第55話 猫の妊娠と今後の対策

4月2日。俺は昨日からあることに悩んでいる。それは、昨日はやり過ぎた事である。何をやり過ぎたかと言うと全部?かな。特に最後の買取の鑑定はやらかした感が半端ない。あんなに沢山の魔石やドロップ品を持ち込むべきではなかったと反省をしている。まぁ、お陰で結構な金額にはなったが。だが、俺が一番ヤバイと思うのは、ダンジョンを俺が国に報告せずにダンジョン出現当初から使用していたことがバレないかと言うことである。もし、疑われて家にでも来られたら一発でバレてしまう。なのでさっきから言い方法が無いかを必死に考えているがいいアイディアが思い浮かばない。頭を抱えていいところアイディアが、でないか左右に振っていると


「ご主人どうしたの?」


「グラムか。いや、ちょっと昨日、やらかしたなと思ってさ、もし、疑われてここに調査にでも来られたら面倒だなと思ったんだよ。」


「別に教えてやればいいの。」


「教えたらこの家を手放さなければならなくなるし、俺ももしかしたら逮捕されるかも知れないからな。」


「逮捕ってなんなの?」


「要は、グラム達と一緒にいられらなくなるってことかな!」


「それは嫌なの。」


「俺も嫌だから何か良い方法が無いかと考え中なんだよ。」


「簡単なの。見つからなければいいの。」


「まぁ、それが理想なんだけど、家を調べに来られたらどうしようもないしな。」


「じゃあ、家を調べさせなきゃいいの。」


「そう言うわけにはいかないんだよ。」


「うーん。面倒なの。」


「だろ?だからさっきから悩んでるだよ。」


俺はしばらく考えるが何も思い浮かばない。


「あっ、そうなの。じゃあ、隠しちゃえばいいの!!」


「隠すってどうやって?」


「要はダンジョンの入り口を見つけさせなきゃいいの!」


「それは分かるがその方法を、思いつかないんだよ。」


「ご主人、猫達の魔法を使うの!!」


「猫達の魔法??」


猫達の魔法と言えば、確か、幻覚魔法を全員が覚えてたな。


「幻覚魔法のことか!」


「そうなの!それで入り口を隠しちゃえばいいの!!」


「それ良いアイディアだな。採用!!」


「やったの!!」


グラムの提案を採用すると、グラムは嬉しそうにベッドの上をポヨンポヨンと跳ねている。ただ、もし、国側の奴らがやって来たとしてもその時に誰か居ないと話しになら無い。ましてや本当に来るもどうかもわからないものをずっと待っておくのも馬鹿馬鹿しい。その辺りをどうしようかと考えるが、良い案は出てこない。


「ご主人。報告があるにゃ!」


考えに更けていると1匹の猫が話すかけてきた。


「うん。どうした?」


『実は、メス猫3匹が妊娠したにゃ!』


「おおっ、マジか!それは目出度いな。じゃあ、妊娠した猫達はダンジョンには行ってないよな?」


『いえ、最前線でバリバリやってますにゃ!!』


俺はその言葉に衝撃を受ける。


「いや、何考えてんの?妊娠している奴はダンジョン探索は禁止。今すぐここに連れてきなさい!!」


『わっ、わかりましたにゃ!』


俺に報告に来た猫は慌てて妊娠している猫を呼びに行った。5分もすると俺の目の前に3匹の妊娠している猫が揃い、呼びに行った猫も横に控えている。


「まずは、妊娠おめでとう!」


『『『にゃ??』』』


鳩が豆鉄砲喰らったようなビックリした顔で俺を見る。


「どうした?まさか、俺が妊娠に対して怒っていると思ったのか?」


『ハイにゃ。ご主人が怒って私ら妊娠した3匹を呼んでいるって聞いたとき怖かったにゃ。』


「ああ、なる程な勘違いさせて悪かったな。だけど、怒っているのは事実だ。何故だか分かるか?」


3匹は顔を合わせるがよく分かっていないといった感じである。


『さぁにゃ?』


『分からないにゃ。』


1匹は頭を捻っている。


「お前達が妊娠しているにも関わらず最前線でダンジョンに潜っているからだ。あんまり激しい運動をしたり、もし、敵の攻撃を受けでもしたらお腹の子にどんな悪影響があるのか分からないだろ!」


