第7話 レアロイド家の女:3
「へえぇぇ...また、変化なしだぜ...つまんねぇ」
「レーダーから目を離すなバカが。」
レーダー観測員の愚痴を火器管制要員がたしなめる間も、慎重にデブリを避けるために神経を研ぎ澄ませている操舵手はふいに力が抜け、ため息をついた。
「静かにしてくれ、集中しきれんだろ。」
「ったってよ、今んとこなんも無しで暇なんだぜ?こんな狭いとこに五人もいて面白いことは何もなし!」
GMCのファーストモーヴァーガンシップは全長30メートルにそれなりの数の武装と装甲を施したせいで、コックピットが非常に狭くそこに五人の大の男と機材が詰め込まれているため、非常に窮屈なのだ。
その上、ただ席に座って自分の担当することだけを、ただ黙々とやらされるとあれば、中でも一番若いレーダ観測員にとっては退屈この上ないだろう。
「フン、何もないというのはラッキーなことだぞ?何せこんなすっとろい船では機動兵器相手には良いカモだからな?」
年嵩で経験豊富な艇長が冗談めかして言った。しかし、実際彼は完全に冗談のつもりで言っているわけではない。彼はこの船に長く勤めているからこそ、機動兵器相手に煮え湯を飲まされ、殺されかけたことはざらにある。
ましてやこのように機動兵器が身を隠しやすいデブリの多い場所では...
「そういうもんすかね?っても俺の親父はガンシップで多くの戦場を渡り歩いて敵を倒しまくって活躍したって言って...」
「活躍とはいってもこの船が活躍するのは船の護衛とかで敵と率先して戦うとかじゃないぞぉ?」
通信手も便乗して揶揄いつつ観測手をたしなめる。
彼は若く未来があるが、こういう風に危険に飛び込みがちだ。もともと彼の希望はコンバットアーマーのパイロットで最前線だが、そこまで才能がないゆえにこの船に配属された。
いずれ、ここで経験を積んだ彼は前線に配属されることになるだろうが、配属された以上はそれまでにしっかりと戦場を生き延びる心得を教育しなければいけない...
『こちらは“ピオリア”、“スカウト1”応答せよ。』
突如としてよく通る声の怜悧な印象を抱かせる女性オペレーターから通信が入る。
「...?こちら“スカウト1”聞こえてる。定時連絡の時間はまだだぞ?」
会話を中断し、怪訝そうに少し後方にいる“ピオリア”からの通信に耳を傾ける。
『定時連絡ではない。アナタたちの周辺に高速接近する機影があるわ、すぐに確認して。』
コックピット内部に、ピリッとした緊張が走った。
それを聞いた瞬間、反射的にレーダーに目を向けた観測員が皆の視線を一身に浴びながら慄くように言った。
「何も、映ってないぞ?」
「なに!?......ECMか!外部カメラを直ちに確認せよ!火器の用意を...」
異常を感じた艇長の指示は迅速で的確だった。しかし、彼の言葉がそれ以上に続くことは無い。
コックピットを、否ガンシップごと凄まじい熱を持つ光芒が貫いたからだ。
彼らが死を感じる間もなかったことが果たして幸運なことかは分らぬが、ただ言えることは、このデブリ塗れの宙域にまた一つの鉄屑が加わったということだ。
―――――
『どう?どう!?今の手際!結構鮮やかだったでしょ!?』
キンキンと耳障りな女の声が通信越しにコックピットに響き渡る中、大量の銃弾や砲弾を掻い潜りながらもう一つのガンシップに高速で近づいていく。
彼にとっては武骨で見るからに鈍重なGMCのガンシップが半狂乱になって撃ちまくる銃弾よりも彼女の声は鬱陶しい。
わずかな脅威にもなりえない敵よりも、うるさい味方のが迷惑と言うのは何とも変だと考えながら、左手の充填が完了したレーザーライフルを撃ち込み、沈黙したガンシップに右手のライフルを撃ちまくり、止めを刺した。
彼らのようなアイギスパイロットにとってこの程度何の脅威にもなりえず、撃破したところで何の達成感も無い。だというのにこの女は...
