第二章 目指せ地上、知らぬ間に頂上、これってどうなの?

第8話 ラウンド1

 最下層。そのダンジョンで最もモンスターが強いエリア。その中でも環境変化型ダンジョンは、一層ごとに過酷な環境が変わっていく事により、他とは頭ひとつ抜けている。さらに、《第207号環境変化型ダンジョン》は最下層だと、特級しかいないらしいから、ビクビクしながら進んだんだけど……


「あめんぼあかいなあいうえおー」


 162階層に今いる。ここまで、難なく来れた。主に会わなかったのが幸い、なのかな?あ、ちなみに今の私のステータスはこれ。


—ステータス——————————————

名前 なし

種族 不形定まらぬカタチ

レベル 178257

技術 《変形カタチツクリ

————————————————————


 ものすごくぐんぐん上がってく。多分、環境不利のバフがかかって、レベルがこんなことになってるんだと思う。特級相当になってるだろう、レッドドラゴンも難なく倒せるから、今の私って相当すごいんだろうな。

 あ、ちなみに、今の環境はマグマ地帯。ここの主は《炎龍皇マグニュードラゴ》だそう。世界最強の探索者チームは、これのせいで帰ってきたそう。


「たちましょらっぱでたちつてと」


 発声練習しながら、魔法を編む。あ、ちなみに魔法の属性は全部進化したよ。今は鑑定の魔法を作ってる。どうせだし。

 なんて、階段を探しながら探索していくと、後ろから物凄い衝撃波が飛んできた。いや、これは咆哮かな?

 発生した暴風に飛ばされないように、踏ん張る。あ、私は今人型、というかほぼ人間だよ。無属性魔法で遊んでたら、人間になる方法が見つかった。氷魔法を鏡代わりにして顔を見てみたら、すごい美少女がいた。なんかみたことあるなーって思ったら、転生する前の私だった。私って美少女だったんだなーって思ったよ。服は、人間に成れるようになった後すぐのボス撃破後の宝箱に入っていた、私の体に合ったサイズのりより一回り大きい半袖のTシャツと、ゆるい、余裕があるズボンを履いてる。

 閑話休題。

 咆哮を放った元凶を見ると、そこにはでかくて凛々しくて、どこかカリスマを感じるドラゴンがいた。そのドラゴンの周囲は、まるで隕石でも落ちたかのように地面が、マグマがめくれ返っていた。周りを見渡すと、目測だけど、半径700メートルくらいのモンスターが消滅してた。生き残ったのは、私だけみたい。

 ここで、こんなことできるのなんて、あいつしかいないけど一応念のため、鑑定(仮)を使ってみるかな。


—ステータス——————————————

名前 炎龍皇マグニュードラゴ

種族 ファイヤーエンペラードラゴン

————————————————————


 だよね、わかってた。

 炎龍皇マグニュードラゴ……炎龍皇が、こっちを見た。少し驚いてるように見えるけど。………あ、敵って認識された。

 瞬間、すごい殺気を感じて全属性の最高位防御魔法を貼る、と同時に炎龍皇が口を開けて、極大熱砲ブレスを放った。

 物凄い閃光が私の防御魔法にぶつかって、すぐ後に馬鹿でかい衝突音が轟いた。3枚くらい砕かれて、得意属性の深淵の防御魔法、《黒穴ホール》がギリギリ、って悲鳴を上げてる。


「ふむ、ためがなかったから、まあまあだね」


 これがための後に放たれてたら、今出したやつじゃ全部壊れてたな。そう考えると、これは多分様子見、かな?

 少しして、極大熱砲ブレスが消えた。開けた視界の奥を見ると、炎龍皇が獰猛に嗤ってた。嬉しいみたい。


「フフフ」


 嗚呼、私も楽しくなってきたな。そんな愉しそうに嗤ってるとこっちも楽しくなってきちゃうよ。

 炎龍皇が、翼を羽ばたせて、そらに浮く。魔力が、翼からどくどくと溢れて、それが渦巻きながら炎龍皇の周りに集まっていく。あ、飛んでくる。


「ギャアアァアアアアアアアアア!!!!」


「《地昇》」


 腕を勢いよく上に上げながら、唱える。大地魔法の《地昇》。

 偏差撃ちで炎龍皇へ向けて、地が上へ昇っていく。わかっていたかのように、右腕を振って、岩石を削り取る。


「《絶対零度の槍ランスアブソリュートゼロ》」


 どうせ砕くだろうから、腕を前に出して、砕いた隙を狙って氷の槍を放つ。氷の槍は周囲の全てを凍つかせながら、まっすぐ進む。すると、炎龍皇の周りを爆炎が包んだ。そこへ、氷の槍が突っ込んでいった。継続的に爆発している炎の空間に入っていった。


「《嵐槍》」


 ついでに、と嵐の槍を放つ。《絶対零度の槍ランスアブソリュートゼロ》の作った氷の軌跡もろとも、進む先々の全てを削り抉って進んでいく。爆炎に突き刺さった瞬間、大爆発が起きた。かなりの範囲を砂埃が包んだ。

 少しの静寂。アホな範囲の砂埃と静寂を消し去るほどの衝撃波が走る。


「くふふ、ラウンド2ツー、開始だね」

「グルルルルルルルルルル」


 私が出した触手と、炎龍皇の爪が、鍔迫り合いを演じていた。

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