第35話side:師走三月 かっ飛ばす、ラウンド1

 柄の端で突いて、エイプを上から地面に叩き落とす。


『ガアァ!』

「残念」


 カウンターと言わんばかりに、尻尾で攻撃してくるエイプ。もちろん、そんなの予想の範囲内だから、逆に尻尾を切り飛ばしてやる。


「私って、存外強かったみたいね」


 なんて、魔法を撃ち、その余波で宙に浮きながら呟く。

 今まで、207ダンジョンに深くまで潜ることはしなかった。二世代の世界最強が惨敗した、なんて聞いたら、誰でも行かないだろう。それに、私はふみに会うために攻略者になったから、死ぬわけにはいかないからってのもある。まあでも、いつかは行く予定だったけど。

 だから、これはいいチャンス。207ダンジョン完全攻略者兼出身のふみが、この特異化イレギュラーエイプは、最下層の主と同じ強さって言った。つまり、こいつを倒せば、私は207ダンジョンの最下層にも通用するってことになる。

 まあ、辛勝じゃダメなんだけどね。


『グガアアアアア!!』


 火炎魔法《エクスプロージョン》を受けても無傷なのは予想済み。


「飛んでくるのもね!」


 突っ込んできたエイプを槍で受け流し、思いっきり蹴って上下を入れ替える。


「《嵐牙》」


 一応、全属性使える私は、一番得意な魔法は嵐属性だ。

 《嵐牙》は、嵐魔法の代表魔法、《テンペスト》を風刃で作って、それを細く圧縮したもの。ちなみに、《テンペスト》は嵐を作る魔法。


『ぐぁ!』


「うっそ!」


 エイプが、腕を魔力で強化したと思ったら、そのまま私の《嵐牙》を殴って拡散、そのまま食べやがった。


「何あいつ!」

『ギャアアアアアアアア!』


 背中を爆発させて、こっちに突っ込んでくるエイプ。高い魔法耐性を活かした特攻により、物凄い速さで突っ込んでくる。

 ふざけた性能しやがって!


「《風纏かぜまとい》!死ねぇ!!!」


 嵐属性の強化魔法、《風纏》を使って突っ込んでくるエイプを迎え撃つ。

 《風纏》は、その名の通り風を自分の周りに纏う強化魔法。スピードと力を上げ、纏っている風で切り刻むカウンターを持つ、かつ自由に宙を飛べる万能強化魔法。


 階層中に響くくらいの衝突音が鳴る。少しの拮抗の後、《風纏》を拡散させて、爆風を生み出した。

 これにより、エイプと私の距離が離れる。


『ギャア!』


「ふう…意外と、行けるものね」

「どーする?」


 丁度、ふみのところに飛んだ私に、ふみがそう尋ねる。


「いや、もう倒し方は理解したわかったから、大丈夫よ」


 槍を直して籠手を両手に着けながら、そう返した。私が籠手を着けた姿を見て、ふみはとっても楽しそうに嗤う。


「それが本気なんだ」

「これだけじゃないわよ」


 《身体強化》を全身にかけて、構える。

 さぁて、第二ラウンドといきましょうか!


————————————————————

どうも、作者です。

戦闘描写むずかちい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る