『ねえ?何かいってよ!?』
しかも極めつけに隣の肩に首がもげそこから綿の代わりに飴玉をこぼすクマのぬいぐるみのエンブレムをあしらったアイギスを駆るこの女は非常に騒がしく、戦場の高揚にも浸り切れないのだ。
「ッチ...るせえぞクソアマがお前の腕がいいのは分かってんだから、いい加減静かにしやがれ。」
うなだれながらマイクにそう言ってやるが、座席の機械と首後ろがチューブで繋がってるせいで僅かに引っかかるのがまた彼を苛立たせる。
暗黒の真空中をもう一つの鋼鉄の体でいくら飛び回ったところで彼女の声からは逃れられない何故なら彼女は味方で連携のためには通信を切るわけにはいかないからだ。
「このまま、輸送船までかッ飛んで行ってさっさと沈めるぞ。こんなクソ退屈な仕事にオレ達を出しやがって...」
『良いじゃん簡単なら?だってそれだけでもアタシたちの価値の証明にはなるわけだし?』
何だそれは?俺達の価値などアイギスのパイロットであるというだけで十分、くだらん話だ。
首から血を流すプーフと呼ばれる旧時代の髪型をした美しい女性のエンブレムをあしらった赤と白の彼の愛機は、思うがままに動き、煩わしい物から彼を遠ざけてくれる。
『な、アイギス!?く、来るな!』
進行方向上にいた敵艦の直掩機と思しきコンバットアーマーが右手のマシンガンを撃ち放つのを悠々と回避し返す刀で銃弾を叩き込み、撃破するころには敵艦が目視で確認できる...
「さっさとそいつで叩き落せ!」
『ハイハイりょーかい。』
隣の女が両手に持つ長砲身のプラズマレーザーキャノン砲にエネルギーを充填し、GMCらしい図体ばかりがデカい輸送船に狙いを定め、引き金を引かんとする...
「させるかッ!!」
その時、二機のアイギスに向けてロックオンもそこそこに、素早く両肩と背中に装着されているコンテナから大量にミサイルを発射した。
閉じる蕾めいて規則的に二機を囲うようにミサイルが食らいつく。特に長砲身の高威力プラズマライフルを装備している黄と灰色のアイギスに重点的に向かっていく。
攻撃を中断し、ラピッドアクセラレーションを用いてジグザグにその場を飛び退き、ミサイルから逃れる。
「んもう!逃げられた!」
『落ち着いて、奇襲を防げたんだから上々よ。』
敵の紅白色で目立つアイギスのライフルが機体に命中し粒子エネルギーシールドを減衰させる。咄嗟に右手のライフルを敵に向けて追い散らそうと連射するが、掠りもしない。
「くッ...素早い。こいつら、明らかに海賊って風体じゃない...これ企業の精鋭じゃない?」
『そのようね。データベースと照合...フラマトムの外部交渉部門所属のアイギスね。紅白のが“マリー・アントワネット”、パイロットは“リベレーター”ヒット&アウェイを得意とする危険な相手よ。』
ナタリアさんの説明と共にHMDに機体とパイロットの情報が映し出される。
フラマトム製の中量アイギス、“オネゲル”をベース機とし、両肩にECMメーカーを装備し、レーザーライフルや突撃銃、左背部に分裂ミサイル、右には軽量グレネードランチャーで武装した攻撃力の高い機体構成...
