第54話 大金を手に入れる
「では、こちらの転移の指輪はお返ししますが、先程葵さんが言われたような事が起こる可能性がありますから扱いには十分に注意してくださいね。」
「さて、最後に、」
「ちょっと待て。まだあるのか?」
「何を言ってるんですか?葵さん。まだ、宝箱から出てきたと言うそこのワンちゃんが居るじゃないですか!」
「ワンちゃんって……そうだったな。それがあった。」
「結果から言うと鑑定は出来ました。」
「本当かっ?」
葵さんは驚いているようだが俺は恐らく出来るんじゃないかなと思っていたのでそれほど驚かない。
「本当です。そのワンちゃんは哮天犬と言うらしいですよ。」
「哮天犬ってどこかで聞いたことがあるような気がすんるんだけどどこだったかな?」
葵さんはなやんでいるようであるが、神崎さんは淡々と答える。
「葵さんが聞いたことあっても可笑しくはないでしょうね。哮天犬とは、中国三大奇書の1つの封神演義に出てくる仙犬の名前です。」
「そう言えばそうだったな!スッキリしたよ。それで、その哮天犬とどういう関わりがあるんだ?」
「さぁ?その辺はよくわかりませんが鑑定の結果は、自立型のアイテムで、強さは主人によってことなるみたいですよ。」
「っと、いうことは、主人と認められた者が強ければ強くなり、弱ければ弱くなるってことだよな。」
「ええ。そう言うことみたいですね。」
「わんっ!」
哮天犬も肯定と言っているようである。
「哮天犬かぁー、欲しいな。」
「葵さん。残念ながら手には入りませんよ。」
「えっ、何故だ?」
「鑑定では唯一無二と出ているので哮天犬はこの子だけなので。」
「そっ、そうか。残念だな。」
と、言いながら俺の方をじっと見つめている。
「えっと、何ですか?」
「こいつを俺に譲ってくれないか?報酬はいくらでも出すぞ!」
「売りません。哮天犬と約束したんです。絶対に売らないって。なっ!」
「わんっ!」
返事をすると俺にすりよってくる。とても可愛らしいではないか。俺は片手で哮天犬を撫でてやる。尻尾を左右にブルンブルンと振っている。
「葵さん、あれを見たら諦めがつくでしょ?」
「ああ、そうだな。」
どうやら納得してくれたらしい。
「あの、ところで、買取金額の方はどのくらいになるんでしょうか?」
「そうね。ちょっと待ってね!」
神崎さんはそろばんを取り出し凄い手捌きでそろばんを弾いていく。
「神崎さん、そろばんなんて使うんですね。」
「私はこの方が速いのよ。昔からそろばんは得意だしね!」
「アイツはそろばんでやってる割に計算のミスが殆どないんだ。ついたあだ名が計算機械やそろばんの悪魔って呼ばれてるんだぜ。」
そう葵さんは俺に小声で教えてくれたが、どうやら神崎さんには聞こえてたようで、
「私の悪口を言いませんでした?」
と、わざと殺気を込めて葵さんを問い詰める。
「多分、聞き違いだと思うぞ。」
「あら、そうですか。今度言ったら超ー高いご飯奢って貰うからね。」
「わっ、わかった。」
葵さんはゾッとし、顔を青くしている。
「あのっ査定は?」
「はっ、そうでした。査定ですね。まずは、ソードコボルト、アーチャコボルト、マジックコボルトの魔石が各50個で合計150個です。1つ1500円で引き取らせて頂くので22万5000円です。そして、ソードコボルトの牙が1万円、マジックコボルトの皮が1万円。水魔法のスキルの書が150万円、鍛冶のスキルの書が70万円。そして、金が今の価格で1gが6800円位ですね。それで、金が2キロあるので普通なら1360万円なんですが、ダンジョン産で、不純物が一切ないので1500万円で引き取らせて頂きます。それで、合計額1744万5000円になりますが、よろしいですか?」
「えっーと、そんなに貰って大丈夫なんですか?」
「正当な報酬だと思いますよ。」
「そうなんですか?」
「はい。スキルの書に関しても水魔法だから高いと言ってもいいでしょう。ダンジョンの探索を行う時には極力荷物を減らしたいと思いますよね。その中でも水って結構重たいし量も嵩張りますが、必ず必要となります。何故なら水は生命にとってとても大切なものですよね。よって、水魔法のスキルの書は少し高めに買い取らせて頂いてます。」
「わかりました。」
「では、どうなさいますか?」
「??どうとは?」
「現金で支払うのか、探索者カードに入れるのかってことですよ。もしかしてご存じなかったですか?」
「はい。恥ずかしながら。」
「そうなんですか。最初にお渡しした書類の中に書かれていたんですが、まぁいいでしょう。カードはどの銀行でも使用できますし、手数料もかかりません。」
「えっ、それって滅茶苦茶いいじゃないですか!!」
「それに、支部内のお店は全部探索者カードで支払いが出来ます。」
「そうですか。それじゃあ100万円だけ現金で頂いて後はカードに入れて貰うことって出来ますか?」
「わかりました。では、探索者カードをお預かりしてもいいですか?」
「お願いします。」
俺は探索者カードを神崎さんに手渡す。
「では、お預かりしますね。少し待っていて下さい。」
「わかりました。」
そう言い神崎さんは探索者カードを持って部屋を出て行く。
「初日から凄い稼ぎましたね。」
「そうですね。偶々金を見つけたからですよ。」
「まぁでも初日でここまでの人はいないと思いますよ。」
「そうですかね。」
「わんっ!」
哮天犬も同意してくれてるみたいである。
「これからは色々と注目が集まると思いますが頑張ってくださいね。」
「へっ、注目って何ですか?」
