第3話「日課」

ピピピピッ!ピピピピッ!ピピピピッ!


午前3時。寝室のベッドで寝ていた焔火の枕元で目覚まし時計のアラームが鳴り響いた。


「…………ん~……」


非常に眠たそうに目を覚ました焔火は時計を手に取りアラームを止める。そしてベッドから起きあがると洗面所へと向かい、そこで顔を洗う。その後はキッチンに移動してオートミール100gを煮た物にノンオイルのツナ缶3つにメカブ、七味をかけた物を作って食べる。


「んぐ……んぐ……うまい……」


焔火はよく噛んでよく味わいながら食べた。




「───ふぃ~……ごちそーさん……」


食べ終わった後は使った食器を洗い、その後また洗面所へと行って歯を磨き、さらにその後は運動用の白シャツ(背中に風林火山の文字入り)と黒短パンに着替えて庭へと出た。


「さて……やりますか……」


そう言うと焔火は地面にうつ伏せとなり腕立て伏せを始めた。



「───998……999……1000!」


約20分かけて1000回の腕立てを行った。そしてその次は上体起こしを1000回行い、それが終わると今度はスクワットを1000回行った。



「───あ~……良い感じに筋肉が悲鳴あげてる~」


筋トレが終わると家の中へと入り、冷蔵庫から特性ビタミンジュースの入った500mlの容器を取り出してゴクゴクと飲み出した。


「んぐっ……んぐっ……プッハァァァ~……!!」


飲むなり顔を歪めた焔火。それもそのはず。なぜなら今飲んだ飲み物の中にはレモン300個分のエキスが入っていたのだから。


「……ああ~……マァ~ジ酸っぺ~……でも疲労回復……さぁてと……んじゃ行くとしますかね……」


焔火は容器を冷蔵庫に戻して玄関へと行き、運動靴を履いて外へと出た。そしてそのままどこかへと走り去って行った。




「───ハァ……!ハァ……!」


現在焔火は渋谷にある自宅からかなり離れた江戸川区の街中を走っていた。時刻は午前4時45分。人々は皆寝静まっており周囲に自分以外の人間は見当たらなかった。焔火にとってそれはたまらなく気持ちが良かった。


「ハァ……!ハァ……!何か別世界にいるみたいでテンション上がるなぁ~!」


その後焔火は道を走って走って走りまくった。



「───目的地点まで残り5kmです」


あれから30分程走った頃、左手首に付けていたA◯ple Watchが残りの距離を知らせた。


「5km……!よし!いくぜラストスパート!!!」


焔火はギアを上げて迅速旋風かまいたちの如く猛スピードを出した。


「な、何じゃあれは……!?」


犬の散歩で外を歩いていた老人は人外な速度で走る焔火をたまたま近くで目撃して思わず目を丸くして腰を抜かした。


「ハァッ……!ハァッ……!」


走る。走る。焔火はとにかく走る。


「ハァッ……!ハァッ……!ゴォォォォォル!!!!金メダルゲット!!!!」


焔火は残り距離の知らせから僅か5分でゴール地点である自宅へと辿り着いた。


「目的地点に到達、走行距離50km、走行時間1時間26分6秒、お疲れ様でした」


A◯ple Watchからランニング終了の音声が流れた。


「ハァ……ハァ……ふい~…………」


常人であれば50kmを走った後などヘロヘロでマトモに動けないはずだが焔火はケロッとした様子であった。その後彼は家の中に入り、特性ビタミンジュースで水分&ビタミン補給をした後に庭へと出て、そこに吊るしてあったサンドバッグを殴ったり蹴ったりし始めた。


「シュッ!シュッ!ウルァッ!!!」


叩く度にバァンッと強烈な音が鳴り響く。焔火は186cm、75kgと細身の体型であったが、その体から繰り出されるパンチ、キックはヘビー級をも軽く凌駕する程の威力であった。


「シュッ……シュッシュッシュッ!」


ただガムシャラに殴る蹴るのではなく所々にフェイントを入り混ぜたりリズムをつけたり強弱をつけたりしながら行った。




「───ウルァッ!!!」


叩き始めて40分程経った頃。最後の一発くれてやるよオラ!と言わんばかりの強烈な右ストレートを放った焔火。するとその強打を喰らったサンドバッグは破裂した。


「ああ!!またやっちまった!!……まぁいっか」


焔火はサンドバッグが壊れたところでトレーニングを終了とさせシャワーを浴びるため風呂場へと向かって行った。

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