『ご主人は、私たちと子供の事を心配してくれるのにゃ?』


「何を馬鹿なことを言っている!お前達は俺の従魔だ。心配するのは当たり前だ。ましてや子供が出来たなんて喜ばしいことじゃないか!!」


『ご主人、そう言って貰えて嬉しいにゃ。』


「っと、言うことでお前達は出産が終わるまではダンジョン禁止!」


『にゃ??それはちょっと………。』


「ん?何か問題があるのか?」


『ダンジョンの探索はとても楽しいにゃ。それを出来なくなるのは寂しいにゃ!』


他の2匹もウンウンと頷いている。


「お前達の楽しみかもしれないけど、今は子供の方が大事だから我慢すること。いいな、これは命令です。」


『でも、ダンジョンに入らないと美味しいものが食べれないにゃ!』


「その辺は心配しなくても良い。食事はキチンと用意するし他の猫達も協力してくれるよな?」


横で控えていた猫に聞いてみる。


『それは勿論にゃ!食材は山程あるにゃ。』


「っだ、そうたぞ!だから、お前達は安静にして過ごせ。あと、適度な運動はした方がいいと思うぞ。なので、外に散歩に行く分には許可を出すぞ!気分転換にもなるし、その方が母体にも子供にも良いしな。」


『ご主人、ありがとうにゃ。』


『嬉しいにゃ。』


『頑張って、子供を産むにゃ!』


「そこで、お前達に1つやって欲しいことがあるんだけどいいか?」


『何にゃ?』


『ご主人の為ならなんでもやるにゃ!』


『任せるにゃ!』


「その前に、お前達は幻覚魔法魔法は使えるよな?」


『勿論にゃ!』


「因みにレベルは?」


『私は5にゃ!』


『同じく5にゃ!』


『ちょっと前に6になったにゃ!』


「そうか。ちょっと使って見てくれないか?」


『分かったにゃ!』


すると、目の前には、猫達が居たが、今は母親が立っている。しかも、母親を触ると人間の感触そのままである。


「もう良いぞ!」


俺が合図を出すと元に戻る。


『どうだったにゃ?』


凄いと思うぞ!これなら大丈夫かな!」


『どうかしたにゃ?』


「いやっ、1つ懸念材料があってな。ここにダンジョンがあるってことがバレるかもしれないんだよ。」


『にゃ?それは困るにゃ!!』


「そう、それは俺も困るんだよ。だから、お前達に頼みたい事があるんだよ。」


『私たちで出来ることならなんでもやるにゃ!』


「ありがとな!そこで、俺が頼みたいのは、もし、国の奴らが調査に来た時にダンジョンの入り口を幻覚魔法で普通の床に見えるようにして欲しいんだよ。」


『そんなことならお安いご用にゃ。私たち、ダンジョンに行けないから暇してるにゃ!』


「あと、壁の従魔の家も普通の壁に見えるように幻覚魔法をかけておいて欲しい。」


『了解にゃ!』


『任せるにゃ!』


『やってやるにゃ!』


「よしっ、頼むぞ!」


もし、国からの調査が来てもこれで大丈夫だと思う。これでどうやら俺の懸念は解消されそうである。


「それと、スキルは適度に使っていいぞ。使えばレベルも上がっていくからな。」


『分かったにゃ!』


「じゃあ、解散な!」


『『『ご主人、ありがとうにゃ!!』』』


そう言って妊娠した猫達は自分達の居場所に帰っていく。


『ご主人。まさか、メス猫達の妊娠を利用したりして無いですよねにゃ!』


いきなり図星を突かれドキッとする。


「いっ、いや、そんなことはないぞ。」


『本当ですにゃ?』


猫は俺を横目でじっと見つめている。


「はぁ~。わかった降参。お前の言う通りだよ。ただ、1つ間違って欲しくないのは、さっき言った通り、妊娠は目出度いし、健康な子供を産んで欲しいと思っているぞ。だからリスクのあるダンジョンの探索を中止させた。そして、俺の悩みを解決するのにちょうど良い能力を持っていたのが偶々猫達だったってことだよ。要は、終わり良ければ全て良しって事だよ。」


