第2話「不穏」
「ねぇ、燈ってさ~兄弟とかいるの?」
「ああ、姉が5人いるよ」
「5人!?やっば!そんなにいんの!?ちなみにお姉さん達っていくつ?」
「1番上が27、2番目が25、3番目が23、4番目が20、5番目が19」
「へ~……長女とは結構離れてるんだね~」
「ええ、そうなんだすよ」
現在焔火と水咲姫は新宿にある喫茶店の席に座って楽しそうに会話をしていた。
「そっか~……姉が5人か~……」
そう言いながら水咲姫は自身の近くに置かれていたアイスコーヒーを口に運ぶ。そして焔火の方はサンマバーガーをかじりながら彼女に聞く。
「水咲姫は?兄弟いんの?」
「うん、1個下の妹が1人」
「ほえ~、仲良いの?」
「ん~……まあまあ」
「そっか~」
2人はその後互いの事をもっと知るために色々と語り合った。
「───じゃあ俺こっちだからさ、また明日な」
「うん、また明日ね」
あれから数時間が経ち、店の外で別れの言葉を交わした2人。
「あ、ちょっと待って」
水咲姫が帰ろうとする焔火を呼び止めた。
「ん?どした?」
「連絡交換しようよ」
「ああ、いいよ」
2人はポケットからスマホを取り出しお互いの連絡先を登録した。
「……これでよしっと、毎晩嫌がらせ電話してあげるね」
「おいおい……そんなんされたら不眠症からのうつ病発症で首吊っちまうよ」
「ハハハ、冗談だっつの、それじゃあね、また明日~」
「ああ、バイビーまた明日な~」
2人は互いに手を振りながらそれぞれの家路へと歩いていった。
「───水咲姫か……面白い奴と友達になれたな~……」
あれから少し歩いて自宅に着き、玄関の鍵を開けようとしていた焔火。そんなところに背後からスタスタと何者かが近付いてく来る。
「よっ!焔火!」
「ん?」
突然後ろから自分を呼ぶ声。振り返ってみると上下黒のスーツ姿に金髪ショートヘアの若い女性が立っていた。
「あ~!シス
焔火がシス姉と呼んだこの女性……名前は
「フフフ、元気だったか小僧?」
匙守音の問いに焔火はニコリと笑って答える。
「うん、結構元気だった、シス姉は?」
「私はまぁ……ぼちぼちかな……それより今日入学式だったんでしょ?おめでとう、はいこれ御祝儀」
匙守音はスーツの内ポケットから祝儀袋を取り出して焔火に差し出した。
「え?いやいいよそんなん」
遠慮した焔火。
「いいから黙って受け取れい」
匙守音はそんな彼の手を掴み、強引に受け取らせた。
「あ、ありがとう……大事に使います」
焔火はそう言いながらペコリと頭を下げた。すると彼女はそんな彼の背中を軽くポンと叩いた。
「ところでなんだけど、一人暮らしはもう慣れた?なんだかんだもう半年くらい経つでしょ?実家を出てから」
「うん、慣れたよ」
「そう……ちゃんと毎日規則正しい生活してる?夜更かしとかしてない?」
「うん、毎日9時……遅くても10時には寝てるよ」
「フムフム、感心感心……ご飯は?インスタントとかばっかりじゃなくてちゃんとした物食べてる?」
「もちのろん、毎日自炊した物食べてますよ」
「フフフ、なら良かった……さてと……焔火の近況を知って安心したとこだし……私そろそろ行くわね」
「え?ここまで来たのに中入ってかないの?お茶と羊羹でも出そうと思ったのに」
「ごめん……そうしたいのは山々なんだけどさ……私これから仕事なのよ」
「ええ?この時間に?……もしかして……事件?」
「ええ、ま、そんなとこ」
「そっか……忙しいのにわざわざ来てくれてありがとう……今度来た時はゆっくりしていってよ、ご馳走でも作るからさ」
「フフ、楽しみにしてる……それじゃあね」
匙守音は焔火を軽く抱き締めた後に手を振りながらその場から立ち去って行った。そしてそんな彼女を視界から消えるまで見送った後に彼も自宅の中へと入った。
「───ねぇねぇ、何があったの?」
「何かね~若い女性が殺されたんだって~」
「嘘!?それで!?犯人は!?」
「まだ捕まってないらしいよ~怖いよね~」
渋谷のとある路上にザワザワと群がっていた野次馬達。彼らの付近には黄色の規制テープが張られており、その先で複数の警察官達が現場検証を行っていた。
「はいはい、ちょっと失礼通してね~」
焔火と別れ現場へと着いた匙守音は野次馬達をかき分けてテープをくぐった。そしてすぐにこちらに背中を向けていた1人の白髪ショートヘアの女性が視界に入ったので声をかけた。
「みおち~ん」
匙守音がそう呼ぶと向こうはすぐに彼女の方に振り返った。
「あ!雷光警部!」
みおちんと呼ばれて反応した彼女の名前は
「もう~遅いですよ~、何してたんですか?」
そう言いながら匙守音の方へと近付いて来る白鳥。
「めんごめんご、ちょっと寄り道しててね……それで?仏様は?」
「こっちです、来てください」
匙守音は彼女に案内されてついていく。
「こちらです」
案内された先にあったのは首から上と上半身と下半身、それから四肢を切り離されたグレーのスーツ姿の女性の死体だった。また、付近の地面は各部位を切断された時に出たと思われる血液により真っ赤に染まっていた。
「これは……随分大胆な犯行ね……」
匙守音は険しい顔を浮かべつつ、上着のポケットからゴム手袋を取り出して両手にはめた。そしてその場にしゃがみこみ死体を調べ始めた。
「…………どの部分も切断面が綺麗ね……何度も切り付けた様な跡がない………1発でスパッといってるわ……相当切れ味の良い刃物を使用したのね……」
「切れ味だけの問題じゃありませんよ、相当な捌き技術がなければここまで綺麗に人体を切断する事なんて出来ませんよ……」
「かもね……犯人は外科医……それか肉屋とか……?ところでみおちん、被害者の身元は割れてるの?」
「ええ、彼女の鞄に入っていた免許証等から容易に特定出来ましたよ、名前は細川和世(ほそかわ かずよ)25歳、職業は銀行員です、あとそれから警部……これを……」
白鳥は上着ポケットから1枚のメモ用紙の様な物を取り出して匙守音に差し出した。
「これは?」
「死体の側に添えられていた物です」
匙守音はそれを受け取って目を通す。そこにはこう書かれていた。
こんにちは、下等な警察諸君。
美女のバラバラ死体堪能してもらえたかな?
おっと申し遅れました、私の名前は切り裂きタカシ。
美女を凄惨に殺す事に快楽を感じる超絶怒涛の変態です。これから日を追う毎に犠牲者の数は増えていく事でしょう。それが嫌ならとっとと私を捕まえる事ですな。まぁ国家の犬如きには到底無理な話でしょうが。
「…………切り裂きタカシ……?舐めたマネを……」
匙守音は眉間にシワを寄せながら用紙をクシャッと強く握りしめた。
「警部……これからどうします?」
「……あなたは付近の防犯カメラの解析をして怪しい奴が映ってないか確認をお願い、私は被害者の人間関係を洗ってそれからこの周辺で聞き込み捜査をするわ」
「分かりました、何か分かった事があったら連絡します」
白鳥は匙守音の元を離れた。
「待ってなさい変態殺人鬼野郎……即効捕まえてブタ箱にぶちこんでやるわ」
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