第33話 共闘、かも?

 エイプ。『富士の樹海』ではこの系統のモンスターしか現れない。特徴として、ゴブリンより狡賢く、群れで動いて獲物を仕留めるモンスターだ。


「ボスモンスターを倒してるとか、これ以上ないまでに最悪ね」

「うーん…低く見ても特級はあるね」


 虚空から槍を取り出すやよちゃん。3メートルほどの槍をくるりと片手で弄ぶ。


「あ、そういえば初めてだね、やよちゃんと一緒に戦うの」

「確かに。ちょっと前じゃ考えられなかったわね」


 人生何があるかわからないってね、と嗤いながら構える。

 やよちゃんの戦闘スタイルは、今持ってる槍と魔法を操って戦う、魔法戦士ってやつ。どちらかだけでもSランク並みなのに、2つ同時に扱うことで、Sランクじゃ収まらない強さになるって言われてる。


「さぁ、どうやって攻めようかしら」


 そう言いながら、下から上に槍を振るうやよちゃん。押し出された空気が細く、鋭くエイプの方に伸びて行く。エイプに当たった瞬間、大きな破裂音が響いて、エイプが食べてた物ごとエイプを吹っ飛ばした。


「やっぱり無傷ね」

「全く効いてないってわけじゃなさそう」


 ああ言う系の特異化イレギュラーってちゃんとしたダメージを与えないと反応しない。だから、特異化イレギュラーの中では倒しやすい方なんだ。だって、動かない的に自分の最大火力を当てることができるからね。

 そんな相手に、わざわざ、わざわざ!正面からやり合おうとしたやよちゃんの方が!私より!戦闘狂だと!!思うんだよね!!!私は戦闘狂じゃない!!


「どんな感じ?あれ」

「207ダンジョンの主と同じ…かそれ以上くらいかな?」


 207ダンジョンは、《第207号環境変化型ダンジョン》のことだよ。

 炎龍皇さんよりちょこっとだけ弱いって感じだ。


「おっけー、あれ倒せたら私もあそこ、攻略できるってことね」


「そうなるかな?」


「じゃ、共闘はまた次の機会にしましょ。アレは、私がやる」


「りょーかい、がんば!」


「まかせて」


 やよちゃんはそう言って、夜空のような黒い長髪を揺らしながら、前触れもなく跳んできた特異化イレギュラー化エイプを弾き飛ばした。


「類は友を呼ぶ…私も、戦闘狂ってことなんだよね!」

「私は戦闘狂じゃないよ!!!」


 遠回しに、私が戦闘狂だって言いながらエイプに追撃をかけに行ったやよちゃん。

 私は戦闘狂じゃないんだって!!


————————————————————

どうも、なんとか3日以内に出せることに安堵してる作者です。次回は師走三月(やよちゃん)視点の予定です。

次も、3日以内に出せるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。

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