視力がないわたしは恋をする

三上 蒼太

第1話「出会い」

——4月8日——

 少しずつ桜が咲いてきてポカポカと春の陽気になってきている今日この頃。

 視界を左にやると多分フェンス越しに見えるピンク色の何かはおそらく桜なのだろうか。

 

「去年はもう少しよく見えたんだけどな……」

 1ヶ月後この木は、緑色の葉をつけるのだろう。

 だけど、1ヶ月後私はまだこのフェンス越しに見える木についているであろう葉の色を目視できるのだろうか……。

 今も少しずつ視力は失われている。

 

 ——網膜色素変性症——

 4000人から8000人に1人と言われる割合で起こる難病の一つだ。

 遺伝性、進行性の病気で視力の低下は遅らせられても治す方法は現代医療では今のところない。

 

 だが、別に私はこの病気を恨んでいるわけでも悲しんでいる訳でもない。

 

 ただ1つ心残りがあるなら…

 好きになった人の顔を1度でいいから見たかったことぐらいかな……。

 

 なんて、今更そんなことを思ったってしょうがない。

 私はこの病気と付き合っていくって決めたんだから。

 

「まもなく1番線に列車が参ります。危ないですので黄色い線の内側にお下がりください」

 こんな、悲しい自己紹介をしている間に毎日私が通っている駅のホームに着いてしまった。

 

 言い忘れていたが今日は私が通う

 私立 風嵐高等学校の入学式だ。

 今年は私が新入生ではなく新入生を迎える側となって入学式に望むのだ。

 

 ファーンと音を立てながら、列車が駅のホームに入ってくる。

 

 その時私の背中にドンッと衝撃が走った。

 人と当たったのだ。

 

「……え?」

 

 目がよく見えなくてもわかる。

 これ電車に衝突して死ぬやつだ……。

 体が前に押し出され電車の風きり音が私の耳の目の前にくる。

 

 走馬灯まで見えるが走馬灯にすら霧がかかったかのように見えにくい。

 目が見えないと走馬灯すらまともに見えないのだ。

 

「うわ!危ねぇ!」

 

「え?」

 

 走馬灯が遮られ、私の体の前から腰にストップがかかった。

 ギィィと電車がホームに止まった。

 

「……生きてるの?」

 

 へなへなと足が地につき、私は腰が抜けてしまった。

 

「大丈夫か?」

 

 正気を取り戻したあと私の走馬灯を遮った声が聞こえた。

 

「だ、大丈夫……です。ありがとう……ございます

 

 全く大丈夫では無い。

 今も心臓がバクバクしているし、冷や汗が止まらない。


「いやー危なかった!あと少しで死んでるところだった」

 

 やけに軽くそうに助けてくれた人はそう言った。

 何はともあれその人は命の恩人なのだ。

 感謝はしてもしきれない。

 

「お、それよりそれうちの高校の制服じゃん。俺は池上涼介。1年。そっちは?」

 

 少なくとも人が死にかけているのにそれよりではないだろう。

 ハァハァと息が切れていたので息を整えてから私は答えた。

 

「……2年の若松雪よ。さっきはありがとう」

 

 しっかりと姿は見えないが私より全然身長が大きい。

 

「へーじゃあ先輩か。身長的に1年生かと思ったよ」

 

「身長的にって……女子じゃ1年生も2年生も身長はあんまり変わらないわよ」

 

「あれ?そういうもんなの?」

 

「そういうもんなのよ」

 

 こんなことをしているうちに電車は発車ベルを鳴らして今にも出ようとしている。

 

「って、やっべ。ほら!先輩(仮)!これ乗らないと遅刻確定だよ!」

 

 腰が抜けてる私の手を引っ張り強引に電車のドアまで引き寄せられる。

 

「ちょっと!何が先輩(仮)よ!正式に先輩だわ!」

 

 こんなに明るい会話久々にした気がする。

 私やっぱり好きな人の顔はしっかり見たいと思ってしまった。

 

 

 

 こんにちは三上蒼太です。

久しぶりすぎてとても気まずいです。

まだ僕のことを覚えてくれる人がいてくれたらとても嬉しいです!

初めての人は初めまして!

今は晴れて高校三年生になりました!

少しすつまた投稿していくのでよろしくお願い致します!

 レビューや感想いただけるととても嬉しいです!

 

 

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視力がないわたしは恋をする 三上 蒼太 @koushien

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