交渉部門部隊のナンバー3、リベレーターの性格は傲慢で自信過剰、自分が最強の機動兵器を任されているというプライドと自負によってアイギスパイロットはこういう性格になりがちだ。
『片方のも同じくフラマトムのアイギス、“アディクト”ねパイロットは“ケイト・クロウチル”とにかくあのプラズマレーザー砲に注意して命中すればひとたまりもないわ。』
同様に情報が表示されそれに素早くソフィアは目を通す。
頭部のあるべき場所に申し訳程度にカメラが付いた平べったいレーダーに置き換わっており、あたかも首のない幽霊めいたシルエットが特徴的な機体。
こちらもフラマトム製アイギス。しかしこちらは軽量機“タイユフェール”をベースとしており、長砲身のプラズマレーザーキャノン砲を主軸に両背には推力とエネルギー兵器を強化する外付け式の追加コンデンサ、両肩には粒子エネルギーシールド増幅装置を装備した一撃離脱型の機体構成。こちらのパイロットはナンバー4のようだ。
『それと、ケイトはフラマトムの最適化手術を受けていて情緒が不安定...行動の予測は困難で危険な相手よ、注意を。』
またこの手のいやーな話。
アイギス適合率を高めるために、パイロットに対して企業が改造を施して戦闘にさらに最適化する...といったことはこの業界ではありがちな話である。
『ちょっと待てよ!?フラマトムの交渉部門の精鋭って、首狩り部隊じゃねぇか!そんなのに勝てるわけねぇだろ!?割に合わねえ!』
泣き言を叫ぶマーカスの四脚アイギスをハンフリーの重量機が小突いて言う。
『今更ガタガタ抜かすな!どっちにしろここを切り抜けなきゃ死ぬ。気合入れな!嬢ちゃんに良いところ見せるんだろ!?』
フラマトムの交渉部門のアイギスは何事も質を無視して数を揃えるGMCのアイギス部隊と違って少数精鋭のエースで、あの悪趣味なエンブレムをあしらった機体を恐れた兵士たちによって首狩り部隊とあだ名されている。
『ち、ちっくしょう...やってやれば良いんだろ!?やるさ!』
ハンフリーの一喝で何とか気を持ち直したマーカスがスナイパーキャノンを構える。
そこへ、アイギス部隊の後詰か高機動型のフラマトム製コンバットアーマーが到着し、両手に装備したレーザーライフルを撃ち放つ。
『クソが、船に近づけるんじゃねえぞ!』
“ピオリア”の各所に設置された対空重機関銃が起動し、火を噴き敵を寄せ付けないようにしている間に、船長が怒号を飛ばし、慌てて周辺に展開していた直掩のGMC製重量級コンバットアーマー“サンバーン”が高機動型を追いかける。
『良いかガキ共!アイギスの数はこっちが上なんだ。ガチに相手をせずに追っ払う程度で構わん!とにかく“ピオリア”が次のワープポイントまでたどり着ければいいんだ。それまでに沈まないようにしっかり守れよ!』
「簡単に言ってくれるけどねぇ...」
私は“ピオリア”の甲板を蹴って宇宙空間に飛び出す。それと同時にハンフリーさんの“スティングバイト”も飛び立ち、私の前に出る。
『よし、全員かかってこいやァ!!』
彼女の機体は“St.マルタ”と同じく“ソリッドフォックス”をベース機としたずんぐりむっくりで堅牢堅固な重量機であり、砂色とデザートピンクに塗られた機体は右手に無反動砲と左手には直付け型のガトリングガン、背部には大型のミサイル垂直発射装置と両肩にはジャミング弾ランチャーを装備しており、私よりも前衛寄りだ。
ハンフリーさんが威勢よく左腕に装備されたガトリングガンを振り上げ、弾丸をまき散らす。
慌てて回避に徹する敵コンバットアーマー部隊のうちいくつかが私の放ったミサイルや対空砲火につかまり爆散する。
それでもなお、ひらひらとトリッキーに舞い数発弾丸を受けつつもさらに“ピオリア”に接近する高機動型のコックピットに徹甲弾が突き刺さると、力が抜けたようにバランスを崩し明後日の方に飛んで行った。
『よっし!どうだ、まずは一機片づけたぞ!』
「ナイスマーカス!その調子でよろしく!」
マーカスの“ディアハンター”はGMC製中量機の“フリーダムイーグル”をベースとし、スナイパーキャノンを装備した狙撃戦重視の中量四脚で、頭部だけはHCGのスタイリッシュな狙撃専用パーツに置き換わっている。
支援機の私よりも更に後方から援護射撃を行う彼の機体はそこまで腕が立つわけでもない上に臆病で消極的な彼に適しているが...
