第51話 連れてボス部屋へ

今日は、ダンジョン解禁日であり、初めてのダンジョンに来ており、今、1階層のボス部屋に挑もうとするが、ダンジョン支部の職員さんに止められた。どうやら、最低でも10人はいないと中には入れてくれないらしいので俺と氷室君達は、ダンジョン職員の葵さんの言う通りにしようと思う。だが、


「ちょっと待った!」


何故か、「待った」が入ったので声がする方を見ると、柄の悪そうな野郎6人組が立っていた。まぁ、俺は、気配でそこに潜んでいたのは知っていたんだけど…


「どう言うことでしょう?」


葵さんが、俺達に向かって質問を投げかけてくる。だが、俺達は奴等とは一切関わりがなかった。


「さぁ?彼等に聞いてみてもらえますか?」


「分かりました。では、改めて、どう言うことでしょう?」


「話はさっき聞かせてもらった。」


っと言うか「盗み聞きしてただけだろうに」と思ってしまう。葵さんも面倒そうな顔をしているので、どうやら奴等が潜んでいたのを知っているようである。


「それで?」


「俺達が、そこの5人と一緒に行けば10人を越えるからボス部屋に入ることが出来るんだろ?」


「そうですね。ここの5人が了承するならですが!どうしますか?」


「俺達は構わないですよ。いいよな?」


「私はいいわよ。」


「私もいいぞ。」


「俺も。」


4人とも賛成のようである。まぁ、俺も別に拒否するつもりはないが、何かコイツらが胡散臭いのである。


「じゃあ、俺も付いていきますよ。」


「そうですか。分かりました。」


「おい、別にその4人が来てくれたら、丁度10人になるから別にオッサンは来なくても良いんだぞ?」


「「「「「そーだ!そーだ!」」」」」


「何か拒否られてるけど、ここは1つ頼むよ!」


俺一人ではボス部屋に入れないので面倒だがここは下手にいくしかない。


「ちっ、そこまで言うなら仕方ない。足引っ張るんじゃないぞ?」


「せいぜい頑張らせて貰うよ。」


どうやらこれでボス部屋に挑戦できるようだ。


「どうやら、話は付いたみたいですね。」


「おう。俺達、10人とオッサン1人で行くぜ!」


何か、馬鹿にされてる感が満載だがここは我慢するとしよう。


「では、お気を付けて!」


葵さんが、扉を開けてくれて俺達はボス部屋に足を踏み入れる。


「さて、どういうやり方でやりましょうか?」


氷室君が質問をする。


「そんなのお前らが戦えば済む話だろ?」


柄の悪そうな野郎のリーダーぼっいのが変なことを言い始める。


「イヤイヤ、あなた達は戦わないんですか?」


「はんっ、俺達がやるわけないだろ?なぁ?」


「「「「おう!」」」」


俺は黙って見ているが、どうやらコイツらは自分達では全く戦う気が無く、全部こっちにさせようとしているらしい。


「どうする?氷室君?」


「やるしかないでしょう?」


「まぁ、そうだね。俺も手伝おうか?」


「イヤ、サイガさんは見ていて貰っていいですか?」


「えー!手伝って貰ってもいいじゃない!」


「美桜、私も恭矢に賛成だ。私達がダンジョンの探索者になるって決めてから連携のシミュレーションを何度もやってきてた。そして、今日、実戦で何度か繰り返してきて漸く形になってきた。けど、新たに神月さんが入ると連携が難しくなる。」


「そうだな。俺も恭矢と真利に賛成だ。」


「仕方ないわね。じゃあ、そうしましょう。」


「じゃあ、サイガさんそう言うことで。」


「了解。」


「あっ、でも、俺達がヤバかったらお願いしてもいいですか?サイガさんって俺達より強いでしょ?」


「えっ、そうなの?」


「気づいてないのは美桜と後ろの馬鹿6人だけだと思うぞ。」


ウンウンと火野君も頷いている。


「分かったよ。ヤバそうになったら透かさず行くから!」


「よろしくお願いします。じゃあ、皆、行くぞ!」


「わかったわよ。」


「了解!」


「任せろ!」


準備が出来ると、目の前にモンスターが出現する。


種族 コボルト

レベル 5

HP 45

MP  27

スキル 剣術1 俊敏1


種族 

レベル 6

HP 160

MP 110

スキル 剣術2 俊敏2


どうやら相手はコボルトらしい。コボルトは、犬が2足歩行で歩いているような感じで毛の色は全体的に黄色である。片手に剣を持ち涎を流している。ボス部屋にモンスターが出現すると、氷室君達はコボルト向けて突っ込んでい行く。当の俺はというと入り口の扉の横のか壁にもたれ掛かってよう背を見ることにする。

