第6話 戦闘狂なんかじゃないよ…?
スライムをしばらく観察してわかった。声を出す方法。厳密に言えば音出してるだけだけど。
声を出す方法は簡単。人でいう声を出す器官?っていうのをすごく簡単かつ単純に作って、そこから出してるようだ。声を出す時、スライムの体に筒状の穴が空いてるから、それが口みたいなものなんだろう。
(やっぱり声を出すならそういう器官を使った方がいいんだろうな)
人間の構造を知れたら良いんだけど、殺すなりなんなりしなきゃいけない。流石に、元人間としてはそんなことしたくないから、ゴブリンの死体を吸収する時に学ぼう。改良したら人と話せるようになる、と、思う。
(まあ、いいや。先に進もう。別に突っかかる意味なんてないしね)
向こうが気づいてないなら、どーでもいいでしょ。
あれから50階層。
「あーいーうーえーおー、かーいーうーけーおー、あーしーすーえーそー」
ゴブリンやオーク、コボルトに魔狼なんかの声を出す器官を知って、なんとか声を出すことに成功した。人型の方がいいと気づいてからは、ずっと人型で発生練習をしている。
(うーん、子音がだめなんだよなー)
なんて、ボス部屋の扉を開けながら考える。わたしが生まれた階層から50階層降りたところで下層に変わったから、ここを越えると最下層になるかも知れない。まあどっちにしても、大体このダンジョンの規模がこれでわかる筈。
扉の向こうには、ドラゴンが居た。まあ、レッサードラゴンって呼ばれる、謂わば幼体のドラゴンなんだけど。下層が50階層だけと仮定して、そうするとこの環境変化型ダンジョンは全200階層。そして、中層と下層の境のボスがサイクロプス、下層と最下層の境のボスがレッサードラゴンてことになる。これらの情報を合わせると……もしかして………
(ここって、第207号環境変化型ダンジョン?)
第207号環境変化型ダンジョンとは、日本の本州のど真ん中にある、日本最強兼世界最強のダンジョンだ。過去最高到達階層は162階層。世界最強の攻略者チームが、長い期間準備して、万全な状態で挑んでギリギリ、命がある状態で行って帰って来れるのが、全体の四分の三と少しとかいう、やばいところ。
なんでどのダンジョンか分かるかというと、私は異常なほどのダンジョンマニアなのだ。………友達にはただの戦闘狂の情報収集なんて言ってきたけど。全くもって不名誉だ。戦闘狂とか、失礼極まる。
(そっか、第207号環境変化型ダンジョンなんだ……ふーん)
これは制覇するのが楽しみになってきた。
私のこのこみ上げるものすごい高揚感を、この興奮を発散するかのように、人型の頭部に深い深い嗤いを浮かべながら、狂ったように嗤いながら、レッサードラゴンに突っ込んでいった。
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