前衛、支援機、後衛機とGMC側にはバランス良く揃っている上に数自体もフラマトムの首狩り部隊よりは多いが...正直に言って、私含めてこの場に揃っているパイロットの練度はお世辞にも高水準とはいかない。良くて中堅だが、マーカスなんかは明確に下位のパイロットととして扱われている。
果たして数的有利だけでどこまで熟達したアイギスと渡り合えるのか――
(ま、ネガティブに考えても状況は好転しないし、気合入れて当たればなんとかなるでしょ!)
思考を前向きに切り替えて敵に向き直る。悪く考えたところで状況は好転しない。こういうヤバ目な状況に陥ったのは今日が初めてではない。それこそ昨日だってかなりヤバかった。しかし乗り切り生き残ってきたのだ。
(だから今回も大丈夫!行くぞ私!)
『ちッ、GMCのカスどもが数を揃えたところで鬱陶しいだけだぞ...』
『そう言うこと。だからさっさと死んじゃえッ!!』
対空砲火に混じる曳光弾の輝きによってハリネズミめいて弾幕を貼る輸送船に、周囲に浮かぶデブリを利用しながら再接近しつつ、“アディクト”が再びチャージ完了されたプラズマライフルの引き金を引く。
『クソッさせるか!!』
おっとり刀で武装を乱射しつつ駆けつける直掩の“サンバーン”が何機か向かってくる。
“アディクト”をカバーするためにリベレーターは“マリー・アントワネット”を盾にしつつ、ミサイルを放ちながら両手のライフルを撃ち放つ。
敵は突如射線上に割り込んだ“マリー・アントワネット”に怯んでる間にこちらが放った弾丸が次々と突き刺さり、幾つかの火の玉となったが、あちらの攻撃はシールドに阻まれ装甲に傷一つつけることは無い。
『雑魚が...あん?』
コックピット内に警報、舌打ちを一つ咄嗟に後方に向けて機体を後方に飛び退かせると先ほどいた場所を360ミリの砲弾が通過。
ガガガッと更に雨のように上方向からガトリングガンの弾が降り注ぐ!
『ちぃッ!鬱陶しいな!』
『鉛玉の味はどんなだァ!?アタシらに喧嘩売ったこと後悔しな!』
敵機からの通信がうざったい。上にはデザートピンクの重量機...確か“スティングバイト”低レベルのパイロットだが——
『そこっ、逃がさないよ!』
“St.マルタ”がデブリの影から飛び出し、両背部と両肩の連動ミサイルを一斉に発射、計48発のミサイルが殺到する。
(二対一では厳しいか...?)
『ダイジョブ?手貸そっか?』
コイツに頼るのは生理的に無理だ。
『黙ってろ、良いからてめえは輸送船を沈めろ。』
ECMメーカーでミサイルのロックオンを阻害し、標的を見失ったミサイルを大量のデブリの間を超高速で飛び回り回避する。
そのまま捉えられぬように縦横無尽に高密度デブリ帯の中を“マリー・アントワネット”は飛び回り、GMCのアイギスを翻弄しつつ時折攻撃を加えていく。苦し紛れに放たれる攻撃が時折機体を掠めるが、エネルギーシールドの前に阻まれ未だに無傷だ。
アイギスの自家製の欠点以外の弱点を上げるとすれば、主にエネルギーシールドで防ぎきれない大質量での攻撃だ。
そして敵は鈍重で、この高密度デブリ帯の中をオレのように飛び回って近づいてくることは出来ないはずだ。
このまま散発的に攻撃を続け、じわじわと削りながらこちらに引き付ければいいだけだ。
「クソっ、やっぱ言うだけあって強いしめんどい!」
それにこちらが動きにくい上にリスクもある高密度デブリ帯に突っ込んでそこから半ば一方的に攻撃する嫌らしさ...そして重量機でも大ダメージを受けるであろうデブリ帯に、さほど装甲も厚くない中量機で突っ込んでいくその判断力とリスクをものともしない豪胆さは全く油断ならない。
『落ち着け、この調子で攻撃を続ければとりあえずは押し切られることは...』
押しているようで今一つ決めきれない状況に焦りがにじんでいるハンフリーさんの言葉を遮って通信が入る