さて、氷室君達だが、先頭は火野君である。火野君は、大楯を持っているので、コボルトの攻撃を大楯で防ぐ。要はタンクの役割を担っている。松宮さんは、弓で他のコボルトを戦闘に参加させないように威嚇射撃を行っている。ハイコボルトは、端から戦闘に参加する気はないようだ。コボルトが、火野君に攻撃しようと武器を上段に上げた瞬間、火野君は大楯で体当たりする。所謂、シールドバッシュである。体制を崩したコボルトを、神崎さんが短剣を2本使いコボルトを斬りつけている。短剣2本だから、双剣若しくは二刀流って感じかな。でも、持っている得物は刀じゃなくて剣の類いだから双剣でいいのかな。神崎さんの攻撃で怯んだコボルトを氷室君が剣でコボルトの心臓部分を突き上手いこと連携をして倒している。この調子で、残りの2匹も危なげなく倒すことが出来ていた。


「おっ、奴等が結構役に立つじゃねぇか!」


「そうですね。俺達は楽が出来て2階層にいけるなんて、ラッキーですね。」


「そうだな!」


俺の横で自分達が押し付けた戦いなのにふざけたことを抜かしている。俺は少しイライラしながら氷室君達の戦いを見つめる。

コボルト3匹を無難に倒した4人は最後に残ったハイコボルトに する。さっき同様に、火野君が先頭で、松宮さんが牽制するため弓で攻撃をするが、矢はコボルトに弾かれている。そんな中に火野君は大楯を持って突っ込んでいきコボルトの攻撃を受け止めようとするが、攻撃を受け止められず、大楯ごと体が流れていく。神崎さんと氷室君が斬りかかるがハイコボルトの毛皮に邪魔されて少ししかダメージを与えられないでいた。それを見ていた柄の悪そうな男達は少し動揺していた。


「兄貴、あれ、そろそろヤバいんじゃないんですか?」


「そっ、そうだな。おいっ、オッサン。お前何とかしてこいよ。」


「「そーだ、そーだ!」」


「「「行ってこいや!」」」


何かコイツらに言われるのは無性に腹が立ったが、4人を放っておくという選択肢は無かったので助けに行くことにした。


「あのオッサン。マジで行きやがった!」


「「「ギャハハハハハハ!」」」


「鞘に入ってるからてっきり日本刀かと思ったらプッただの木刀かよ。あんなのでどうするつもりなんだよ?」


等と柄の悪い連中は言っているのが放っておこう。


「でも、木刀なんかで大丈夫なのかしら?」


「さぁね?でも、ここは黙って見てみようじゃないか!」


「わかった!」


神崎さんと松宮さんは俺の武器が何なのか直ぐに分かったようで不安がっている。まぁ、普通ならそうだと思う。何しろ木刀なのだ。基本木刀は、練習の時に使うものであって、実戦では使われることはないと言ってもいい。

まぁ、そんなことはどうでもいいか。俺は木刀を片手で持ち中段に構えを取る。すると、ハイコボルトは自分の持っている武器で攻撃を仕掛けて来るが、俺はその攻撃を木刀で弾き飛ばす。ハイコボルトは、自分の攻撃を弾き飛ばされたのが余程悔しかったのか「グルルルルッ」と唸っている。更に、後ろからは、「「「「おおっ!」」」」と言う驚愕の声が聞こえてくる。ハイコボルトは、俺の間合いの前でジャンプをし上段から剣を振り下ろしてくる。俺は、半身を反らして回避し、振り下ろされたハイコボルトの剣の根元目掛けて木刀を振り下ろす。「キーン」と音を鳴らし、ハイコボルトの剣は根元から真っ二つになる。それを見たハイコボルトは、後ろに大きく飛び、俺との距離を取る。


その頃、後ろでは、


「何で木刀で剣が折れるのよ!」


「意味が解らん。」


神崎さんと松宮さんが、話をしている。


さて、ハイコボルトは、剣を俺に斬られ距離を取る。だが、これ以上長びかせる気がないのでサッサと終わらせることにする。俺は木刀を鞘に納刀し、距離を縮地を使わずに距離を詰める。ハイコボルトに接近した俺は、抜刀術を使い攻撃をする。攻撃を受けたハイコボルトは、後ろに倒れて動かなくなる。少し待つとハイコボルトは、アイテムをドロップして消えていった。