「はい?何言ってるんですか?ダンジョンから犬なんて連れて帰って来たら目立つに決まってるじゃないですか?それに、待合室で結構な時間過ごしてましたよね?この情報過多の時代ですよ。こちらは個人の情報なので秘匿しますが、一般の人達はそうはいかないと思いますよ。」
「ということは?」
「ネットに情報が出ている可能性が高いと思いますよ。」
「マジですか??」
「恐らく。」
「はぁぁ~!」
俺が深いため息を吐いていると
「お待たせしました。」
神崎さんが部屋に戻ってくる。
「え~っと、どうしたんですか?」
「葵さんに話を聞いたらなんか滅入っちゃいました。」
「葵さん。何を吹き込んだんですか?」
「いや、何も吹き込んでないよ。」
「そんなわけないじゃないですか。そうじゃなきゃ神月さんがこんなに落ち込むわけないじゃないですか?」
葵さんは神崎さんに責められてタジタジになっている。
「葵さんのせいじゃないですよ。ただ、現実を見せられただけです。」
俺は葵さんに言われたことを神崎さんにも話をする。
「そうですね。それは仕方ないかもしれませんね………あんなにモフモフしがいのある毛並みの犬を独り占めにするわけだからね。」
後半はボソボソと言っていたのでよく聞き取れなかった。
「では、カードをお返しします。一応この建物内にもえATMもあるので入金の確認はそこで出来ますよ。あと、受付に行かれても可能ですよ。そして、これが現金になります。」
「ありがとうございます。」
俺は現金をリュックの中に仕舞うふりをしてアイテムボックスに入れる。
「それではここでの対応は以上となりますが、もし、何か問題が起こればすぐに知らせてくださいね。精一杯対応させて頂きますから!」
「わかりました。今日はありがとうございました。」
俺は席を立ち上がり挨拶をしてから部屋を後にする。もちろん哮天犬も一緒に。その後は一応ATMで残高を確認して家に帰る。個室から車に戻るまでは人の目が凄く痛かった。
現在は午後8時位であった。
「ただいま。」
「おかえりなさい!」
まずは、母親が出迎えてくれた。
「皆~帰ってきたわよ~!」
母親が俺の部屋に向けて声をかけると2階からドタドタと音を出して従魔達が下りてくる。
「ご主人、おかえりなの!」
まずは、グラムが飛びついてくる。
「主、お帰りだぞ!」
「遅いから心配したのです!」
スノウとウルも駆け付けて来てその後ろには猫や犬達その他の従魔達も後に続いて下りてくる。
「おいおい。皆して下りてこなくても大丈夫だぞ!」
「そんなこと言わないの皆あなたの事心配してたんだから。でも、いつの間にこんなに増えたの?」
最後の言葉に俺はギクッ!となる。そーいえば両親に従魔が増えたこと報告してなかった。
「まぁ、あなたが養えるんなら私たちは文句は言わないけど報告はキチンとしてね!」
「わかった!今度からキチンとするよ。ハハハっ!」
何か母親が怖いっ!そんなことを思っていると
「おうっ、やっと帰ってきたか。おかえり!」
「あっ、親父ただいま。」
「サイガ。さっき母さんが言ってたこともそうだが、その後ろにいる白い犬の事もキチンと説明してくれるんだろうな?」
そう言えば哮天犬の事をすっかり忘れてた。
「まぉ、それは夕食を食べながらでもいいじゃない!」
もう俺以外は夕食が終わっているらしく、俺の分だけ用意された。皆、俺の周りに集まっているので今日の話をしながら食事をする。今日の事を皆に話をする。そして、哮天犬が宝箱から出てきたことを話す。
「ダンジョンはそんなことが起こるのか!面白いな。」
親父はそんなことを言っている。
「それと、今日の報酬の一部だけど自由に使ってよ。」
俺は100万円を母親に渡す。
「えっ、こんなに貰っていいの?」
「それ以上に稼いでるから大丈夫だよ。」
「そう。じゃあ、ありがたく頂くわね。」
母親はとても嬉しそうである。
さて、夕食も終わったことだし風呂に入って寝るとする。風呂も終わり部屋に戻ってベッドの上にグラムとウル、哮天犬が居座っていた。スノウは俺のベッドに入るのは無理なのでベッドサイドに陣取っている。あとは他の従魔達も狙っているようだが、
「お前達は自分の寝床かあるだろ!」
と、言うと渋々だが従魔の家に戻っていく。あとは、グラムとウルと哮天犬だが、ここでは当然のごとくウルが落選してスノウと一緒に寝ることとなった。俺のベッドはシングルである。ちょうど金も沢山手に入ったから新しいベッドの購入を考えようと思いながら就寝する。
少し時間が遡って、俺が個室を出た後の葵さんと神崎さんである。
「はぁ~。何か台風が去っていった感じだな。」
「そうですね。神月さんを表のカウンターで買取を行わなかったのは正解だと思いますよ。グッジョブです。」
と、親指を立てる。
「それ、古いから。でも、そうだな。初日から1000万円を超えて来る奴が居るなんて全く想像してなかってしな。」
「それは、私も同意見です。」
「それに、強さも尋常じゃあないと思うぞ。俺が戦っても勝てる気がしなかったからな。」
「この国でも結構上の実力があるあなたがですか?」
「ああ!」
そもそも葵司は、ダンジョンが出現してからずっと自衛隊員としてダンジョンに潜っていたのである。
「もしかして、出現したダンジョンを報告もせずに潜っているとかですか?」
「その可能性はあるだろうな。」
「どうするおつもりですか?」
「そうだな。一度調査してみる方がいいかもしれないな。」
「わかりました。では、手配をしておきますね。」
「頼む。」
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