『オイ!どこで何やってやがる?こっちはまあまあ被弾が増えてそろそろマズい!イカレ女のキャノン砲を止めないと持たねぇぞ!』
『クソおッ!敵の数が多い!何機居やがるんだクソッ、ちくしょう!?』
船長の怒声とマーカスの悲鳴が同時に聞こえ、向こうのひっ迫した状態が伝わってくる。
『まずいってもこいつを抑えとかなきゃだし、二手に別れるわけには...』
「そうは言ってもこのまま一機にかまけてたらジリ貧...ッ!」
言い争ってると敵の放ったレーザービームが機体を掠め、装甲の一部を溶解させた。
「こいつ...とにかく、ハンフリー大尉は“ピオリア”の援護に!こいつは私が何とかする!」
『ちょっと正気!?危険すぎるわ!』
「ナタリアさんは静かにしてて!ていうか船が沈んだらナタリアさんだって死んじゃうでしょ!」
『それは、そうだけど...』
『クソッタレ...迷ってる暇はないんだ...ッ』
二人して言い争っている間に、判断を悩む悔しげな唸り声が聞こえる。だが、そうしている間にも通信からは切羽詰まった声がひっきりなしに聞こえてくる上に、敵はこちらを攻撃し続ける。
『なんでも良いから援護してくれ!』
『あーうるせえぞ!ヘタレマーカスめ、本当だったらお前がそいつらくらい何とか...クソ!ソフィア、悪いここは任せるぞ!』
救援を求める声に後押しされたハンフリーはそう言い捨てるや否や、“マリー・アントワネット”に向けて置き土産と言わんばかりにミサイルを撃ち放つと、両背部の垂直発射装置をパージし身軽になって転進する。
「ええ、でもこれで一対一かあ...」
時折、戦闘の衝撃を受けて流れてくる巨大なデブリを危なっかしく回避しつつソフィアはここからの対応を決めかねていた。このままミサイルを垂れ流すだけではいずれ限界が来る。
『何か考えがあるなら聞かせて欲しいのだけど?無策ってことは無いでしょう?』
「あー...うん。ま、何とかなるでしょ?こういうタフな状況をこなしてこそ私も進歩できるってものじゃない?」
正直言って単機でアイツを何とか出来るかどうかは、かなり望み薄だが精一杯の虚勢を張ってナタリアさんにそう答えた。
『また適当なことを...はあ、しょうがないわね...くれぐれも、気を付けるのよ?無茶はしないようッ!?』
「ナタリアさん!?」
『気にしないで!ちょっと揺れただけよ。とにかく無茶はしないで頂戴ね!』
「...了解!」
保証はできなくても言うだけ言ってみる。
ここから直接確認するすべはないが“ピオリア”の状況はさほど良いとは言えないように思える。本当は一刻も早く私だって救援に向かいたいところだが——そのためには多少異常の無茶を必要とするだろう。
『ハンッまさかたった一機でこのオレとやるつもりか?二人がかりでも勝てんのに?フハッ、時代遅れの斜陽グループの癖に世界を牽引しているつもりのバカ企業は社員にも愚か者しかいねえのか?』
「ごめんナタリアさん、前言撤回。」
このムカつくクソ野郎を何とかしないことには助けにも行けない。
いつも心配してくれるナタリアさんには本当に悪いと思うけど——
『なにを言って!?』
「なんかムカつくし、一発くらい入れてかないと気が済まないから無茶してでもぶちのめすッ!」
それに、そうやって舐めた風に戦い続けるならこっちだって考えがある。いやでもマジにならないといけなくする方法をたった今思いついたのだ。
『あ?そんなノロマでどうするつもりなんだ?』
失笑交じりの驚愕は無視する。もとより無茶は上等、それにちょっと格上相手だからって怖気ずくようではお義父さんのように戦ったり、あの人のように皆を守るなんて夢物語!——
「覚悟しろッ!」
そして私は高密度デブリ帯へ“St.マルタ”を勢いよく突っ込ませた。
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