「すごいです。サイガさん。本当に倒してしまうなんて!」


「あなた、なかなかやるじゃない!」


「コラッ、美桜。そんな言い方失礼じゃないの!すまないね。美桜はこう言ってるが本当は感心してるんだよ。」


パチパチと火野君が手を叩いている。要は、凄いと思っているのであろう。


さて、後はドロップ品の回収である。コボルト3匹から魔石が、3つとコボルトの持っていた剣が1つ、コボルトの毛皮が2つ、ハイコボルトからは魔石が1つとハイコボルトの毛皮が1つドロップしていた。


鉄の剣

作りはそこまでよくない。


コボルトの毛皮

コボルトからドロップした毛皮。防御力は高くない。


ハイコボルトの毛皮

ハイコボルトからドロップした毛皮。コボルトの毛皮より防御力はある。


俺達が、ドロップ品を回収していると、宝箱が出現する。


「ねぇ、宝箱が出てきたよ!」


神崎さんが興奮して宝箱に詰め寄る。


「あっ、美桜。宝箱は罠があるかもしれないからちょっと待て!」


「大丈夫だって!」


美桜は一目散に宝箱に近づき、宝箱を開ける。


「やれやれ!何も起きなかったか。」


「氷室君も苦労するね!」


「サイガさん。わかってもらえます?」


「ウンウン。わかるけどサッサと行くよ。」


と、松宮さんに連れて宝箱の方に向かう。宝箱の中身は、スキルの書が2つとポーションが5本入っていた。スキルの書は、水魔法と身体強化であった。


「まさか、1階層のボスでスキルの書が手に入るなんて!」


「私達ついてるじゃん!」


「ラッキーだな。」


ウンウンと火野君は頷いている。っが、後ろから、


「おいおい。俺達の分も有るんだろうな?」


「何がです?」


「報酬に決まってるだろ?」


「何言ってんのよ。戦ってない奴に報酬なんてあるわけ無いじゃないの!」


「でも、俺達が居なかったらそもそもボス部屋にすら入れなかったんだぜ!」


「「「そーだ!そーだ!」」」


「それはそうだけど。」


「なら、俺達にももらう権利はあるよな?」


戦ってもいないのに報酬を求めるなんて、やっぱりコイツら俺は嫌いだな。このままだと恐らくコイツらは強引な手を使って奪いに来ることは容易に想像がつく。俺はともかくさっきまで戦っていた氷室君達は、疲れているだろうから、奴等の方が有利である。でも、まぁ、でも、コイツらの言い分には少しだが正しい所も混ざっている。


「話はわかった。つまりはお前達も報酬が欲しいって事なんだな?」


「当たり前だ。」


「サイガさんっ。」


氷室君は、コイツらにも、分け前をやれってことかって顔に書いてある。


「仕方ない。じゃあ、俺が倒したハイコボルトの魔石をくれてやる。これが、お前達の報酬だ!」


「えっ、でも、それはサイガさんが仕留めたんですよ。」


氷室君は信じられないといった目で俺を見ている。


「はぁぁ?それで、俺達が満足するわけないだろ?せめて半分よこせ!」


「お前達こそ何言ってるんだ?何もしてないのに報酬だけ寄越せとか馬鹿なのか?」


「馬鹿だと?」


「そうじゃなかったら分別くらい弁えたらどうだ?」


「何だと!!」


「サッサイガさん。ちょっと挑発しすぎですよ。」


柄の悪そうな連中を見てみると顔を真っ赤にしており今にも頭から湯気が立ち上りそうである。ちょっと、挑発しすぎたかなと反省する。


「はぁぁ!分かった。じゃあ、ハイコボルトの毛皮も付けてやるからそれで諦めろ!」


「ちょっ、良いんですか?」


「良いの!」


「はぁ~!ふざけんなっ…」


俺は、柄の悪そうな連中に少し殺気を放ってみると文句を言おうとしているのを黙らせる。


「いいよな?」


再度、柄の悪そうな連中に確認すると、全員がブンブンと言わんばかりに頭を上下させている。


「サイガさん。何かしたんですか?」


柄の悪い連中に殺気を放ったがそれは内緒にする。


「いや。何もしてないよ。それよりアイテムを回収してしまおうか!」


「はい。ところで、サイガさんの取り分はどうしましょうか?」


「俺の取り分は要らないから、君達が貰っていいよ。」


「えっ、でも、そんなわけにはいきません。」


「じゃあ、ポーションを2つだけ貰ってもいいかな?」


「それだけで良いんですか?」


「良いの良いの!」


「分かりました。ては、どうぞ!」


俺は、ポーションを2本受け取るとリュックの中に入れる。氷室君達も回収が終わったので皆で下の階層に降りていく。

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