に任せろ的なことを言っているが俺もそろそろ戦闘に参加したいので、



「俺にも1匹やらせてもらう!」



と、哮天犬に言うと、



「わふ!」



仕方ないと言っているようである。



「俺は右の奴に行くからお前は左な!」



「わんっ!」


俺達は一斉に走り出す。俺は木刀を抜き、縮地で一気に距離を詰めて右上から左下に向かって斬りかかる。あまり抵抗は無く、スパンと斬れる。哮天犬もサンドリザードマンに走って向かっていく。こちらもスピードが早くサンドリザードマンに気づかれる前に接近しひと噛みでサンドリザードマンを倒している。サンドリザードマンのドロップは、持っていた武器とサンドリザードマンの皮が落ちていた。武器は性能も良くないし、特別な効果もあるわけでもないようである。


サンドリザードマンの皮

サンドリザードマンの皮。


取りあえずサンドリザードマンの皮は背負っているリュックに仕舞う。俺達は次の敵を求めて6階層を探索する。何度かサンドリザードマンとの交戦を行った後に、あるものを発見する。それは真っ赤に実っているトマトであった。俺は、アイテムボックスから鋏を取り出して収穫を開始する。そして、収穫の最中に1つ自分の服でトマトを拭き齧ってみる。


「水分がたっぷりで甘くて旨いぞ。」


結構な量あったが殆どアイテムボックスに仕舞い20個ほどリュックに入れる。その後もサンドリザードマンと戦闘を行いながら探索を進めていくが、何度かトマトを発見したのでその都度狩り尽くし、リュックには入りきらないので全て俺のアイテムボックスにしまう。

さて、そんなことを繰り返していると下へと続く階段が目に入ってくる。階段の前は岩など一切なく、このフロアのボスの姿は見えない。だが、俺のスキルはモンスターの気配を感じ取っていた。それは、地面の下にあった。そいつは恐らく自分の真上に来た時に襲いかかって来る気のようで、その場から動かないので、俺もどうしようかと思いその場に止まっている。


俺がどうしようかと考えていたが、先に痺れを切らしたのはモンスターの方であった。


ドーーーーン


っと、大きな音を立てて砂の中から出現した。5メートル位ある蠍のモンスターである。


種族 デススコーピオン

レベル 15

HP 1200 

MP 800

スキル 硬化3 毒5 溶解液5 


取りあえずは毒と溶解液に気を付ければ問題はないかな。毒は恐らく蠍特有のあの尻尾から出るとして溶解液も尻尾若しくは口と考えて良いと思う。


「じゃ、やろうか!」


「わん!」


哮天犬は返事をすると一目散に駆けて行ってしまう。自分自身の周りに炎の玉を作り出して走りながら炎の玉を放つ。そして、その炎の玉がデススコーピオンに当たると爆発を起こしている。


「あんなこと教えてないんだけどな~!」


独り言を言ってみる。


「おっと、こんなとこで独り言を言ってると哮天犬に良いところを全て持っていかれかねないな。俺もそろそろ参戦するか。」


俺は縮地を使いデススコーピオンの体の下に潜り込む腹部を斬撃を加える。スキルの硬化がある割にはすんなりと斬ることが出来た。俺が胴体を斬りながらデススコーピオンの体を走り抜けるとデススコーピオンは力なく地面に胴体を着け動かなくなり、ドロップ品を残して消えていってしまった。ドロップ品は、魔石とナイフが落ちていた。


デススコーピオンのナイフ

効果 相手を毒状態にすることが出来る。


デススコーピオンのナイフ

デススコーピオンからドロップしたナイフ。相手を毒の状態にする。


まぁ、このナイフも買い取って貰う方向でいいかな。と、考えていたら宝箱出現する。俺と哮天犬は宝箱の前まで行き、宝箱を開ける。中身はスキルの書が3個が入っていた。スキルの書は、刀術、棒術、格闘術であった。


「やっぱ、刀術は取っておくかな。使わなくても刀術は憧れだし。」


そう言うわけで刀術のスキルの書を使用する。


名前 神月 サイガ

レベル 107

HP 8500

MP 8300

スキル 鑑定 アイテムボックス 世界言語 木神術3 刀術1 抜刀術10 テイム10 気配隠蔽10 火王魔法7 雷王魔法8 闇魔法6 魔力支配9 罠感知10 隠蔽10 気配察知10 魔法耐性9 縮地10 睡眠学習改7 体聖術5 再生魔法6 鍛冶9 料理7 雷操作5


称号 世界初ダンジョン入り 世界初ダンジョンモンスター討伐 世界初フロアボス討伐


「ちょっと不安だったけどレベルって100を越えるんだ。」


前に鑑定したときにレベルが100手前だったのでもしかしたら100で成長限界が来るのかと不安だったけどどうやらその心配は不要のようである。

さて、ここでのすることは終わったので次の階層に行こうと思う。だが、もう既に夕方なので切りも良いので次の階層に足を踏み入れてたら今日はここであがろうと思う。俺達は、7階層に到着したら直ぐに転移の指輪を使い1階層に転移する。転移するのは朝転移に使用した場所に転移をする。人が多いと目立つのでなるべく人の居ないところにする。


「さて、1階層に戻ってきたし、とっとと帰ろうか!」


「わんっ!」


俺と哮天犬は入り口に向かって歩き出そうとした瞬間、


「キャ~~~~!誰か助けてーーーー!!」


と、悲鳴が聞こえてきた。

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