『そうなのかにゃ~?』


「そうだよ。」


『まぁ、分かったにゃ。』


そう言い猫は従魔の家に戻ろうとするが俺が待ったをかける。


「ちょっと待て!」


『どうしたにゃ?』


「1つ良い忘れた。もし、ダンジョンの入り口に幻覚魔法を使っているときは出入りの制限をかけといてくれよ。何もないところから猫とか犬とかが飛び出したら変だからな!」


『了解ですにゃ!みんなに伝えときますにゃ!』


そう言うと猫は俺の前から去っていった。


「グラム達もそう言うことだからよろしくな!」


「えー!今日もご主人と一緒に行けないの?」


「悪いな!」


「しょうがないの!」


「主、アイツは連れていくのかだぞ?」


「わんっ!」


スノウは顔をグイッと振って哮天犬の方を見る。


「昨日の今日だから連れていかないと変に思われるだろうな。でも、他の普通の探索者にも変に思われること間違いないけどな!!」


「ご主人、頑張って来るのです!」


「おう!頑張って行こうかな。」


俺は部屋を出て支部のダンジョンに哮天犬を車に乗せて向かう。現在は午前9時を回ったところである。ダンジョンの入場のピーク時間は朝の8時から9時にかけてが多いらしい。恐らく、出社時間や登校時間の感覚が抜けきらない人が多いからなのかもしれない。俺は、建物の中に入りダンジョンの入り口目指すがやはり目立つ。歩いているとみんな俺、じゃなくて、ちょっと視線を落ちて哮天犬の方に向いている。かく言う 哮天犬は、我関せずといった感じで俺の側を歩いている。俺は、別に着替える必要性がないのでダンジョンの入り口に直接行き入る順番を待つ。といっても、俺の前には4、5人しか居なかったのですぐに順番は回ってくる。俺と哮天犬はダンジョンに入り人気が無いところに移動する。俺は周りに誰も居ないことを確認して転移の指輪を使い4階層に転移をする。


さて。今日から4階層を探索する。出てくるモンスターは、コボルト系の魔物が出てくる。早速戦闘開始だと思い前に出るが、その俺の前に哮天犬が飛び出して俺の方を振り返る。


「わん!」


円らな瞳を俺に向けてくる。


「もしかしてお前がやるのか?」


「わんわん!」


哮天犬は、頭を縦に振り尻尾を嬉しそうに振っている。


「大丈夫か?」


「わんっ!」


どうやら大丈夫と言っているようである。


「じゃあ、任せた!」


「わんっわんっ!」


と言うと、モンスターの群れに駆けていってしまった。一直線にコボルトの集団に突っ込み相手を蹂躙している。噛みついたり、爪で引っ掻いたり。戦闘が終わると踵を返し一目散に俺に向かってくる。


「わんっ!」


「よしよし!」


俺は、哮天犬の頭を撫でてやる。


「クーン!」


哮天犬は、とても気持ち良さそうである。ドロップ品として武器が落ちていたが嵩張るので放置し魔石のみ回収する。取りあえずモンスターの気配がするところに手当たり次第倒してまわる。そして、倒したのは全て哮天犬である。自分からやりたいと言うので全て任せた。そして、ビックリしたのは何と雷と火、闇の魔法を使っている。確か、強さは主人によって異なるってあったな。つまり、主人が使えるスキルが使えて、身体能力も向上しているってことなんだろうな。そして、何だかんだ2時間位でボス部屋に到着する。


「じゃあ、行こうか?」


「わんっ!」


扉を開け中に入る。


「やるか?」


「わんっわんっ!」


どうやらやる気満々のようである。なので任せることにする。


結果としては1分とかからずに倒してしまった。


「よーし。よくやったぞ!」


俺は哮天犬をモフモフしてやる。


「わふっ!」


どうやら気持ち良さそうである。哮天犬を労うのを終えるとドロップした。ドロップ品を回収する。取りあえず今回のモンスターは、ソードコボルト、マジックコボルト、アーチャコボルトが各2匹、そして、コボルトジェネラルが1匹であった。ドロップしたのは各魔石とそれぞれが持っている武器であったが、武器は必要がないので放置する。その後、宝箱が出現し、中身の確認を行うため宝箱を開けてみる。今回は宝箱から犬が飛び出して来ることはなかった。宝箱の中身は、ポーションが4本とハイポーション5本入っていた。正直「えっ、これだけ?」と思ったが、まぁ、これが普通なんだよなと思う。これらをリュックにかい仕舞って次の階層を目指す。

俺達は階段を下りたあと5階層に辿り着く。5階層は思った通り一直線に通路が伸びているだけであった。100メートルほど進んで行くと大きな扉に辿り着く。やはり予想通り5階層はボス部屋しかないようである。


「なぁ、ボスの連戦になるけど大丈夫か?」


「わんっ!」


と、首を縦に振る。どうやら大丈夫なようである。そう言うわけで扉を開けて中に入る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る