時代を眺める瞳

こうあま

時代を眺める瞳

あじさいが咲く戦時下の日常をとどめる歌で箴言しんげんを編む


空き缶でいいのでどこかに届きたいボトルメールになれないのなら


コバルトの空へ国旗を描くために賽の河原で金泥をすくう


吟行に出たいと言えばスケッチに連れて行ってと答えてくれる


男性でシスでヘテロで日本人、ではないのだね残念でした


大口のあくびを三年ぶりに見た花金はもう夏至でいいだろ


右向きの寝返りはまだ寝ないという意思表示 誰にしているのばか


塹壕を掘られ飛び立つホタルらよ黒土の下に希望はあったか


きみだけの数字じゃなくてきみだけのISBNコードを見せて


いくらでも試行錯誤ができるのにどんどん下手になってく、呼吸


宿の月に誰からもらった風邪なのか訊いて失恋するのが怖い


いまどきのヴェールをかずけど軍帽の冠こそを求むがサロメ


江ノ電にぶつかり切られるあじさいのブーケを作ろう遺影も撮ろう


祝福はあげれないけど通報器の場所を教えてとなりに座る


光滲の魚影が染める海沿いで下を向くのは処理落ち回避


しのげきの冷却水に潜りゆく時代を眺める瞳を求めて


恋人の絵を描くきみが見逃した酸素で生きた いつか返すよ


僭王せんおうもいます他人を悼まない特典付きの大特価です


恋をするタイプでごめんでもきみと確かに同じ海で生きてる


残闕ざんけつの紙飛行機と弔問のバロックパールが眠っている海

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